ややこしい人とは仕事をしません

僕たちの前途』という本を読んだ。

若き社会学者である著者の古市さんは、この本の前作では「絶望の国の幸福な若者たち」という若者論をテーマにしていたけれど、この本ではとくに若者の起業にスポットを当てている。研究論文のための調査した内容が、平易かつウィットが効いた文章で書かれていて、研究と著者自身の生活がひと続きになっているような印象だった。

興味深かったのは、著者も所属している社員3人の会社の若い代表が、人との付き合いを重視していること。でも、それはこれまでの人付き合いのやり方とは少し違う。それを表す「難しい仕事ならいくらでもやる。でもややこしい人とは仕事をしません」という言葉に、虚をつかれたような気がした。

人が気に食わないから仕事をしないという態度は、たぶん一般的な企業、とくに大きな会社ではナシだろう。担当者が変わったからこの業務やめます、なんてことは許されず、人が変わってもそれまでと同じく、何事もなかったかのようにやり続けるのが会社の仕事、という気がしていた。

しかし、実際、仕事の質はそれをやる人によって大きく変わる。そのことにはみんな薄々気がついているとは思うけれど、彼らはそれを堂々と口にし、実践しているところに新しさを感じた。

クライアントと会議をするのも「意識を合わせること」が目的で、無駄話しかしないことも多いそうだ。具体的なことは「あとでメールで送ります」ということでOKだという。これも確かにこの方がいいかもなあと思う。

実際いいアイデアや深く掘り下げた考えなどは、会議をしたその場でなかなか出るものではない。あとからひとりで考えていてふと思い浮かぶことも多いし、一晩寝て何かを思いつくこともある。何より面と向かってはちょっとあいまいな議論になりがちで、本質が突き詰められないこともある。これも薄々感じていたことだけど、ここまではっきり言ってくれるのが新鮮だったのだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?