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コロッケだし巻き

6月某日

仕事終わり、駅に向かう途中、居酒屋の立て掛けたメニュー看板が目に入る。
入ったことは一度もないがおそらく和風な海鮮を売りにした居酒屋。
手書きのメニュー看板のいちばん上に「コロッケだし巻き」と書いてある。
「コロッケ、だし巻き」ではない。
「コロッケだし巻き」である。
「、」が抜けているだけかな?と一瞬思ったのだけどメニュー看板を見る限り1行1メニューとなっている。
まだ「だし巻きコロッケ」ならなんとなくビジュアルが思い浮かびそうなんだけど「コロッケだし巻き」は未知である。
知っているはずの2つの料理なのに合わさると全然よく分からない。
コロッケをうっすらだし巻きで包んでいるんだろうか。そしたらコロッケのいちばん大切なサクサク感が損なわれるのでは…?

気になるなぁ、気になるなぁと思いつつ直帰。
ひとりごはんは慣れているけれどまだ一人飲みはしたことがない。

6月某日


先方に振り回されて急遽デザインしないといけない仕事に追われる。
もうランチの時間も終わっていたし、サクッとご飯を済ましてしまいたかったのでコンビニへ。時間のせいかあまりおにぎりの種類がない。普段はあまり選ばないオムライスのおにぎりを買った。コンビニのイートインでオムライスのおにぎりを食べながら母のオムライスを思い出した。疲れていたせいもあると思う。

オムライスはもちろん普通に家で食卓に出てくることもあったのだけど真っ先に思い出したのはお弁当のオムライスだった。幼稚園に通っていた頃のお弁当。母のオムライスの卵は薄い。薄い卵で包んだタイプのオムライス。中はケチャップライス。具は鶏肉だったりソーセージが中に切って入っていたりもした。小さいな頃の私にはこれがスペシャルなお弁当だった。それを知ってなのかそれとも他のおかずを作らなくて済むからなのか時々作ってくれてお弁当箱を開けるととても嬉しかった。スプーンは銀紙に包まれていた。お箸じゃなくてスプーンなのも嬉しかった気がする。ケチャップはお弁当の蓋についてしまっていた。それをスプーンですくって卵に塗る。幼稚園で食べるお弁当なので電子レンジで温めることなく食べる。だからコンビニのオムライスのおにぎりを食べて思い出したのかもしれない。
小学生からは給食になってしまったのでもう随分食べていないことになる。高校生の頃もお弁当だったけどオムライスのお弁当はなかったような…。
もちろんあったかい状態で食べる方が美味しいのだけど私にはお弁当のオムライスが母の味なんだなと思った。

週末、実家に帰ろう。オムライスが食べたいっていってみようかな。
子供の頃のスペシャルだったご飯って案外素朴だった。贅沢とかそういう概念がなく純粋に好きなもの。そういったささやかなものに今もっと感動したい。

6月某日。

やっとカトラリーをきちんと揃える。一人暮らしをはじめてもう何年目だろうか。恥ずかしながらカトラリーをきちんと揃えていなかった。スプーンとフォークは持っていたが、ナイフの必要とする料理をあまり作らなかったので…。たまーにスーパーで千円くらいの安いステーキ肉を買ったきて焼いて食べることはあるのだがなんせ一人だし包丁で切ってしまってからお皿に乗せればいいじゃないかと思っていた。それに日常のご飯は大体箸で事足りる。
しかしなんやかんやヒゲメガネと暮らし始めて1年と少し。やつは料理なんてしないので元々きちんとカトラリーなど揃えているはずもない。そのうち買うぞと思いつつ1年以上も経ってしまった。

今朝、分厚く切った(手で割いたといった方が正しいか)高級食パンをフレンチトーストにして蜂蜜をたっぷりとかけた。そこで「ああ、ナイフがない。どう食べようか」となった。
仕方ないので私もヒゲメガネも分厚い食パンにかぶり付く。「食べにくい」とヒゲメガネの皿に蜂蜜が滴る。いい年をした大人が手でパンを持ち上げ思いっきり口を開ける。食パンは顎が外れそになるくらい分厚いのだ…せっかくの優雅な朝食になるはずが…。正面に座ってパンに齧り付くヒゲメガネを見て滑稽だと思ったし私もこう見えているんだろうなと思った。

それでようやくカトラリーきちんと揃えるぞと思って無印良品で揃えてきた。せっかくなのでスプーンとフォークも買い替えることに。
来週はステーキでも焼こうかな。

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