国家とは何か?独立国家を創るために必要な5つの要素と4つの能力

突然ですが、「独立国家」を創りたいと考えたことはありますか?そもそも「国家」とは何でしょうか?

急に聞かれて、「国家」を説明できる人は少ないのではないでしょうか。今回は「国家」について考えてみましょう。

「国家」は英語で何と訳すべきなのか?

そもそも「国家」という概念は国や地域によって若干異なります。例えば、「国家」を英語で何というでしょうか?多くの人は「Country」と答えるでしょう。もしくは「Nation」や「State」と訳す人もいると思います。全て正解です。日本語の「国家」という一つの単語に対し、英語には「Country, Nation, State」という3つの単語があります。

英語で国際政治の論文を読む時に苦労するのは、この3つの「国家」と訳す英単語の意味が異なることです。

「State」とは何か?

例えば「主権国家」は「Sovereign State」と訳します。つまり、「State=国家」です。しかし、「State」という単語は国家という意味以外にも「州」と訳すこともあります。アメリカ合衆国(The United States of America)は国家なので「State」ですが、下位単位にも「State(州)」という言葉を使用しています。つまり、「State=国家、州」ですが、「国家≠州」という非常に分かりづらい定義になっています。

「Nation」とは何か?

では、「Nation」とは何でしょうか。国際政治上では、「Nation」は「共通の言語、文化、宗教、歴史、神話、アイデンティティなどの組み合わせを持つ人々の集団」を指します。端的に言えば「民族集団」です。しかし、この「Nation」の定義も曖昧です。例えば、「クルド人」は国家を持たない世界最大の民族集団です。「クルド」は「State」ではなく「Nation」だと定義されています。同様に「アイヌ」も民族集団なので、「Nation」であると言えるかもしれません。しかし、「クルド」も「アイヌ」も日本語でいう「国家」ではありません。つまり、「国家=Nation」ですが、「Nation≠国家」という矛盾した図式が成り立ちます。

また、さらにややっこしいのが「Nation≠国家」てすが、慣習的に「国家=Nation」という意味で「Nation」を使用している時もあります。この最たる例が「United Nations(国際連合)」です。国連加盟国は国家が主体です。したがって加盟対象国は「State」になるはずで、「Nation」である「クルド」などの民族集団は加盟対象になりません。したがって、本来の「国際連合」の表現方法として最も適当なのは「United States」です。(しかし、これだと「米国(United States of America)」と混同してしまいます。)

さらに「Nation State(国民国家)」という言葉もあります。ここでいう「Nation」は「国民」という意味です。この「国民国家」という言葉も本来であれば「民族国家」と訳した方が適当です。

このように「国家」と「Country, State, Nation」は同じような概念を意味していても、実際にはイコールではありません。

「国家」とは何か?

では、「国家」とは何でしょうか。広辞苑は次のように定義しています。

一定の領土とその住民を治める排他的な統治権をもつ政治社会。近代以降では通常、領土・国民・主権がその概念の3要素とされる。

では、上記の「領土・国民・主権」の3要素を含んでいれば、それは「国家」と言えるのでしょうか。

例えば、あなたが土地とその上に建つ一軒家を保有していたとします。もし、あなたが自分の家を「独立国家」だと宣言した場合、あなたの家は「国家」と言えるのでしょうか。「領土」と呼べる土地を保有し、「国民」という自分の家族がおり、日本が何かしらの理由で関与できない「主権」を持っていたとしましょう。あなたの家は「国家」なのでしょうか。

独立国家を創るために必要な5つの要素

もし、あなたが新たに独立国家を創る場合、次の5つの要素が必要です。

1. 領域を支配する政府が存在する

2. 他の国家がその領域を領土と主張していない

3. 国家の樹立を目指す正当な理由がある

4. 他国が自らの政府の正当性を認めている

5. 独立元の国の国民が納得している

基本的に上記の5つの要素を満たしている必要があります。(ソマリアなど既存の国家でも5つの要素を満たしていない例外もあります。)現実的に考えた時、余程の理由がなければ、残念ながら日本政府があなたの家の独立を認めないでしょう。しかし、世界に目を向けた場合、独立を主張する地域は複数存在します。決して、あり得ないことではありません。

国家に必要な4つの能力

上記が最低限必要な「十分条件」だとすれば、他にも4つの「必要条件」があります。

1. 国境を超える人、物、金の流れを管理する能力

2. 相当規模の軍隊を行使できる能力

3. 大規模に徴税し、支出する能力

4. 法律を公布し、執行する能力

5つの要素以外にも、上記の4つの能力を保持してしていれば、国際社会から「国家」として認められる可能性が高まります。

独立国家を創るときの注意点

上記の5つの要素と4つの能力があれば、あなたの家も立派な「国家」として国際社会で認められる可能性があります。

しかし、独立国家は創ること以上に運営するのが大変です。どのような政府を樹立するのか。どの程度の防衛力を保持するのか。どのように税を徴収するのか。どの問題にも簡単な答えはありません。

イギリスの南東部には「シーランド公国」という独立宣言をした自称「国家」があります。

シーランド公国は1967年にイギリスから独立を宣言し、第二次世界大戦中に建設された海上要塞を領土に約20名の自称国民がいます。

しかし、冗談のような話ですが、独立宣言から11年後の1978年にクーデターが起きました。たった20名の国家でさえ、国家運営というのは簡単ではありません。

独立国家を創るときは、ぜひ創った後の国家の運営についても事前に熟慮してください。そして、ぜひあなたの国民の幸福を第一優先に考えてください。

あなたの国家の安寧を心から願っています。

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