猫玄関

歓迎会-Finland

その日の夜は、みんなでお酒を飲んで踊って話をした。簡単な歓迎の宴である。それから毎日同じように飲むとはこの時はまだ知らない。

アスタさんはとても陽気な人で、一緒にいるだけで幸せな気持ちにしてくれる。どこかに消えたと思ったら妙なお面をつけてきたり、食べ物を咥えたまま変な顔をしてぼくが見るのを待っていたりする。楽しませたくてしょうがないのだ。

言葉が通じないから余計に伝えようと頑張ってくれているのかもしれない。いや、頑張っているじゃなくて自然にしてくれている。こちらもなんとか理解しようと表情や感情を見逃さないようにしようする。すると不思議と伝えたいことがわかってくる。まるで子育てみたいだなと思う。赤ちゃんの言葉もわからないけど、ちゃんと伝え合うことはできるのだから。相手を思いやる気持ちさえあればどこでもやっていけるのだ。きっと。

日本にいると言葉がある分、伝え合うということがおろそかになっていることもあると思う。言った、言わないの話になったり、言いすぎてしまったり、そもそも聞こうとしてなかったり。気をつけているつもりでも、反省することばかりだ。

お食事を終えたら近所の散歩に出かけた。スーパーがぎりぎり開いている時間だったので案内してもらうことになった。スーパーまでの道のり(といっても3分ほど)は、草原を歩いていく。ルピナスの花がたくさん咲いていて、とても気持ちよかった。

ね、草原でしょ? 笑

ウサギが出てきて案内してくれたりしないかな、大きな木のむろにある秘密の世界に繋がってたりしないかな、ちょうどいい感じの枝落ちてないかなと、わくわくしながら付いて行ったらあっけなくスーパーに到着した。

外国のスーパーはいつだって楽しい。かわいいパッケージや色とりどりの野菜、大きなチーズや怪しい食材を見ているだけでテーマパーク並に楽しめる。安い男だ。お酒やジュースやお菓子、フルーツなどを買った。

スーパーの後は、歩いて10分くらいのところにある湖に行った。夜11時くらいでちょうど夕日が落ちる時間だった。

夕日を追いかけるのはなぜあんなに心が踊るのだろう。太陽に一番近づける気がするからかもしれない。今日の感謝を伝えたいからか、明日もまたねとお別れを言いたいからか、さみしさの裏返しかもしれない。ただ綺麗だから、が一番正しい気もする。

水着を持ってきたらよかったなあ(スーツケースに入っている)と思った。とても寒そうだったけど、怪しくヌラヌラと輝くこの広い湖が呼んでいるような気がした。深夜11時半では寒中水泳になってしまう。暖かい日に一度は入りに来ようと思う。

初めての白夜、長い1日。



つづく・・・


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