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ニューヨーク・ニューヨーク〜有名なあの曲はライザ・ミネリがこの映画で初めて歌った

『ニューヨーク・ニューヨーク』(New York, New York/1977年)

2017年に日本でも大ヒットしたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』は、その名の通り、LAを舞台にした“音楽を伴った男と女の愛のドラマ”だったが、そのちょうど40年前に、NYを舞台にした同様の映画があったことを思い出す。

『ニューヨーク・ニューヨーク』(New York, New York/1977年)だ。この作品は厳密にはミュージカルではなく、ミュージカルのシーンを含んだ映画。

ことの始まりは、プロデュースチームのロバート・チャートフとアーウィン・ウィンクラーが、1940年代の音楽の熱烈なファンであったことから、それを効果的に使ったラブストーリーを企画していた。

そして、知り合いの売れない脚本家アール・マック・ローチに依頼してストーリー作りに着手し、マーディク・マーティンが加わって脚本が完成。受け取ったロバート・デ・ニーロは一読して、『タクシー・ドライバー』の撮影で気心の知れた、マーティン・スコセッシを監督にすることで出演をOKした。

相手役には『オズの魔法使』をはじめとする、ハリウッド・ミュージカルの全盛期の大スターだったジュディ・ガーランドとヴィンセント・ミネリ監督の娘であり、自身もスター街道を歩んでいたライザ・ミネリ。

劇中で流れるオリジナル音楽は、『キャバレー』の仕事でライザをよく知るフレッド・エブとジョン・カンダーが担当した。

スコセッシ監督は、絶滅しかけていた昔ながらのハリウッド映画、特にMGMミュージカルにあったような、作り物の中にも確かにあったリアルさに心打たれる。

そこにサックス奏者とバンドシンガーという、アーティスト同士の生き方や複雑な愛情を絡めることによって、1940年代映画へオマージュを捧げながらも、斬新な演出が光る、“音楽を伴った男と女の愛のドラマ”に昇華していった。

撮影にはMGMのスタジオが使われることになり、ライザは自分の控え室を、かつて母が出入りした部屋にしてもらった。

子供の頃に父親から教わった、「演技力とは相手のセリフをよく聞いて、その場で切り返す能力」であることを学んでいた彼女は、才能溢れるデ・ニーロのアドリブにも見事に対応。

特に、映画のクライマックスである往年のMGMミュージカルを再現した「ハッピー・エンディング」のシーンでは、ワクワクするような躍動感を与えている。スコセッシ監督自身も「最高の体験だった」と振り返る。

 日本公開時の映画チラシ

物語の始まりは、1945年8月15日。紙吹雪が舞い踊るニューヨークのマンハッタン。第二次世界大戦の戦勝国になったその日、ホテルのボールルームでは、何百組のカップルをはじめとする人々が、トミー・ドーシー楽団の音楽に合わせて踊っている。

失業中のサックス奏者ジミー・ドイル(ロバート・デ・ニーロ)は、そこで前線帰りの元バンドシンガーであるフランシーヌ(ライザ・ミネリ)に一目惚れ。

最初はまったく相手にされなかったジミーだが、やがて音楽が二人を結び付ける。トラブルメーカーでビバップ・ジャズに傾倒していくジミーと、バンドシンガーとして着実に人気を得ていくフランシーヌ。

しかし、フランシーヌの妊娠をきっかけに、共演をやめざるを得なくなった二人。それを機に、なぜか少しずつ心が離れていく男と女……。

時が経ち、映画界と音楽界で大スターとなったフランシーヌ。一方、自作曲「ニューヨーク・ニューヨーク」で、ジャズシーンで成功を手にしていたジミーは、ある夜フランシーヌのステージへ足を運ぶのだが……。切ないエンディングが、どこまでも余韻を残す。

ライザ・ミネリが歌うスタンダード・ナンバーの数々もいいが、やはりこの映画のために書き下ろされた「Theme from New York, New York」こそが、ハイライトだろう。

大名曲にも関わらず、公開当時はほとんど注目されなかったこの曲は、2年後にフランク・シナトラが歌って有名に。次第にニューヨーク市のテーマ曲になるほど、人々から愛されるようになった。

みんなに伝えて
私は今日発つわ
憧れの街
ニューヨーク・ニューヨーク

私の放浪の靴が
彷徨い歩きたがっている
心ときめく街
ニューヨーク・ニューヨーク

眠りを知らない街で
目覚めたいの
私はその丘のキング
すべてのトップ

昨日までの田舎町の憂鬱は
どこかへ消え去り
新しいスタートを
大好きなニューヨークで

この街で成功したら
世界を手にしたと同じ
どうか夢を叶えて
ニューヨーク・ニューヨーク

映画『ニューヨーク・ニューヨーク』より

文/中野充浩

参考/『ニューヨーク・ニューヨーク』DVD特典映像、パンフレット

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