作り手の聡明さも一目瞭然にする表現方法

情報、とくに統計的な数値などをビジュアル化して、わかりやすい図版にしたものが「インフォグラフィックス」と呼ばれて、最近Webを中心としたメディアで流行している。

情報をいかに整理して形にするかは、自分の中の課題でもあったので、
ビジュアル・ストーリーテリング』という本を読んでみた。第一線の人は、どうやって情報をビジュアル化して、まとめるあげているのか知りたいと思ったのだ。つまり、情報整理の具体的な方法を知りたいと思っていたわけだけど、どちらかというとこの本は、事例の紹介が中心だった。

その事例のほとんどは「Column Five」というアメリカの会社が制作したもので、この会社がインフォグラフィックスの世界では有名らしい。この本の著者もその会社に所属している人だ。

たしかに、ビジュアルはきれいに整理されていて美しいし、ウィットも効いている。何もない状態のところから、どういう人がどういうふうに連携して、このような最終形を生み出しているのかが知りたいところだけど、それはColumn Fiveに入社してみないとわからないことなのかもしれない。

でも、自分の中で少し気になるのが、自分は見る側として、果たしてこういうインフォグラフィックスに本当に説得されているのか? という点だ。うまいことまとめるなあ、とか、おもしろい見立てをするなあとか、色使いがきれいだなあ、とか、そういう感想は持つけれど、肝心の内容を自分が受け取れていない感じがする。

たぶんそれは、インフォグラフィックスはメッセージではなく、あくまでデータの顔をしているからだろう。というか、そもそもデータをいかに見せるかの問題であって、そこからどういうメッセージを取り出すかは、受け手次第なのだ。

とはいえ、データをビジュアル化することによって、明らかになることは確かにある。グラフもそうだし、この本に載っていた「ランダムな数字の列の中から特定の数字だけをピックアップするのに、その数字だけ色が変わっていたら一目瞭然」というような例も、ビジュアル化の効果をよくあらわしている。そういう視覚の効果を生かそうとするアプローチには、すごく納得させられた。

たぶん「一目瞭然」がポイントなのだろう。この本の冒頭では、ナイチンゲールが兵士の死亡原因をグラフにし、それが議会に提出されたことで、感染症対策の見直しが進んだというエピソードが紹介されていた。ナイチンゲールが作った図は見た目にもとても美しく、彼女がただの看護士ではなくて聡明な分析力と表現力を持っていたことが、これまた「一目瞭然」だった。

インフォグラフィックスは、作り手の聡明さも一目瞭然にする表現方法なのかもしれない。

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