マガジンのカバー画像

本を地図に旅したい

102
書評というより、本を読んで自分の生活や考えが具体的にどう変わったか、みたいなことを書こうと思っています。
運営しているクリエイター

2014年9月の記事一覧

時間という概念がない世界

『逝きし世の面影』の「労働と身体」というパートを読むと、当時の日本の仕事には、ゆとりと自主性があったことがうかがえる。

外国人が日本人に仕事を頼んでも、おしゃべりばかりでなかなか取り掛からなくてイライラしたり、工事現場で何か作業をするたびに歌を歌うので非効率だと思われたり、何かあるとすぐに仕事を放り出して野次馬が集まったりと、言ってみれば、今自分たちが途上国を訪れたときに感じるようなことを、当時

もっとみる

自分を探すなら、通っている店や買っている商品を観察すればいい

スターバックスに来ている。『お望みなのは、コーヒーですか?』という本を読んでいたら、無性にスターバックスに行きたくなったからだ。

この本は「スターバックスからアメリカを知る」と副題にあるように、社会的な視点からスターバックスを論じた本だ。著者はアメリカの大学教授で、実際にスターバックスのヘビーユーザーだそうだ。

スターバックスには久しぶりに来た。何年ぶりだろう。入った印象は空間が広いなと思った

もっとみる

「ソフトスキル」が測られようとしている

週末、MOOCにハマっていた。それは『ルポ MOOC革命――無料オンライン授業の衝撃』を読み始めて、やっぱりMOOCはおもしろそうだなと思ったからだ。

MOOCとはMassive Open Online Courseの略で、つまりインターネットを使って無料で受けられる講座のことだ。

前に登録していた「コーセラ」というサービスの講座をもう一度やり直そうかと思ったけど、家のパソコンが遅いせいで動

もっとみる

歴史は視点とセットで語られるべき

『HHhH (プラハ、1942年)』という本がおもしろかった。ナチスドイツ時代にチェコで起こった出来事を題材にした小説だ。

当時のチェコはドイツに占領されており、ナチスの保護領という形で存在していた。その統治のトップに立っていたのがナチの幹部の一人、ハイドリヒという人物だった。

占領されたチェコの元大統領はイギリスに逃れ、そこで亡命政府を作り、反撃の機会をうかがっていた。そして実行されたのが「

もっとみる

仕事は効率化して、地域を楽しむというモチベーション

徳島県の神山町の名前をしばしば耳にする。山間の地方に都会のIT企業が続々とオフィスを移し、移住者も増えている。そういう印象がある。

そういえば、数年前に四国を旅行したときに神山町にも立ち寄った。そのときは温泉に入って、商店で買い物をしただけで、とくになにか先進的なものは感じられなかった。椎茸がたくさん売られていたのを覚えているくらいだ。

実際のところ、どんな感じなんだろう? そう思って
『神山

もっとみる

黒人に変身した白人の作家がいた

自分も外国を旅行することがあるけれど、旅行するだけでは、その国の人として、その国の社会を見ることはできない。とくに見た目で外国人とわかる場合、どうやっても外国人として扱われてしまう。

白人と黒人の場合も同じだ。白人の見た目のままでいくら黒人社会に入り込んでも、その社会を黒人として体験することはできない。白人も黒人も、相手の肌の色が違うから態度を変えるわけで、白い肌のままでは、永遠に黒人の白人に対

もっとみる

将来は、成長系かオーガニック系か

『オーガニック革命』という本を読んだ。

著者の高城剛さんは、デジタルアーティストのような人だと思っていた。実際、今でもそういうことをやっているのかもしれないけど、今は(この本が出たときは)バルセロナに住んでいて、オーガニックな暮らしをしているという。

『オーガニック革命』は、そんな海外でのオーガニックムーブメントを紹介する本だ。出版されたのは5年以上前なので、最新情報ではないけれど、欧米、とく

もっとみる

本質から目をそらすのは、目的に賛同できていないから

『コミュニケーションをデザインするための本』という本を読んだ。電通に勤める著者が、コミュニケーションデザインという仕事について、事例を交えつつ、紹介した本。著者は大学院での研究者という顔も持っている。

この本で語られているのは広告の世界の話。コミュニケーションデザインとは、従来のような職種での分業ではなく、トータルなコミュニケーション戦略を考える仕事のことだ。そういう立場の人を置くことで、全体の

もっとみる