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本を地図に旅したい

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書評というより、本を読んで自分の生活や考えが具体的にどう変わったか、みたいなことを書こうと思っています。
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2017年1月の記事一覧

自分が本当にしたいことの気配

 『女子をこじらせて』を読んだ。著者である雨宮まみさんが若くして亡くなったとニュースになっていて、この人のことは知らなかったのだけど、ふと目にした彼女が書いた書評が良かったので、一冊読んでみようと思ったのだった。

 この本で彼女は一般的に有名になったようだが、本業はアダルトビデオのライターだ。アダルトビデオとはいえ、そこは仕事の世界だし、プロ意識を持って仕事に臨んでいる……という感じのことが綴ら

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イスラムの良さを取り入れられる立場にいる

 ミシマ社の本で、話題になっていた『となりのイスラム』を読んだ。このあいだの『イスラム国の内部へ』から引き続いて、またイスラムに関する本だ。

 タイトルから、日本の近所に住んでいるイスラム教の人を取り上げた内容かと勝手に思っていたけど、そうではなかった。著者はイスラムを研究している大学の先生で、イスラム教徒とは? という基本的なことがらを、時事的な話題や自身の体験をベースに、わかりやすく解説して

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言葉を聞いているのではなくて、その相手を聞いている

 一度留学してみたい。最近そう思い始めて、何か自分に関係ありそうな学問はないかなあと探していると、社会言語学という学問に目が留まった。
 
 社会言語学とは何か? そう思って『日本語は「空気」が決める: 社会言語学入門』という本を読んだ。著者の石黒圭さんは大学の言語学の先生で、前に読んだ接続詞をテーマにした本はなるほどと思うことが多く、内容もわかりやすくて印象に残っている。

 社会言語学をひとこ

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イスラム国と、遅い決断の味わい

「人生には、はっきりとした指針が要る」

 『イスラム国の内部へ』という本を読んで印象的だったのは、戦闘員の若者のこんな言葉だった。

 著者のドイツ人ジャーナリスト、トーデンヘーファーさんは、インターネットを使ってドイツ出身のイスラム国メンバーを探し、信頼に足る人物を見つけ、スカイプやメールを通じて関係を深める。そして、滞在中は安全を保障するというカリフの証明書を発行してもらい、イスラム国へ足を

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