見出し画像

2015年8月のアメブロ記事より転載

『プロ精神八ヶ条』~指導者編~

昨夜は親父の行きつけのスナックでしっぽり。プロ精神八ヶ条の再受講。

昨日、甲子園で45年ぶりに優勝を果たした東海大相模。その45年前の同校の監督こそが、昨年逝去された故原貢監督。(現巨人監督の原辰徳氏の実父)

今回二度目の優勝に導いた現東海大相模の監督は、原監督在任中の教え子なのだそうだ。

原貢監督がノンプロ現役を引退後に監督として就任した、三池工業高校野球部の1年目の主将が父だった。

当時、福岡県大会の切符をかけた地区予選で敗退する程度の弱小野球部。その弱小野球部の監督に就任した原監督と父が最初に交わした会話は、今でもよく覚えているらしい。


「田中、お前が新チームのキャプテンか。いいか、日本一になるぞ。お前の代でなれんかったら、次の代。次でもダメならまた次の代。俺は必ず5年以内にお前たちを日本一にする。そのつもりでお前もこの一年間キャプテンを務めろ」


父も最初は《なんば言いよっとやろうか、この人は?》とあまりの大風呂敷に「はぁ…」としか返事ができなかったらしい。

ところが、翌日から父だけが連日自宅に招かれ、夕食を共にしながら原監督自身の夢、日本一への道筋、野球論、技術論など、懇々と語られたそうだ。


「まぁ、今思えば洗脳たい(笑)。原さんはどのチームに行っても、最初はチームの中心となる選手を自宅に呼んで1対1で話したげなもん。

毎日語られたら、やっぱり段々俺たちもその気になってくるもんなぁ。結果、宣言通り4年で三池工業を日本一にしたよ」


その後、当時は全くの無名だった東海大相模に引き抜かれ、数年で全国の強豪に押し上げた。

それが45年前の甲子園初優勝。

さらに、東海大の監督に就任し、息子の原辰徳氏と共に大学リーグ7連覇という偉業を成し遂げた。


「あの人は指導者としても人間としても一流中の一流さ」


親父曰く、良い指導者の最低条件は「具体的な夢、目標があること」に尽きるそうだ。「これが全て」と言っても過言ではないらしい。


「あゝなりたい、こうなりたいってレベルの夢目標じゃなかぞ。俺は絶対にこうなる!って決まり切っとることのように語れる夢目標たい。ここさえ決まれば、理に適った努力や戦略は自然と備わって来る」


父は一年間、原監督から精神的にも肉体的にもみっちり指導を受け、卒業の時にはプロからドラフトが掛かるまでになった。

現役引退後は原監督に指導者としての教えを請いながら、独自に研究し体系化した「プロ精神八訓」で2名のプロ野球選手の輩出と、九州最大のリトルリーグチームを組織するに至った。

父と同じくノンプロの道に進み、「九州No.1捕手」と言われた故谷平氏も父と高校からの同級生で原監督の最初の教え子。

その他、野球外でも社会に出て大成した同級生が多勢いるのだそうだ。

弱小野球部をたった一年指導しただけで、プロの眼にも止まる選手を2名育て、野球ではなくとも社会に出て活躍する人間力を引き出すのが原貢氏の指導力。

原監督は、父を自宅に呼んでよく自身の夢を語ったらしい。


「甲子園で優勝したら俺にはまだその先の夢がある。高校の監督だけでは終わらん。最後は指導者としてプロ野球に行く」


そんな原監督自身の夢を熱く語ることで、その熱がどんどん選手たちにも伝染していき、選手たちが自分たちの夢を見つけ語り出すようになった。


「原さんがプロで監督することはなかったばってん、息子の辰徳がその意志ば受け継いでやりよるたい。最期は満足やったろうだい」


父がリトルリーグの指導者としての教えを受けていた時、原監督はこんなことも言ってたそうだ。


「子供たちに泳ぎを教える時、最初はプールで自由に遊ばせろ。溺れてでも自由にさせておけば勝手に泳ぎは覚える。細かい技術を教えるのはその後でいい。ただ、フェンスを乗り越えて逃げ出す時は許すな」


大切なのは技術より気持ち。
原監督からは徹底してそのことを教えられたのそうだ。


「原監督もよく言いよったばい。
 
「“運”は自分で寄せなきゃ、棚からぼた餅を待ってても来るもんかよ」って。

日頃から弱気に打ち克って、“運”ば呼び込む精神ば鍛えとけよ。そのトレーニングがプロ精神八訓ば徹底することたい。
自分に打ち克つヤツのとこに運も引っ張られて来るとやけんな。

克成よかか、どんなにきつくても弱気にはなるなよ。弱気ば入れたら身体からガタの来るけんな。

「病は気から」って言うて、弱気から大病にも大怪我にも繋がるとぞ。
最後は何だかんだ言うても気合、根性の精神力ですよ。

お前には何遍も言うとるばってん、“精神力”、“技術力”、それから“運”。この3つを合わせたのが【実力】ぞ」


東海大相模の優勝によって、今回新たに聴くことができた親父のプロ論。
学びを学びで終わらせることなく、僕自身の人生と役割において実践していこう。

2015.8.21 田中克成

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?