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辻山良雄「本屋、はじめました」を読んで

今週は忘れずに更新できそうです。
イベントが終わってひと段落、会社の次のことを考えるタイミングなので、務めていろいろインプットするようにしています。

今日は先日紀伊國屋書店富山店に行ったときに、「小出版フェア」的なものが開催されていて、たまたま見つけて買い求めた一冊「本屋、はじめました」について書きたいと思います。書店チェーンで経験を積まれ、2016年に東京・荻窪で新刊書店を開業された辻山良雄さんの本です。帯に、前に著書を読んでいた京都・誠光堂店主の堀部さん(元恵文社一乗寺店店長)との対談収録、と書かれていて、興味をひかれました。買おうかどうか迷った本は、必ずまえがきと目次を読むようにしているのですが、そこを読んだだけでレジへ直行させる力を持つ本でした。
私と同じ関西出身の方で、書店が街の中で力を持ち、華やかだった頃の記憶を持っている世代の人間として親近感を持ちました。丁寧で淡々とした文章の中にも、書店や本に対する一本筋の通った気持ちと、それに真摯に向かい合われている姿が想像できました。あと内容の半分が、本格的な個人店舗経営のノウハウ本にもなっており、経済書のコーナーにたくさんある「独立開業を考えている人向け本」「個人事業で儲ける本」より、はるかに生々しく、厳しく、そして商売の楽しさを伝えてくれる一冊でした。奥付を見ると、1年経たない間に5刷されていました。自分が感銘を受けた本が、多くの人から応援されているのを見ると、やっぱり嬉しいですね。

私の住む富山県南砺市は、今でも地元資本の小さな書店が何店か営業されています。私は辻山さんと同じく子供の頃から書店が大好きで、書店が近くにある生活が当たり前でした。お小遣いが少なかったので、お正月にお年玉をもらうと、それを握り締めてコミックスやムック本を買いに行ったもんでした(お正月でも子供が買いに来るので書店は営業していました)。ただ前に住んでいた京都でも、近所の書店がどんどん閉店し、Amazonや楽天ブックスで本を注文することも増えていました。
そして6年前富山に移り住んで一番困ったのは、書店との物理的な距離の遠さでした。京都だと電車で20分ほど行けば、大きな書店に行くことができましたし、お隣の大阪にはメガ書店がいくつもありました。でも富山の大手チェーンは紀伊國屋書店のみで、しかもデパートのワンフロアです。比較的大きな書店がある金沢になければ、高速バスで名古屋まで出ないと見つからないことも。富山で生まれ育ったみなさんはこれで普通なのかもしれませんが、マニアックな本やニッチな本がないと生きていけない人間はどうすればいいのやら・・・幸い隣町の福光に24時間営業の書店(コンビニと併設)ができたので、電子書籍以外はなるべくそこで買うようにしています。仕事で物販もやっていますので、その店を応援する一番の方法は「買うこと」だということも身にしみてわかっています。小さなお店ですが、コミックスと雑誌のラインナップにはこだわりを感じ、個人商店や小さな会社のよいところだなあ、と思います。また「書店」という業態だけでは生き残ることが難しいと判断され、コンビニという機能を取り込むことで、地域住民が立ち寄りやすくしてくれたこともありがたかったです。最近は朝一番で銀行に行き、その帰りに支払や買い物ついでにこのお店に立ち寄ることが多くなりました。辻山さんのお店「Title」も、東京という立地ですがお店の奥に奥様が営むカフェを併設されていて、メインはあくまで書籍販売におきつつ、利益率の高い飲食できちんとリスクヘッジされている姿は、経営者として尊敬に値します。とても励まされた一冊でした。

かくいう私も、「南砺市クリエイタープラザ」という施設を預かる会社の経営者として、カフェとショップの複合店を営業しています。富山の山の中でこのラインナップは厳しいかな、と思いつつ、小規模でも取引してくれる取次と契約し、自分の趣味全開の本(鉄道、ミリタリー、歴史、地域など)を少量ですが仕入れて販売しています。規模を追うつもりはありませんが、売場が定着し、たまにのぞいてもらえる存在になれるように頑張りたいと思います。




2012年に、京都から富山県の南砺市城端(なんとしじょうはな)へ移住してきました。地域とコンテンツをつなげて膨らませる事に日々悩みながら取り組んでいます。 Twitter⇒https://twitter.com/PARUS0810