普通の会社員がフリーランスで稼ぐ

普通の会社員がフリーランスで稼ぐ #全文公開 No.7 いま文系フリーランスが求められる理由

 ここまで文系総合職として10年、15年と経験を積んだ人材が「フリーエージェント宣言」し、フリーランスとして働き始める潮流があるという話をしてきました。
 では、なぜ今、こうした「文系総合職フリーランス」が生まれつつあるのでしょうか?
 その背景を個人側、企業側、そして社会の側から探っていきましょう。
 まずは、個人の理由からです。

1 長時間労働が「前提」の正社員では〝サステナブルな働き方〟が難しい

 個人側の理由のひとつめに、「長時間労働」の問題が挙げられます。
 日本は他の先進国と比べても労働時間が長い傾向にある国です。
 独立行政法人労働政策研究・研修機構が発表している国際労働比較の2014データブックによれば、日本人1人あたりの平均年間総労働時間は1745時間です。1988年の改正労働基準法施行前の2000時間台に比べれば、300時間ほど短縮されてはいます。しかし、ドイツの1397時間、フランスの1479時間などのデータと比べると、長い傾向にあることは事実です。
 日本の年間休日数は137.3日で、イギリス(137.7日)とほぼ同水準です。年間休日数が最も多いのはドイツ(144.0日)に、イタリア(143.0日)、フランス(143.0日)が続いています。それほど他の国と比べても大きな差は生まれていません。
 しかし、一人あたりの総労働時間が80年代に比べて実に10%以上減少しているにも関わらず、「長時間労働が緩和された」という印象を持つ人は少ないのではないでしょうか。

「なぜこんなにも長く働かないといけないのか」「残業が多すぎるのではないか」――こうした印象を抱いている人のほうが大勢でしょう。
 これに対して独立行政法人経済産業研究所における「労働市場制度改革」の一環として東京大学の黒田祥子氏(当時)が2010年に発表した「日本人の労働時間」に関するレポートには以下のような分析結果が述べられています。

・週休二日制の普及で土曜日の労働時間が減少した分が平日の5日間に上乗せされている可能性がある。
・日本人の週当たり睡眠時間は減少傾向。過去30年間においてフルタイム男性で週当たり4時間、女性で3時間程度低下してきている。
・睡眠時間の低下は平日の労働時間の増加がもっぱら睡眠時間の削減によってまかなわれている可能性がある。

 年間の平均総労働時間が減っているにも関わらず、私たちがハードワークだと感じる背景には1週間の労働時間の配分の変化と、それに応じて睡眠時間が減ってきていることがあると考えられます。

 加えて、総合職に関して言うと業務内容が複雑化し、求められる業務スピードが格段にアップしていることも仕事のハードさに拍車をかけています。

 人材コンサルタントの常見陽平氏は著書『すり減らない働き方』(青春出版社刊)の中で、正社員に求められる業務の難易度が上がっている可能性を示唆しています。
「派遣社員という存在が現れたことで定型的な業務は派遣社員に任せ、正社員が本当の意味でスキルと経験と知識が問われる難易度の高い業務を中心に担当するようになった。これが長時間労働を蔓延させることにつながっている」と常見氏は言います。
 
 さらにテクノロジーの進化で職場にパソコンとインターネットが普及したことも、働き方を一層ハードなものにしています。
 電話、ファックス、郵便が情報伝達手段だったころに比べてメールやメッセンジャーがワークスタイルの中に普及し、業務に求められる〝速さ〝がアップしていることは、多くの方が感じているところではないでしょうか。
 ビジネスメールは24時間以内の返信が〝常識〟などといわれますし、それどころかメッセンジャーでは常にダイレクトな会話が交わされています。現代社会で求められるビジネススピードは明らかに、そして格段にアップしています。
 
 こうした様々な理由により、日本では長時間かつハードな働き方が求められているといえます。
 まして、今後は年金の支給開始年齢の引き上げなどもあり、70歳~75歳くらいまで働き続けることが必要になるまさに「職業人生50年時代」に突入するといわれています。

 そのように長い期間、どんな環境であっても「働き続ける」ためには、長時間モーレツに働くワークスタイルは変わっていかざるをえません。そこで必要となるのが、より「サステナブルな(持続可能な)働き方」です。


2 育児、介護......時間や場所の制約で多様な働き方が求められている

 結婚、出産、子どもの進学、親の介護......ライフステージの変化により人の「働き方」は大きな影響を受けます。
 もともとキャリアとは、イコール「仕事」ではなく、「仕事を軸とした生き方のプロセス」と解釈されますから、当然と言えば当然のことかもしれません。
 実際、約6割の女性が第一子出産前後で仕事を辞めるというデータがありますし(厚生労働省、平成23年度版「働く女性の実情」調査より)、年間約10万人が介護を理由に離職・転職しているというデータもあります(総務省「就業構造基本調査」より)。
 
 育児・介護休業法が改正され、3歳までの子どもを養育する労働者について短時間勤務制度を設けることが事業主の義務となりました。
 導入企業は約58.4%(平成24年度 厚生労働省「雇用均等基本調査」)と増えてきてはいるものの、導入が進まない会社や、導入しても運用がうまくいっていないケースが見受けられます。

 長時間労働が前提のワークスタイルの中で、「短時間勤務」を取り入れたとしても、それが労働者の活力を引き出すことに必ずしも結びついていないケースが多いということです。 
 

 よくあるケースでは営業などの外勤中心だった会社員が、短時間勤務を選ぶと、本人の希望の有無を問わず自動的に内勤中心の業務に異動させられるということがあります。
 短時間勤務者に担当させる職域が社内で限定されていたり、昇進・昇格ができなかったりということも珍しくありません。
 短時間勤務であることを理由に、基本給カットに加えて人事評価まで大幅に下げられてしまうこともあります。
 私が知っているワーキングマザーは、第一子出産後に時短勤務で職場復帰。時短ですから基本給がカットになるのですが、これに加えて等級がダウン。人事評価でも出産前には常にA以上の判定を得ていたものが一気にC評価へ。これにより給与は30代後半にして新入社員と同レベルにまで下がったそうです。
「あまりにショックで、そもそもこの会社に勤め続けていいのかわからなくなりました。これまで会社や周囲の期待に応えようと努力して成果を挙げてきたのに、働く時間が短いというだけでここまで給与や評価が下げられてしまうなんて......」
 

 こうした会社環境の下で、それでも歯をくいしばって会社に所属し続ける働き方もあるでしょう。しかしそのような選択肢をとらずに、フリーランスという働き方を志向する層が現れています。

 自分が本当に取り組みたい仕事に集中してキャリアを積むことができて、プライベートライフとのバランスもとりやすいフリーランスが総合職にとって、ひとつの生き方の選択肢になっているのです。
 
 実際、大手人材サービス企業で営業やキャリアアドバイザーとして働いてきたNさんも今春からフリーランスという生き方を選んだ一人。
「もちろん、育休制度も短時間勤務制度も勤務していた会社にはありました。でも、制度があるからといって問題が解決されるわけではありません。みんなが21時、22時まで働いている中で時短で業務を切り上げるのには常に〝申し訳なさ〟があって......。私は子どもが2歳で病気がちなこともあり、看病のため突発的に仕事を休むことも多かった。出産後、仕事に復帰してからは、毎日、〝ごめんなさい〟〝すみません〟と周囲に謝りながら仕事をしていました」と話します。
 フリーランスになってからは子どもの病院通いや予防注射などの予定を中心にスケジュールを組めるので、毎日の精神的な負担が軽くなったそうです。(次記事へ続く)

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