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谷郁雄の詩のノート24

ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」は好きな映画の一つですが、あの映画の中に忘れがたいシーンがあります。地下鉄の座席に座る乗客たちが映り、みんなそれぞれ人生に疲れ、悩みを抱えています。自殺を考えている人もいます。乗客一人ひとりの心の声が文字になり、悩みが吐露されます。そこに人間には見えない天使がそっと近寄り、肩に手をのせ励ましの力を与えると、乗客の心に明るい光が差してきます。そのシーンが好きでした。地下鉄に乗り、疲れた人を見ると、そのシーンを思い出します。さて、若葉の美しい季節になりました。こいのぼりが空に泳いでいます。(詩集「詩を読みたくなる日」も読んでいただけると嬉しいです)


「メルヘン」

ぼくら
このまま
どんどん
年老いて

互いの
顔も忘れ
ともに歩いた
歳月も忘れ

いつか
はじめましてと
挨拶し
ドキドキするような
恋をするのかもしれない


「部品」

道の上に
キラキラ
光るモノがある

宝物を
見つけた
子どもの気分

女の子の
イヤリング
だろうか
何かの
部品だろうか

もっと
光れよと
ぼくは
けしかける

ちっぽけな
お前を
光らせている
あの太陽を
眩しがらせるくらいの
明るさで


「十字架」

教会の
白い十字架が
日に輝いている
「神は愛なり」

暗闇の中を
一人で
歩くときに
一緒に歩いてくれる人が
いたらいいのにと思う

その人が
神様で
なくても

ぼくと
似たり寄ったりの
弱虫でも

©Ikuo  Tani  2023


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