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インディーゲーム初リリースにあたって

ご無沙汰しています。たんけんずきです。

この記事執筆時点で明日(2024年10月17日)、いよいよ個人制作ゲーム「求む!洞窟探検家」のリリースを迎えます。

本来なら、短い文章でバズらせて宣伝できれば良いのですが、そんな器用なことはできません。ただ記念でもあるので、誰も読まないお気持ち長文になってしまうかもしれませんが、書き残しておきたいと思います。

今回は、役に立つ知見は特にないと思いますので、モノ好きな方だけ読んでいただければ幸いです。

あらためて自己紹介しておきたいのですが、ニダンジャンプさんの僕のインタビュー記事がありますので、よければ御覧ください。

ゲームを作るきっかけ - 任天堂をやめたこと

このゲームを作りたいと思った理由を書くには、そもそも、なぜ任天堂をやめてまでインディーゲームを作ることになったのか、という話は避けて通れないと思いますので、背景までさかのぼって書きたいと思います。

退職理由自体は複数あります。主な理由を聞かれることもありますが、どれかひとつでも満たさなければ続けていたと思いますので、どれも重要なことには変わりません。

個人的な事情

僕は妻と共働きで、3人の息子がいます。コロナ禍で僕だけリモートワークになってから、平日の食事や家事のほとんどは僕が担っています。去年はちょうど長男の大学受験と次男の高校受験が重なり、資料集めやオープンキャンパス回りで手がかかりました。一方、妻は仕事が忙しくて残業続きになっていました。ちょうどその頃に、リモートワークが終了へ向かい、仕事を続けることに大きな不安を感じていました。

仕事の状況

仕事としてゲーム制作に関わりたい一方で、それとは離れた仕事が増えていきました。よくある話ですね。しかし、役職と高いグレードで評価を受けていた仕事が組織改編でなくなり、別の仕事を頂いたのは良いものの、その評価に見合った質と量の仕事が続けられるとは思えませんでした。

作りたいものがあった

やはり自分で考えて作りたいゲームがいくつもあります。今回のゲームについては後で書きます。

少なくとも70までは働きたい

任天堂は65歳まで働けますが、いまや超高齢化社会。定年後の年月も長いものになるでしょう。定年まで働いて十分な貯金をため、残りは悠々自適に過ごす。幸いなことにそれが可能な会社ではありましたが、たぶん僕には無理です。生産性が全くないと生きがいがありませんし、そんな状態で社会に堂々と関れる自信がありません。
とはいえ、65歳を過ぎて雇ってもらえる仕事は限られています。だから自分自身の力で稼げるようになっておきたい。自分の力を活かすなら、ゲーム制作かそれに近いもので、自分主導で稼ぎたいと思っています。
年金が減っていくのも目に見えていますし、定年後をどうやって過ごすかは、僕だけの問題じゃないだろうなと思います。

リリースできる喜び

個人でゲームを制作すると、ただ作れば終わりではなくそれを知ってもらうためにプロモーションを考えたり、法的に問題ないか調べてもらうなり自分で調べたりしなければなりません。面倒なことがものすごく増えます。
それでも、自分さえ頑張ればリリースできるのです!
会社では、面白くなるように、多くの人が気持ちよく遊べるように、あれこれ考えて制作していたのに、ある日ペンディングになった。次はもっと良くしようと思って準備していたのに、部署ごとなくなった。そんな経験をしました。プロフィールに書いてあるタイトルが少ないのはそういう影響もあります。それは会社として必要な判断なので、ここで文句を書くつもりはありませんが、個人でやるなら、たとえ失敗しても供養の仕方まで自分で考えられます。

インディーゲームだから作れる新しいゲームがある

インディーゲームに本格的に興味を持ったきっかけは、CEDEC2018の宮本さんの公演です。

いろいろと興味深い話がありますので、知らない方は記事を読んでみると良いと思います。

この話の中で気になったのは、マインクラフトを生み出せなかったという話。いやマインクラフトの企画書をどんなにうまく書いても、それをやろかとは言わはらへんでしょう?と思ったのです。企画書からでは無理で、試作しながら完成品としてのゴールを探す形で近いものはできたかもしれませんし、確かにそれをしやすい会社ではあると思います。
それにしても完成品を宮本さんやプロデューサーの方々にイメージしてもらって理解してもらうのは大変なことで、マインクラフトのあのゲーム性のまま完成品に向かうとは考えにくいです。

ゲームディレクターのコミュニケーションでも書いた通り、組織でゲームを企画するには、なぜそれが良いのかを説得するハードルがあります。僕も1人〜数人で企画を書いたり試作を作ったりしましたが、滅多に進むものではありません。コミュニケーション能力がないとは言いませんが、ずば抜けたものは持っていませんので、正しく伝えられなかったと後悔することも多いです。

世の中にゲームの企画は無数にあるでしょう。その中で特別な価値をもった新しいゲームはほんの一握りかもしれません。しかしそれがこの企画段階で消えてなくなるのはもったいないと思います。特別なコミュニケーション能力がなくともリリースできるインディーゲーム。それがゲームの幅を広げることになるのではないでしょうか?それを自分がチャレンジしても良いのではないか、と考えるようになりました。

これらの理由で退職してインディーゲームを作ろうと思いました。今のところ後悔はしていませんが、ひとつだけ計算違いがありました。それは辞めてから半年くらい、特に心が沈んだこと。後悔してないのになんでだろう?と思っていたのですが、あとで「寂しかった」からだと気づきました。長い間通っていたから仕方ないですね。これは多くの人が経験することかもしれません。

最初にリリースする「求む!洞窟探検家」

退職前はスマホ関連のゲームに関わっていたので、市場の状況は良く見ていました。スマホゲームは似たようなガチャゲーばかり、そんな声が何年も前から聞こえていましたし、市場が縮小する予感はありました。それぞれのゲームで工夫されている所はあると思いますが、ゲームの幅が広い状態とは言えなかったと思います。とはいえ、スマホのタッチ操作でアクションゲームは難しいといわれていました。

それなら、シンプルな操作ながら、瞬間ゲームには収まらないゲームを作ってやろうじゃないか、と思って作り出したのが、このゲームです。

ただ、ずっとアクションばかりで休むヒマがないゲームも辛いので、アドベンチャーという形で謎解きも入れたいと思いました。そこでプログラミング教育の助けになるか分かりませんが、デジタル回路の要素を加えたパズルを入れることにしました。

このゲームでこだわりたかったのは「体験」です。僕は探検部でしたので、洞窟はゲームの中のダンジョンではありません。できるだけ現実世界と地続きに感じられるものとして、多くの方に疑似体験して欲しいです。

同時に、インタラクティブ性の高いゲームを作りたいという志向もありますので、いくつかそういう要素を入れています。

例えば、ラグドールを使った物理アニメーション。技術の詳細は省きますが、キャラクターはアニメーションで作った通りに動くのではなくて、それに従うように物理計算で動きます。しかし疲れ始めると従う力が弱くなり、体全体が疲れているような動きになります。

他にはリズムの変わる洞窟のBGM。プレイヤーが動くと心拍数があがるような計算をしていて、BGMのリズムがそれに従って速くなったり戻ったりします。聴いて良いと感じるものではなく、操作と合わせて体感するものを目指しました。

また、このゲームはアイテムに課金できる要素があり、広告収入も見込んでいます。これは仕事として続けるために収入が必要だからなのですが、収入を得られるゲームとしてのチャレンジをしたいという思いがあります。それでこそ、商業ゲームに対しても影響を与えられる可能性があると思うからです。

このゲームの意義

  • 自分個人として新しいユーザーさんとの繋がりをもちたい

  • 自分でコントロールできるIPを持ちたい
    → ペンディングしない幸せ

  • 自分へのテスト
    → キャラクター、アニメーション、作曲etc… ひとりでどこまでできる?

  • インディーゲーム制作者はもちろん、ゲーム会社の方にもチャレンジを共有したい

最後に

話をまとめながら改めて、自分はゲームの幅を広げるようなチャレンジで、新しい提案をしていきたいと思いました。それは一見、捉えどころのない、Not for me な作品と写ってしまうかもしれません。それでも背負っているリスクは任天堂に比べたら小さな小さなものですから、チャレンジは続けたいと思います。

長くなってしまいましたが、今の気持ちを思うままに書いてみました。
最後までありがとうございました。


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