CEC Tokyoへ行ってきたレポ Keynote Session - 「世界の“Customer Engagement”の潮流」

株式会社Repro主催の、Customer Engagement Conference Tokyo というカンファレンスへ行ってきました。学びが多く、素敵なイベントだったのでレポートをシェアします🙋‍♀️

Keynote Session 「世界の “Customer Engagement” の潮流」

天下の米バーガーキングとユーザー行動分析ツール "Amplitude" のエンジニアさんが登壇し、バーガーキングでのアプリグロース施策やKPI設計の事例を紹介していました。
バーガーキング(以下BK)といえばユニークなマーケティング施策でお馴染みですよね。今回のセッションでは、「BKのアプリを使って、マクドナルドの店舗の600フィート(約182メートル)以内に入って注文をアクティベートすれば、1セントでワッパーが購入できる」という Whopper Detour Campaign を例にとり、マーケティング施策の背後にある設計思想を詳しく教えてくれました。

▼Whopper Detourとは(BK公式Youtubeより)

もともとこのキャンペーンは、商品を事前にオーダー・決済できるようになったBKモバイルアプリのダウンロード数とリテンションを上げるための施策だったようです。スピーカーの一人、BurgerKing Inc. のPreston Nix氏は、「どんなマーケティングプロモーションも何かしらのデジタルエクスペリエンスを介在し、デジタルエクスペリエンスは始まりに過ぎない」とおっしゃってました。デジタルな体験とリアルな体験を行き来するデザインはすごく参考になります。

このキャンペーンは大成功で、9日間でアプリダウンロード数を150万まで伸ばし、モバイル売り上げ3倍だそうです・・すごい・・・・。

画像1

印象的だったのは、パネルディスカッションの冒頭でPreston Nix氏が「ハンバーガーを好む人の多くは、マクドナルドも食べるしバーガーキングも食べる」と言っていたことです。他のハンバーガーブランドを排除しようとしたり、BKロイヤリティを高めようとするのではなく、「ハンバーガーを好む」という属性の人がいかに多くBKとのタッチポイントを作れるか、リテンションしてもらえるかに注力しているのかなと思いました。

実際にBKでは、アプリのリテンションを上げるために多くの実験を試しています。チェックアウト後にアプリ内でゲームを提供して景品がもらるキャンペーンを実施したり、パーソナライズを試したり・・ただクーポン一つ配るときでさえ、お客さんがクーポンを使うまでの時間などをトラックして、次のグロースに繋げるためのサイエンスを行っているそう。

画像4

ユーザーの行動やセグメントをより詳しく知るために Amplitude というツールをしているそうです(詳しくは後述)。

画像3

ここで、さらに詳しく目標指標の設計について紹介してくれました。
BKは「North Star Metric (NSM)」という指標を取り入れているそうです。NSMという指標は、わたし初耳でした。ちょっと難しい指標ですね。

North Star(=北極星)は、北半球のどこから見ても、つねに真北を指し示す位置にある。そのため、古くから正しい方角を知るための目印とされてきた。これを踏まえて考案されたのがNorth Star Metricだ。ビジネスを正しい方向にグロース(成長)させるために、関連するすべての部署、すべてのメンバーが参照すべき、唯一の指標のことである。
(・・中略・・)
多くの場合、PVやMAUはNorth Star Metricとしては適切ではない。North Star Metricは、それを増加させることが、確実にその後のグロースにつながるような指標でなくてはならない。グロースとの因果関係で言えば、North Star Metricが原因、グロースが結果となる。
それに対し、PVやMAUは、それらを増やしたからといって、必ずしもグロースにつながるわけではない。グロースの結果として増えることもあれば、他の要因で増えることもある。PVやMAUは、North Star Metricにはなりえないのだ。
ーグロースハックに欠かせない指標North Star Metricとは?

NMSは、プロダクトがユーザーに提供している価値と、ユーザーが払う対価の関係性を定義した指標です。適切なNMSを定義するのにはコツがいるようで、単純な数値目標を設定するという簡単なハナシではないんですね。セッションの説明では私もあまりよく理解できず、色々記事など読み込んで勉強中です。英語ですが、Amplitudeの提供するこの記事が詳しくて良さそう。
Every Product Needs a North Star Metric: Here’s How to Find Yours

画像4

このNMSを向上させるために、BKでは「早く実験を繰り返す」ことを大事にしています。上記3つのステップをぐるぐる回しているそうです。

【STEP1】ユーザーを知る
プッシュに反応するユーザー、プッシュに反応しないけどクーポンに反応するユーザー・・など。行動の特徴をもとにペルソナを作成し、セグメントを明確にする。

【STEP2】マジックナンバーを見つける
各セグメントのユーザーのエンゲージメントを高めるために何をすればいいのか?(=マジックナンバー)を調査する。

【STEP3】施策を考える
ユーザーがマジックナンバーにリアクションしてもらうために、カスタマージャーニーなどを見ながらどんな施策を打てばよいのかを考える。

上記プロセスは、Amplitudeというツールを使って行なっています。
STEP1でいうペルソナとは、いわゆる名前と性別と顔写真と・・といったお客さんの顔がわかるようなペルソナではなく、行動属性によって分けられたセグメントのことを指します。Amplitudeをチェックすると、NMSを向上させているユーザーグループの共通の行動を分析でき、STEP2でこの行動をさらに深く解析することで施策検討まで進めるそうです。

画像5

例えばこんなケースがあったそうです。

あるペルソナがとてもリテンションが高くて、調べてみるとアプリに搭載された「リマインド機能」を使っていることがわかった。リマインド機能はアプリ内のそんなに目立たない箇所に設置されていたが、ユーザーはひとたびリマインド機能を発見すると、それを使ってくれ、結果リテンションが高まることを発見。リマインド機能をオンボーディングにも搭載した結果、売上が3倍に伸びた。

お手本のようなグロースの方法ですね・・!そしてちらっと見せてもらったAmplitudeは神のようなツールでした。カスタマージャーニーも自動で作ってくれるようで、ユーザーの行動分岐を解析するにはもってこいのツールでしたね。Youtubeで日本語の案内動画がありましたので、ぜひチェックしてみてください〜!

セッションを通して思ったこと🤔

NMSという指標に初めて出会えましたし、NMSを使って堅実なグロースを実践しているプロダクトの具体的なケースにふれられてすごく勉強になりました。自分は普段グロースというよりUXリサーチなどが主戦場なので、改めてこういったサイエンスする領域もちゃんと実践していかないけんなーと思いました。

そしてモデレーターを務めてくださった、Repro社長平田さんのグイグイ突っ込んでく感じが良かったですね!全編英語のセッションながら、会場のお客さんは皆さんずっと集中して聞いている感じでした。貴重な機会をいただいてありがたかったです。

〜お願いとお詫び〜 当日はメモを取りながら英語を聞いていたので、数字や表現に誤りがあったらすいません!何か間違いがありましたらぜひ指摘してください!すぐに訂正させていただきます。