関係性を表現するおもしろさ

翻訳の活動をしていたときに、自分が書き加えた接続詞を校正担当の人に不要だと指摘されたことがあった。原文にない言葉なので、その指摘ももっともだったのだけど、自分のなかでは必要な気がするのになあ、と、ちょっとすっきりしない気持ちだった。

その後、最近になって、古賀史健さんの本や、野矢教授の本を読んだら、接続詞に注目されていた。論理展開を考えるうえで、接続詞は重要だという。

そんな流れで今回読んだのが、『文章は接続詞で決まる』という本。そのものズバリのタイトルで、ためになった。接続詞は重要だという確信を持てるようになったように思う。

この本によると、実際、言語の研究者でも接続詞を専門とする人はほとんどいないという。そういう意味でも普段はあまり注目されない接続詞だけど、実は重要な役割を果たしていて、わかりやすい文章、印象的な文章を書きたいと思っている人にとっては、意識するに値するものだ。それを説得力をもって教えられた。

著者の石黒圭さんは大学の先生で、まだ若手と呼べるくらいの年齢の人だ。学術的に理論だっているのはもちろん、それだけではないところが見え隠れするのが、この本の魅力なのだろう。学問として完成させようとする動機に加えて、よりよいコミュニケーションのために言葉をどう使えばいいか、という点までカバーしている。言葉の本質、人間のコミュニケーションの本質に迫ろうとする方向性が感じられて、共感する部分が多かった。

接続詞のおもしろさは、その語自体で何か意味を表すのではなく、文と文との関係性を表現するところにある。人間の悩みの大半は人間関係だというし、関係というのはそれほど大切で、奥深いものなのだろう。

ということで、これからは接続詞に注目して文章を書いていきたい、と思ったところで、今この文章は接続詞をほとんど意識せずに書いてしまったことに気がついたのだった。

文章は接続詞で決まる

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