公立校にも在籍。「積極的不登校」する子どもたち 【こんなガッコウ探検してみたvol.1】 東京コミュニティスクール編(7/7)
―― とても魅力的な学びのカルチャーを持っている学校だなあと思うのですが、最後に学びの評価についても少し聞いてみたいです。
この学校でやっている学びは、テストを行って80点だったとか、数値化できるものではないと思います。そうすると、どういう風に学びが進化していることを見ていくのでしょう。通知表のようなものはないのでしょうか?
ケイ:できるできないだけを評価する通知表はありません。まず、「学びのガイドライン」という1枚のレポートがあり、それとは別に「学びの軌跡」というものが授業ごとに作成されています。いろんなスタッフがコメントを書いてくれるので、結構な分量になっています。内容は、「まわりと比べてこう」という相対評価ではなく、「前期の本人と比べてこんなことができるようになったね」という絶対評価です。
私はいろいろ小学校を見たのですが、TCSでいいなと思っているのがチーム担任制のところなんです。多くの小学校では、1人の担任が全ての教科を教えることがほとんどですよね。でも、TCSではすべてのスタッフがすべての学年の授業を持っている。
一応担任は決まっているものの、朝の会やアセンブリ、イベントなど全学年合同の機会も多いから、すべてのスタッフがすべての子どもたちについて見ているんです。チーム担任制の本質っていうのは、多様な目で子どもを見るってことだと思うんですよね。
―― 普通は担任の先生1人が評価するけれど、担任との相性があわないこともありますよね…。
ケイ:多くの学校では、教室って物理的に閉鎖されていて、「ここが私が担当する部屋です」ってなっている。なかなか他の先生は、他の教室の運営や学びには口を出しづらいですよね。そうすると、担任との相性が学校生活のかなりの部分をしめてしまう。
でも、多様な人の目で見ることで、違う角度から子どものいいところを発見できたりもする。1人のスタッフだけじゃ気づけないことも、複数のスタッフがいることによって気づける。そこがいいなと思うんです。
―― 取材の最初に、ここの学校は「非一条校」という話をしていましたよね。この学校では通知表がないとすると、仮に子どもが受験する際などはどうなるのでしょう?
ケイ:TCSは認可外なので、子どもたちは制度的には地元の公立校に在籍しているんです。毎日通っているのはTCSなので、公立校の方では不登校という扱いになりますね。不登校でも通知表はでます。授業もテストも受けていないので、在籍校の先生方も評価は出来ませんが、卒業資格が出なかったことはありません。
公立校の先生方にも「こんなスクールに通っています」ということはお話していて、積極的不登校であることは理解してもらっています。娘の保育園の友達には公立校に通っている子もいるので運動会などは応援に行ったり、顔はちょこちょこ出しています。
―― なるほど。ここに毎日通っていても、公的には不登校なんですね。こんなにいきいき通っているのになんだか不思議です。
ケイ:卒業生の進路はいろいろですね。受験する子もいれば、公立校に入る子もいます。今は入試も徐々に探究型に変わってきていますし、TCSを卒業して、探究型の中学受験でトップ合格したというような子もいます。先生に「どんな学びをしてきたらこんな風になれるの?」と聞かれたみたい(笑)
TCSの理事長である久保一之さんも、「東京都フリースクール等ネットワーク(TFN)」を昨年立ち上げ、フリースクールと公教育の壁をなくし、学びの機会を増やしていくための活動を行っています。今は過渡期ですが、マイクロスクールなどのオルタナティブ教育を含めて、それぞれの子の資質に合った多様な学び方を選択するご家庭が増えると、少しずつ制度も変わっていくと思います。
―― こういうマイクロスクールが各地にもっと増え、子どもが多様な選択肢を持てるといいですね。
「マイクロスクール」と聞くと先進的な取り組みをやっている印象がありましたが、見学してみて、今の学校にあれもこれもと”足し算”するのでなく、むしろ”引き算”している印象を受けました。立派な設備もなければ、意味のわからない校則やルールもないし、無理に子どもを引っ張ることはしない。でもそのことによって、自主性や創意工夫が育まれている気がします。
「子どもたちは、自分たちで決める力を持っている」と心底信じていて、それをじっくり待つ文化が素敵ですね。1日、どうもありがとうございました!
(文:田村真菜、イラスト:yone. 、編集:玉利康延)
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