自然栽培は生物学的におもしろそうだ

『木村秋則と自然栽培の世界』という本を読んだ。

木村秋則さんの農法をひとことで言えば、土中の微生物の力を生かすということだろう。これは木村さんが提唱している「自然栽培」(何もしないのではなく、積極的に働きかける農法)でも、より自然に任せる「自然農法」でも同じ考え方だと思う。

そして、こういう農法がなんとなく怪しげに思われたりするのは、微生物の種類や働きがまだ完全には科学的に解明されていないからだと思う。

「科学的に解明されていない」というときには2つあって、ひとつは科学で解明しようとしたけどできなかった場合、もうひとつは、まだ手をつけられていない場合だ。

土中の微生物については種類も規模も膨大なので、まだ科学の手が及んでいないのではないだろうか。だから木村さんのように、独自の研究と試行錯誤で微生物を有効に生かす方法を編み出すこともできれば、怪しい商法に微生物の名が利用されたりもする。この本に出てくる弘前大学の杉山教授によると、今後はDNA解析によって微生物のことがより科学的にわかってくる可能性があるそうだ。

うちの菜園でも堆肥を作っていて、かつてはそれを畑の土の中に鋤き込んでいたけど、これも木村さんの農法的にはあまりよくないようだ。とくに完熟していない堆肥を入れると、土中の微生物が急激に活動して数が増え、酸欠状態になる。すると嫌気性の菌が増えて、その活動が植物に悪影響を与える。だから堆肥をやる場合は、しっかり完熟させ、できれば土の上に置くだけにして、土中の微生物とゆっくりなじませるのがよいようだ。

あと、木村農法的には畝はしっかり立てて、土もたまには浅く耕して、土を乾燥させることもポイントのようだ。このあたりは不耕起を推奨する自然農法との違うところかもしれない。

肥料や農薬に頼らない自然系の農法への批判は、おもに経済方面から来る。これで人類みなが食っていけるのか、値段が高くなるんじゃないか、というような話だ。その視点は重要だと思う。

けれど、自分としては生物学的にどうなってるんだ?という点で、こういう農法に興味があるし、そこにおもしろさを感じる。そういう人も多いんじゃないかと思うのだけれど、どうだろうか。

木村秋則と自然栽培の世界

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