雑、断片

田舎の暮らし、情報だけが届いて、でも行けない、手は届かない。
インターネットの発達で擬似的な距離が縮んだって、からだはまだインターネットで移送できない。
物質的人間、もうつぶれて行けないチェーン、過去から現在まで状況に関わらず永久にロックダウン。

離れ離れの恋人、会えないことが苦しかった十代、言えない、もう会えないことの幸福を知っているだなんて。
冷めない努力をしているみたいだ。お高いタンブラーを買うみたいに、扇風機の風をあてない位置取りを選ぶみたいに、手にした金と知恵で賢くやってるつもり。
燃やし続けて走ることはもうきっとできない。それを望む人とも一緒にはいられない。だけどそれでは実らないから、こうして冷めない努力を続けている。
言えない。努力をしなければ冷めることを、もう知ってしまっているだなんて。

知ることが幸福だとは限らない。でも、知ることでしか始めることはできない。
目の前にある幸福を選び続けたとして、その先に幸福が待ち受けているとは限らないのだ。
苦しさばかりに滅入るような日々にこそ、そうして無理矢理に意味付けをしていく。
屁理屈だって構わない。幻想だって構わない。
無人島で生き延びたロビンソンのように、偽物と話をすることでしか、もう生き延びる方法がないのだ。

気分が良くなる薬を飲んで楽になるなら、どれだけ安らかな人生だっただろう。
そんなもので消える苦しみではないから、こうして抜け出せるのかもわからない澱みの中で身を捩り続けているのに。
薬でなんとかなるくらいなら、穏健派の生活情報誌を開いて日々の暮らしが豊かになる気づきの一言を見てもなんとかなるはずだって思う。
同じことだよ。自分の目をくらませて得る幸福なんだ。薬も言葉も恋もそう。同じことだよ。

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