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「ふざけたい」と言える大人のままでいたい

朝井リョウさんのエッセイ『風と共にゆとりぬ』を読んでいると「常に公式にふざけられる場所を探しているきらいがある」という文章が出てきて、私のアドレナリンが上昇した。

ざっくり説明すると、「この時間はふざけてもいいですよ」と許可が出ている場所やチャンスを嗅ぎ回っているということ。イベントの催し物だったり、結婚式の余興だったり、楽しんでもらえるように安心して全力を尽くしていい“何か”を探しているのだ。

同書では、朝井さんが公式にふざけるために全力を尽くしている様子が最高に面白い文章で綴られているんだけど、ページをめくるたびに私の心の中にひっそりと飼っている「ふざけたい青紗」がむくりと起き上がってくる。

私も、公式でふざけられる場所を探しているのだ。






年齢を重ねていくと、いい意味でふざけにくくなる。

もちろん私もいつもふざけているわけではないし、きっと「実はふざけたがっている人」だとはあまり思われていないように思う。それで全然いい。

……だけど、許されるのであれば、ふざけたい。

以前、所属しているコミュニティのオンラインお祭りイベント(クローズドの会)で、私は大喜利バラエティ番組の真似をして「IPPONグランプリをやりたい」と立候補したことがある。

「好きなコンテンツをやっていいですよ」と、公式に「思いっきり遊ぶ日」と認定されていたので、これはもうチャンスしかない。参加してくれるコミュニティメンバーの有志を集め、「IPPONグランプリ(風)」を開催。チェアマンを担当した。司会者のような役割である。

せっかく開催するのなら、少しでも「ぽさ」を出したい。「あれこれ、本当のIPPONグランプリ?」と思ってもらえるように事前準備を徹底する。

再現度を高めるために過去の「IPPONグランプリ」を視聴し傾向をおさらい。お題・スライドを作成し、事前に友達を巻き込み不明点はないか客観的な視点からチェック。リハ。チェアマンぽさを出すために衣装を考える。「帽子を被ればそれっぽくなるんじゃね?」と思ったものの、我が家にそれっぽい帽子(ハット)がなくて、前夜にダンボールで自作。当日家族にビデオ電話をして客観的なアドバイスをもらう。

なんてことをしていた。一人で。

当日は笑ってもらえて無事に終了。参加してくれたメンバーには心から感謝を申し上げたい。こんな機会を提供してくれて本当にありがとうございます。

この他にも、思い返せば新入社員時代、私と同期はハロウィンの日にコスプレをして(私は帽子とマントを付けて魔女だったような気がする)平然を装っていつも通りオフィスを掃除していた。

「おはようございまーす」と出社してくる総務部の方、先輩方に挨拶をする。昨日まで普通の服装で掃除をしていた社員が、なぜか今日ポップになっている様はそれはもう謎である。

まわりのリアクションや、なんでこんなことをしているか主な理由は忘れてしまったが、私と同期は「同じ匂いがする人間」ということだけは確かだった。

「今週」
「ハロウィンだね」

そんな会話で二人の思考は一致したと睨んでいる。

書き出していたらまだまだある。叔母の還暦祝いのビデオレターを弟と一緒に本気を出して作ったり、コミュニティメンバー同士のオンラインコワーキングで「実はコワキをしつつ、みんなにバレないように〇〇をしていましたっ!」と他のメンバーとドッキリを仕掛けるために、なぜか私は1cmずつ前髪を切っていた。(仕掛け人の1人は平然を装い、激辛麺完食にチャレンジしていた)

一つ一つを思い出したら若気の至りで恥ずかしいけれど、楽しかった。







ただ、軽くではなく「本気でふざける」となった場合、年齢を重ねるとだんだんとできなくなっていく。

私も心の中では「ふざけたい青紗」を飼っているが、やはり「あ、ふざけちゃダメかもな」とブレーキをかけてしまうこともある。また、自分はふざけたいけれど、私の場合は事前練習&リハなどを重ねてしまう傾向があるので、相手からすると「え、ちょっと思っていた“ふざける”と違うから無理」となるケースがあるのだ。そう、私は“重い”のだ。

だから、安心してふざけられる場所や機会はそれはもう貴重である。絶滅危惧種レベルで稀である。「IPPONグランプリ」のチェアマンができたのは奇跡でしかない。

場所、機会、人、タイミングなどがカチッとハマるときは少ないからこそ、貴重な瞬間を逃さないように、私はひっそりとチャンスを伺っている。

いい意味で一緒にバカをやってくれる人と出会えたときや、熱量のベクトルが一緒だったとき、私はとても嬉しい。

「これってさ」
「リハ、いるよね」

なんて会話ができたとき、一生この子についていきたい気持ちで胸がいっぱいになる。






私はいつまでも「ふざけられる大人」でいたい。

時には失敗をするし、もしかしたら「何やってんの」とバカにされることもあるかもしれない。

ふとしたときに「いい大人だからふざけるのはやめたほうがいいか……」なんて思ったけれど、エッセイを読んで、朝井さんのチャンスを伺っている姿勢にものすごく勇気をもらった。めちゃくちゃ元気になった。朝井リョウが狙っているのなら、安心して私も狙っていきたい。

少しの工夫で周りを楽しい気持ちにできたら嬉しいじゃない。

振り返ったときに「面白かったなあ」と言える思い出を増やせていけたらいいな。

まあ、完全に自己満足な世界なんだけどさ。

いつでも対応ができるよう自分の引き出しを増やすべく、今日も私は情報収集に勤しんでいる。

最後まで読んでいただきありがとうございます!短編小説、エッセイを主に書いています。また遊びにきてください♪