科学で「神」を描く—脳になった惑星 (アバター 雑談)

こんにちはTOKです。
「アバター」続編の撮影が新型コロナの影響を受けてしまっているようですね…。
2009年から気長に待ってきたので、応援しましょう!

というわけで今回は「アバター」についての雑談でございます。

監督はジェームズ・キャメロン。主演はサム・ワーシントンですね。

この映画が公開されたとき、私は小学6年生?だったと思います。
デジタル3D映画の先駆けということで、私が観に行った映画館でもトラブルがおきました。
上映がうまくいかず、途中で止まったりしたんです。
2度ほどやり直しましたが結局上手くいかなかったので、払い戻し+映画券でその日は見られず、別の日にもう一度、もらった映画券で行きました(その日は成功)。

スタッフさんたちが映画券を急いで用意してくださっている間も、別のスタッフさんが館内で謝り続けるという状況でした。
しかし、シアター内ではクレームが続出。
「今日しか観られない人もいるんですよ!?」だの、
「誤ってないで自分もお詫びの品を用意しに行ったらどうだ!!」だの。
最悪でした。人間ってこんな醜いのかよ、と小学生なりに思いました。

ただ、後日観に行った「アバター」がとてつもなく美しい映画で、そんなつまらない人間共への嫌悪感は吹き飛びましたけどね。
スタッフさん方、あの時はありがとうございました。

そう、アバターはとてつもなく美しい映画だったのです。
そして2020年の今、改めて見返してみると衝撃的だったのが、生態系の描写です。
大学で生物学を学び、もう一度(何回も観てるんですけど笑)観たら、まるっきり印象が変わりました。

美しいなんてレベルのものではなかったのです。

最高にロマンが詰まった、そして様々なレベルの楽しみ方ができる、傑作でした。

好きな映画を一本挙げるとしたら、私は「アバター」を選びます。
その理由をこれからお話ししましょう。

みんな誤解してない?グレース

この映画の登場人物で最も頭が良く、特別な存在なのが

シガーニー・ウィーバー演じるグレース

です。
多くの人がアバターを初見で見たとき、こう思ったのではないでしょうか。

グレースは、ナヴィ(惑星パンドラの原住民)の文化を理解し、自然を大切にする心優しい科学者

だと。
多くのレビューを見ても、アバターは「環境を大切にしよう」という映画で、ありふれた恋愛を題材にしている、「映像だけが新しい映画」と書いてあります。

いや、全く違うからね!?

グレースがナヴィの味方をするのは、「優しいから」でも「環境愛護精神から」でもありません。
惑星の自然界には、科学的にとてつもなく重要で価値のある生態系があったからです。
純粋に科学者の視点から、貴重な知の資源を無駄にはできない。
本当に「鉱物よりも価値のある財産がそこにはある」と知っていたからなのです。
本編でも彼女はそれを根拠に軍人たちと議論しようとします。
しかし彼らは全く聞き入れようとしません。

「科学」の持つ力を知らずに、浅い知恵だけで行動することのリスク

が描かれています。

我々の星「地球」とは根本的に異なる世界

惑星パンドラは何が特別なのでしょうか?

アバター観たことある方、主人公ジェイクがアバターの姿ででっかいトラみたいなやつに追いかけられるシーンを覚えていますか?
あのシーンの直前にグレースたち科学者は、木の根っこからサンプルを採取して何か興奮していました
そしてこういうのです。

「この惑星の植物は電気的に信号を送り合って交信している」

どういうこと?
この世界観をイメージするのにとても良いと思う本があるのでご紹介します。

ジュリオ・トノーニ、マルチェッロ・マッスィミーニ共著の「意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論」。

タイトルを見て超読みたくなる人読む気が失せる人に二分されたと思います。

脳味噌の中で、どうやって「意識」が生まれているのか

という本です。
脳の中には「意識」とは関係ない部分もありますよね。
臓器の働きをコントロールしているところとか。
むしろ意識と連動してたら、気絶したら臓器止まって死ぬ、とかなりかねませんからね。

簡単にいうと、

複雑かつ超統合されてたら、意識ができる!

という理論です(ざっくりすぎてごめんなさい)。
ではそれを頭に置いて、パンドラの自然を見てみましょう。

パンドラでは木が電気信号で交信しています。
これは動物の「神経」に似ていますね。
地球の植物はホルモンやフェロモンといった、化学物質を移動させることで情報を送り合います。
それをパンドラでは電気信号でしているんですね。

電気を使うと何がいいのか。

単純に、速いです。

通信速度が速いのです。
速いということは、統合されているということです。
お互いの情報をすぐ知れるから、密接につながっているということ。
(上述の本とは厳密には異なると思いますが、SFですから…笑)
それぞれの生物一つ一つがすごく複雑な構造をしているのに、それがお互いの情報をすぐ知れる統合された状態でいるのです。
全体のネットワーク(生態系)で見ると超複雑ですね。

ここから何が推測できるのか。
惑星全体(あるいは地域)で、一つの巨大な意識が共有されている(一つの脳orインターネットみたいな状態)可能性です。
思い当たる節がありますね、女神エイワです。

映画の中でグレースが言っていますが、「アバター」の世界における女神エイワは、宗教のために作られた偶像ではなく、実在するのです。

もちろん地球の生態系は全くそういう作りではありませんから、地球に神が例えいようとも、エイワと同じ方法では存在を証明できません。
しかし、グレースは他の惑星を調べることによって、そこに科学的に存在が証明できる神を見つけたのです!

科学者で神の存在を否定する人々は、決して「いて欲しくない」と思っているわけではないのです。
「いたらすごいけど、いる証拠がないから信じろと言われても無理」なのです。
そんな科学者がパンドラに行ったら?
そしてその存在を可能にしている複雑なネットワークを、鉱物を採取するために壊そうとしている人間がいたら?

「アホちゃうかすぐやめなはれ!!もっといいもんがそこにはある!!」

ってなりますよね。それがグレースの立場です。
だからジェイクやナヴィたちとはグレースは根本的に違う気持ちなのです。

そうすると、説明のつく現象があります。

シーンの意味

・動物との意識の共有

ナヴィやアバターは頭についた尻尾的なやつの先のモシャモシャ(?)を動物と繋ぐことで意識を共有し、乗り物として、また相棒として一緒に行動します。

植物は根っこを張ることで常にネットワークに接続していますが、動物はおそらくモシャモシャを使うことで自然のインターネット「エイワ」や他の動物と意識を共有しているのでしょう。

最終決戦で、ピンチに陥ったとき動物たちが一斉に加勢してくるシーンがあります。
これは「エイワが答えてくれた!(ネイティリ)」のではなく、エイワが自分を構成するネットワークが破壊されたことに対して反撃しているのではないか、と私は思っています。

・聖なる木

途中でジェイクとネイティリが互いの想いを確認するシーンで、聖なる木のところにいきます。
そこで先祖の声を聞きます。

また、戦いの前にジェイクは聖なる木に接続し、エイワに頼み事をします。

基本的に植物によって構成される惑星のネットワークに、ナヴィたちが参加しようとするとき、この木に接続するのではないかと思うのです。
そしてすごいのは、自分の意識のバックアップが取れたり、それによって身体が死んでも意識だけエイワの中で生き続けることができるのではないかと思うのです。
だから先祖の声が聞こえ、また死ぬ直前にグレースが「エイワがここにいる」みたいなことを言っています。

続編にシガーニー・ウィーバーが出てくるらしいですが(?)、もしかしてこれと関係あるかもと思います。
グレースはエイワに迎え入れられ、まだ生きているのではということです。
エイワを介したアバターへのジェイクの意識の転送も、これで説明がつきます。

いかがでしょうか。
以上から私は、アバターは完全なSFであり、地球の超常的な神とは全く異なる女神を、科学的に描いている映画だと思っています。
単純に「自然を大事に」でも良いですが、こっちの方が遥かにロマンがありませんか?

ジェームズ・キャメロンってやっぱすごいなあと感じますので、アバター2以降もじっくり、科学的で、かつ美しい、迫力のある超大作を期待しております。

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