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たのし
2024年7月3日 08:29
前回 次回《第4章 第2節 懇々クジラ 244.5~》 オカマバー⭐︎フルーツバスケットに行った日から、3日目の朝。水穂ちゃんに前日に送ったメールがいつものように返ってこない。 携帯を開き、何度もサーバーに問い合わせしてみても、メールが来ている形跡はない。 1時限の講義が始まる前に、机に座って携帯にため息を吐くのを見ていたのか、秋山くんが肩に手を当て覗き込んできた。「水穂さんか
2024年7月1日 08:38
前回 次回《第4章 第1節 懇々クジラ 244.5~》 友人フランチャイズ契約を結んで、1年4ヶ月が経っていた。正確に言うと、489日。僕が今、水穂ちゃんに貯金している時間は244.5時間。 その間に僕は、秋山くんって言う、友達って言うよりは戦友に近いような人ができた。やっぱり秋山くんの描く作品は凄いし、鳥肌が立つ。でも、嫉妬とかそう言うのはもう無い。 水穂ちゃんとは、なんだか
2024年6月28日 10:56
前回 次回《第3章 第4節 狐の嫁入り 41~》 その後、篠宮教授の講義を受ける機会はあったし、何度か廊下でもすれ違った。 この前篠宮教授と話した後から「おう」とか「新しいのできたら、見せてくれよ」っと声をかけて来るようになった。でも、秋山くんが言ってた除籍と言う言葉が頭にこびり付いて、僕はレポートの件を篠宮教授に聞くことができないでいた。 そんな事が3日ほど続いたある日、僕は先日
2024年6月26日 07:47
前回 次回《第3章 第3節 狐の嫁入り 41~》 新しい年が始まった。大学生になって迎える初めてのお正月。去年、一人暮らしを始めたから、初めて実家と呼べるものに帰って、お母さんが用意してくれたおせち料理と牛肉コロッケをお母さんと食べた。そして、一人暮らしを始める前よりも沢山話した。でも、それ以外は高校生の時までと、あまり変わらない。しいて言うなら、テレビで正月特番をやっていて、実家に帰っ
2024年6月24日 08:29
前回 次回《第3章 第2節 狐の嫁入り 41~》 帰り道、ふと水穂ちゃんが、「拓星って何で拓すに星って名前なの?」っと僕の名前の由来を聞いて来た。 確か昔、お母さんと僕の絵を見に行った帰りに、お肉屋さんで買った熱々の牛肉コロッケを食べながら話してくれた事を思い出した。「んー。確かお母さんが僕を産んで、初めて僕が泣いた時に、星みたいだなって思って、抱っこした時に幸せだって感じたから、
2024年6月22日 17:59
前回 次回《第3章 第1節 狐の嫁入り 41~》 いつも、僕達の予定は水穂ちゃんのメールから、いきなり始まる。先の予定は決めずに、その日に決めて、その日に実行。それから、たまに突っ込みたくなる話題も、メールで提供してくれる。 ねー。拓星!!今日の夜、私の仕事が終わってから花火しない?(41⭐︎) こんな風にいきなり。そして、街はクリスマスムードなのに花火とか夏気分?っと心の中で突っ
2024年6月21日 08:04
前回次回《第2章 第3節 友人フランチャイズ4028.5》 だいたい人の悪い予想は、外れるものだと言われている。僕もそうだと思う。でも、だいたいだから、たまに。は当たる事もある。そして、今、僕はその、たまに。って予想が当たって藤宮先生から話を聞いている。「3ヶ月だよ。小絲くん。膵臓癌のステージ4だ」 藤宮先生は、この前、CT検査で撮られた僕の内蔵の画像を見ながら机で頭を抱えている。
2024年6月20日 11:03
前回 次回《第2章 第2節 友人フランチャイズ4028.5》 次の週の火曜日。10時30分の少し前、恵子さんがアトリエのインターフォンを鳴らした。「きたよー。水穂ちゃんは私に任せて、夫が待ってるから行っといで。あと、意外と外寒いから、1枚羽織って行った方がいいよ」「ありがとうございます。そうします。水穂の事お願いします」と言うと、「任せろ」っと恵子さんはいつものように得意げに鼻を鳴
2024年6月19日 07:51
前回 次回《第2章 第1節 友人フランチャイズ4028.5》拝啓、秋山君。今、君から貰ってずっと大切にしている『狐の嫁入り』を眺めている所だよ。今日の天気みたいに晴れたいのか、雨をふらせたいのか、まるで半端者だった昔の僕と秋山君みたいだなって思い出しながら、今ペンを取っているよ。それと、君の画集買ったよ。デザイナーとして成功しているみたいで、僕は自分の事のように嬉しいな。それにしても、
2024年6月17日 18:00
前回 次回《第1章 第3節 白花色0.5~》 展示会場となっている美術棟の出入り口から外に出ると、緊張感から解放され、僕はぷわーっと大きく息を吐いた。そして、波森さんにさっきの発言に対しては、少しガツンと言ってあげなければ、これからこの大学で波森さんが生き抜いて行く際の一つの不都合になってしまうと感じ、僕は「駄目だよ。あんな事言ったら。明日から波森さんが、大学に行きづらくなるよ?」っと肩
2024年6月16日 13:24
前回 次回《第1章 第2節 白花色0.5~》 僕の意識がいつもの世界に帰って来たのは、けたたましい講義終了の鐘の音と静かな緊張から解放された、周りの学生達が放つ雑音からだった。 まだ、寝ぼけていたからなのか、頬から流れるよだれをいつもの癖で、袖で拭こうとした時、さっきまで僕の隣にいた女の子の事を思い出した。咄嗟に腕をすくめて、隣の席をみると、そこには、もともと誰も居なかったように静か
2024年6月15日 10:19
◇プロローグ「次のニュースです。昨夜未明、市内のアパートから男女の遺体が発見されました。取材に対して警察は以前から親交があったとされる医療従事者の女性を第一発見者とし、死因について捜査を進めて参ります。との回答がありました……。では、ここからはスタジオに戻して、この事件で亡くなられた男性について、今日お越しになっております、デザイナーの秋山 海さんとお話をさせて頂ければと思います。秋山さん今日