90年代、目覚まし時計のエンタメ感

子どもの頃、目覚まし時計売り場が好きだった。
父と電気屋さんやホームセンターへ行くと、決まって目覚まし時計コーナーを探した。

90年代前半~半ば頃、目覚まし時計市場は活気があったのではないだろうか。

さまざまなキャラクターの、いろいろなデザイン。種類豊富で、お店によって取り扱い品が違っていたりするので飽きなかった。

時計部分よりも、キャラクターオブジェ部分の方が大きくて目立つ。目覚ましのアラーム音も、それぞれの世界を表現するように凝っていた。

我が家は、私の小学校入学のタイミングで今の実家に住み出し、私たち姉妹に「自分の部屋」が与えられた。

そしてそのとき、一つずつ目覚まし時計を買ってもらうことになった。私はちびまる子ちゃん、妹はキティちゃんの目覚まし時計。

私のは、アラジンに出てきそうな金色のランプにターバンを巻いたまるちゃんが座ったデザイン。ランプの正面中央に時計盤がはめ込まれていた。

音は、アラビアンな ♪~じゃららら~ん~♪ で始まって、まるちゃんが喋り出す。今でも脳内再生ができるくらい、音もセリフも間合いも覚えている。

おはよう、まる子だよ。起きる時間だよ。眠いね、でも起きないと。よいしょ、よいしょ‥‥

目覚まし時計はちょっとやそっとじゃ壊れない。

売り場で心惹かれるものがあっても新調することはなく、結局実家を出るまでの間、アラビアンまるちゃんがベッド横に佇んでいた。

あの音を聞くと、一瞬で実家の朝に戻れる気がする。

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あの頃の目覚まし時計は、ちょっとしたエンタメだった。

おもちゃでもなくアニメでもマンガでもない、目覚まし時計だけのキャラクターの世界。

私はまるちゃんを選んだけれど、アニメ化されていないキャラクターが目覚まし時計になっていると、どんな「声」なのか気になって売り場で再生したっけ。

自分で選んだ目覚まし時計は、セットして眠るのも楽しい。買いたての頃は、時計が鳴るのが待ち遠しい気持ちで眠った。

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最近、娘が目覚まし時計を欲しがっている。

近頃の目覚まし時計市場は、以前の賑わいはないらしい。デジタル化が進んだからなのか、シンプルなデザインを求める親が増えているからなのか。

全面にキャラクターがドーンっと主張する、あの目覚まし時計がずらっと並ぶ売り場にはもう出会えないと思うと少し寂しい。

でもきっと「自分の目覚まし時計で起きる」というドキドキは変わらないはず。娘に、お気に入りの目覚まし時計が見つかりますように。

(2021.7.14 wed)

▼昨日の400字






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