谷崎潤一郎「赤い屋根」

私には恥ずかしながら
不倫や浮気、略奪愛に憧れていた時代がある。

当時は恋人いない歴=年齢であり、かなり夢みがちでもあった
(ちなみに今はそういった「道ならぬ恋」には一切憧れない)。

その当時、わりと好きだった話のひとつに
谷崎潤一郎の「赤い屋根」が挙げられる。

「赤い屋根」が好きだった理由は主に2点ある。

1つめは、何股もかける主人公の宮島繭子について
「多くの男にモテてて羨ましい」「恋多き女は素晴らしい」
と、当時はいい印象を抱いていたから。

2つめは、 宝塚沿線を舞台に、この物語が繰り広げられていたから。
宝塚ファンの私にとって、この地理的な条件も
なかなかたまらなかった。

とはいえ、この作品が好きだったのは何年も前の話であり、
その後、読み返すこともなかったから、
正直あらすじはほとんど忘れてしまった。

おまけに今日は金曜日で
気力、体力のすべてを仕事に使い果たし、
なおかつ体調もあまり芳しくないため、
原文を読み返すだけの余力が残っていなかった

(ちなみに私はさっきまで体調不良で横になっていたが、
目が覚めてしまったため、このnoteを更新している次第である。
難しいものを読むのより、書きたいことを書く方が楽である)。

……ということでまたまた『谷崎潤一郎讀本』から
あらすじを引用させていただく。

「繭子は、中年の小田切をパトロンに持ち、
従妹のお美代や、古くから関係がある現像技師の恩田らと暮らし、
大学生の寺本にも関心をよせる。
小田切が来ると睡眠薬のアダリンを飲ませ、
恩田や他の男性と関係を続けてきた。
小田切は、繭子の肌に触れようとして蹴られても
他の男性との関係を知っても何も言わない。
繭子は今まで好き放題に欺していたと思ったが、
被虐的行為が密かな楽しみのための芝居であり、
注文通り「鋳型」にはめられ、
女王のように振舞いながら、
実は奴隷として玩具にされていたことに気づく。」
(五味渕 典嗣、日高 佳紀 2016『谷崎潤一郎讀本』 翰林書房)

谷崎の作品ってなんとなく
男性が女性に利用されて破滅していくタイプの作品が
多いような気がするけれど、
「赤い屋根」では女性のほうが男性に
奴隷として玩具にされていた、という展開になっている。
なんとも珍しい。

また個人的に、
「赤い屋根」は谷崎特有の話の筋の面白さや谷崎自身のセンスの良さが
凝縮された作品のひとつであるような気がするけれど、
同時代に発表された「痴人の愛」や「卍」に比べると、
知名度は正直、それほどないような気がする。

勝手に決めつけるが、「痴人の愛」が好きな人は
「赤い屋根」の世界観もきっと好きになれるだろう。

「卍」が好きな人も
「赤い屋根」の世界観をきっと好きになれるだろう。

ぜひ読んでほしい。私も気力・体力が復活し次第、読み返したい。

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