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二人目 ある女の友人の独白


「もう話してもよろしいのかしら?
ウチが話したことは誰にもに内緒なのでしょうね?
記者の取材を受けるのがこれが初めてなんてね。嫌なもんよ。

ウチがあの子の友人だって?ただの同僚よ。うん同僚。
そりゃ働いていましたからよくお話はしましたことよ。
身の上話も酒の肴にしましたけれど。

あんな女の話を聞きたいの?

ふん。やっぱり案の定、世間様の興味はそんなところだろうと思った。
あぁ嫌らしい。面白おかしく書き立ててそれで楽しもうなど下卑たもの。貴方だってそうでしょう? 
え?真実を書きたいと?
そんなの軍やら警官やらに任せておけば良いものを。
なんとも物好きな人。だから記者なんてやっているのでしょうけど。

はいはい。

あの子のことを話すわよ。
ちゃんと謝礼はくれるのでしょうね?疑っている訳じゃないけれど・・・あの子はね。
ちょっと変わった子だったの。でも貴方も写真で見たでしょう?
あんな器量良しだったからそれも魅力的でね。
男も女もみんなあの子を好きだったわ。ウチが同じ事をしてもきっと嫌われていたわね。
はいはい只の嫉妬。
そんなの分かっているわ。
時々何を考えているのか分からない時もあったけど、それでもそこが良いと言うお客さんもいてさ。
本当に男はバカね。
何にも知らないの。
前にお仕事終わりにお食事でもと二人で洋酒を傾けた事があったわ。
店の奥から取り出してね。
一寸だったけどすごく美味しかったわ。

その時に彼女ポツリポツリと話してくれたの。
そう身の上話。
その時からなんだか不憫になっちゃってね憎めなくなっちゃった。

彼女ね・・・軍人にお父さんを殺されてるの。
酒に酔った軍人に絡まれてさ・・・その場で斬り殺されたの。無残にも。
でもね体裁もあるのでしょうね。
その後、彼女のお父さんがすっかりと悪者にされちゃったの。
もうそこからの転落人生といえば小説ならば売れそうね。

聴くには絶えなかったけど。

ウチが話を書こうかしら?
ねぇどう『ある女の一生』売れそうじゃない?でもそんな事はしないけれどね。
ウチには文才がないしさ。さっさと続きを話せと?はいはい。会話も楽しめないのね。
まぁ世間様に疎まれながら日影暮らしをしていたらしいの。
それで地元を逃げ出して来て、ここで働きだしたのね。
彼女の一生で多分一番楽しい時だったんじゃないかしら?
ようやく手にした幸福!きっと昔に夢見た花の様な日々を生きる自分!
でもあんな男に目をつけられたばっかりに残念よね。
本当に美人薄命ってやつよね。
あれってさ、きっとバカな男がこぞって現れるから美人が薄命にならざるを得ないんじゃないかしら。

貴方みたいな。

あれ?怒った?怒る顔もできるんじゃない。タイプライターに話している気分だったわ。
それであんな軍人に付きまとわれて彼女の過去も蒸し返されて・・・あの子は不憫でしょうがないわ。

やっぱり。でもね。ウチはあると思うの。

因縁だとか前世からのつながりとか。
きっとそういう目には見えないものが絡まって結局は同じ結末となるの。あぁ悲しい悲しい・・・
結局のところ私が言いたいのはあの子はすごく不憫な子なの。
悪い子じゃないしみんなに好かれているし。
ただ一寸悪い縁が繋がってそれで結局自分の首を絞められちゃったのね。
だから死ななきゃいけなかった」

【廻り巡る】一人目の告白はこちらから
https://note.com/tanakannaika/n/n784a7e721e5c


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