マガジンのカバー画像

本を地図に旅したい

102
書評というより、本を読んで自分の生活や考えが具体的にどう変わったか、みたいなことを書こうと思っています。
運営しているクリエイター

2014年5月の記事一覧

登山のメリットとは何だろう?

同居人が登山に興味を持っている。昔から山登りや自然が好きのなのだ。

一方、自分は登山と聞くと、ちょっと面倒くさいなと思ってしまうところがある。体力も使うし時間も使う。危険も伴うし、装備にお金がかかったりもする。遭難して救援を呼ぶようなことになれば、社会的な信用を失うのではないかという危惧もある。

というようなデメリットばかり思い浮かんでしまうのだけど、にもかかわらず、登山を楽しむ人は多い。山ガ

もっとみる

コミュニケーションの仕事とは、不自然を不自然じゃない形にすること

コミュニケーションについて、もっと知りたい。世の中でどういうことが言われ、どういう取り組みがされているのか知りたい。そう思って、平田オリザさん『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』を読んだ。

劇作家の平田オリザさんは、今は大阪大学コミュニケーションデザインセンターの教授を務めていて、この本ではおもに演劇の観点から見たコミュニケーションについて書かれていた。

なるほどと思っ

もっとみる

食べているのは社会かもしれない

先進国では大量の新品同様の食料が、日々捨てられている。家庭から出る廃棄はもちろん、スーパーや外食店からも毎日食料が捨てられていて、その量は世界中の飢餓に苦しむ人を救える量の何倍にもなる。

ということを、食料廃棄をテーマにした『さらば、食料廃棄 捨てない挑戦』を読んで知った。

なんというか、ものを捨てるという行為には、人間の本質的な性質が隠れているような気がする。たぶんそれは「新陳代謝」的な感覚

もっとみる

「ふわっとしたもの」は間違ってない

山口晃さんの書いた『ヘンな日本美術史』がおもしろかった。読みながらいくつも付箋を貼ってしまった。その一つ一つはあとで個人的にメモしておこうと思うけど、詳細の前に、大きく印象に残ったのはどういうところだろう?

というのは、この本の中で語られているのは、詳細な写実よりも、より本質をとらえた絵の描き方がある、ということだからだ。西洋の透視図法が入ってくる前の日本の絵師は、そういうセンスを持っていた。実

もっとみる

ある化学物質が「あるとき」と「なかったとき」の世界の違い

歴史を知ることは、極端な思想や行動を諌める効果があるのかもしれない。

歴史がある、とわかっていると、簡単に善悪を決めることはできなくなる。そのためには、歴史は落ち着いたトーンで語られていなければならない。強いトーン、過激なトーンの歴史は学んでも有効に使えない。なんというか、歴史というのは、「歴史があるんだなあ」と実感するために必要なのだ。そんな気がする。

『スパイス、爆薬、医薬品 - 世界史を

もっとみる

味覚というセンサーが鈍くなっていくとしたら

ミャンマーの食べ物はまずいと聞いていたけど、数年前、実際ミャンマーに旅行にいって料理を食べてみるとおいしくて、うまいうまいと言って食べた。だけど、後にそれは化学調味料の味のせいかもしれないと思った。かつては手に入りにくかった化学調味料が、人々のあいだに浸透した結果、旅行者の口にも合う味になったのかもしれない。

おいしく食べられるのはいいのだけど、ちょっと恐ろしくなったのは、自分の感覚が知らない間

もっとみる

目の前のことを大事にする視点と、俯瞰して見る視点のバランス

『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』という本を読んだ。ラジオ番組で紹介されていて、タイトルにピンとくる感じがしたので、読んでみたくなったのだった。

「フード左翼」と「フード右翼」は著者の造語で、つまり、食の好みが、人々の政治的とも呼べる姿勢を反映しているのではないか、との指摘だ。左翼、右翼といっても、いわゆる政治の世界のそれと完全に一致しているわけではないけれど、昨今の食の流行や好み

もっとみる