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サバイバル

 昨日はどん底だった。
 ユーザー車検に行ったら、相談できるはずの窓口でわかっている人には通じるけれど初心者にはわからない言葉で叱られ、書類を書けば焦って鉛筆書きのところをボールペンで書いて書き直し、14時には到着したのに書類を書くだけで2時間かかり、時間切れで車検は受けられず。
 相談できるはずの窓口で、最初に叱った人も、最後に叱った人も、結局、かみ砕いておしえてくれて、予約も取り直してくれて、親切だった。
 ただただ、不甲斐ない自分に嫌気が差しただけ。

 よくよく考えると、自分には運もツキもない、その上要領悪くて、なにやってもうまくいかない。
 大体、現金の持ち合わせが少ないから、車検は全額カード払いできるスタンドにお願いしていたのに、そのこと忘れて「車検費用が安くなる」という言葉に踊ってる。おかげで銀行口座はほとんど空になった。
 車検通らず、車がなくなったら、一体私はどうすればいいんだろう。
 車だけでなく、住むところもなくなる。
 どん底のどん詰まり。

 そんなこと思っていたら、どんどん自分が嫌になって、こんな自分と縁を切りたくなった。

 そうは言っても、やるだけのことはやらねばならない。
 昨日みたいな日をすごすのが嫌で嫌でたまらなかったけれど、起きないわけにはいかない。
 書き直して汚くなった書類一式を持ち、予備検査場へ向かった。
 予備検査場とは、ユーザー車検の前にひと通り本番と同じことができる場所。そこで、よく不合格になる光軸やタイヤの向きを調整してもらう。
 私の場合は、ヘッドライトの光量が足りないことが判明。このままギリギリを信じて本番へ臨むか、交換するか。慎重な私は交換を選択。

 一番近いカー用品店はタイヤ交換で忙しく、車検の予約時間に間に合わない。急いで、次の店に向かう。
 20分で交換してもらい、予備検査場へ戻り、再度光軸を調整してもらった。
 ユーザー車検の受付窓口は、昨日、最初に叱られた人。
 ドキドキしてたけど、無事に「2番に並んで待ってるように。順番になったら、『初めてです』と言いなさい。ちゃんと付き添ってくれるから」と送り出された。

 2番の2台目。係員がやって来た。
「初めてなので、お願いします」
 半分以下の子に付き添われ、タメ口で指示され、アドバイスをしてもらい、なんとか全部○。
「下の人が終わったと言ったら印字して、あそこに提出してね」
そう言い残し、放置されていた後続へと向かっていく。
「ありがとうございました!」

 書類を出したところも、その後戻って提出したところも、受取窓口も、全部、ちゃんちゃんと進んでいく。どこかで引っかかるんじゃないか、と思うのに、順調に新しい車検証が交付された。
 帰り道、予備検査場へ立ち寄り、お礼を伝える。
「よかったら次も来てね。今度は書類、書くところから手伝うから」

 無事に終わり、結局、頼むはずだったお店の見積額の半分くらい、かかってしまった。現金、またなくなった。
 でも、どん底から数センチ浮上。
 助けてもらったら、なんとかなった。助けてくれる人がいた。その安心感たるや。

 シェアハウスのグループLINEに「お金がなくなったので、仕事紹介してください」と投稿したら、出稼ぎに出ている住人から「ひとつ紹介できる」と返事が来た。
 採用されるか、わからないけどありがたい。

 この先は不透明だ。
 でも、助けを求めたら、手を差し伸べてくれる人がいるかもしれない。
 そう思えたおかげで、今日を生きれた。明日も生き残れるように、気持ちを立て直そう。
 まあ、まずは放置してしまっている案件を片付けねば。書かねばならぬ、今日も明日も。
 くたばるのは、それからだ。



ネコ4匹のQOL向上に使用しますので、よろしくお願いしまーす