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理想ではなく現実の素材を組み立てる

仕事であたふたせずに結果を出す。

あたふたしてしまうのは、多分に現実に向き合って臨機応変に行動しようとするのではなく、自分のなかでどうすればいいだろうかとばかり考えてしまうからだったりしないだろうか。

結果というのは外に出すものだ。
だから、自分の内でばかりあたふた慌てても仕方ない。
慌ててしまいそうになるときこそ、自分の外の現実に向きあわないと。

冷蔵庫には何が残っているか

いま、この場で何が求められているのか?
それを実現するにはいま目の前に提示されているこの素材を使って何をどういう手順でやっていけば良いだろう?

常に現実に存在する他者や社会的な要求や思い、その他使える情報を素材にちゃんと向き合う。
そうやって現実に対峙することが、理想的な状況でしかまともに機能しない、できあいのレシピに頼ろうとするよりはるかに重要なことだ。

現実は立派なレシピ本の世界ではない。
冷蔵庫の残り物で使って、どんな美味しい料理をアレンジして作れるかという世界である。

仕事のレシピに載っているものが揃えられるならいい。
だが、レシピに載っている素材が揃えられないならレシピにこだわってあたふたするよりも、何が揃えられるかと結果として求められるものは何かということを見比べて、どういう仕事をどうやってやるかという作戦――料理と料理法だ――を新たに考えなおしてみるとよい。

手段――レシピ――が目的と勘違いしてしまうから、手段どおりにできない現実を前にあたふたして、スタックしてしまうのではないだろうか。

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意味のある結果を生むための仕事か?

仕事には、なんでその仕事をするか?の流行がある。

目的のない作業そのものが形骸化して目的となっているようなブルシット・ジョブでなければ、本来は目的の達成ができれば作業の方法は問われないはずである(もちろん、合法で、ほかの人や環境に悪影響がない限りにおいて)。

デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』に、ブルシット・ジョブ=クソどうでもいい仕事に従事させられ続け、精神をおかしくした若者の例が紹介されている。たとえば、このエリックの例もそのひとつだ。

エリックをおかしくしたのは、自身の仕事がなんらかの目的に奉仕しているようには、どうしても解釈できないという事実であった。エリックには、家族を養うためだと自分を納得させることもできなかった。当時、家族をもっていなかったのだから。かれの出自は、人びとの大多数が、事物の製造や、保守や、修理に誇りをもっている、あるいはともかく、そのようなことに対してひとは誇りをもつべきだと考えている、そのような世界であった。だから、かれのなかでは、大学への進学も専門職の世界に入ることも、同様のことをもっと意味があってもっと大きなスケールでやるのとイコールだった。ところが、現実には、かれはまさに自分のできないことでもって職を得てしまった。辞職しようとした。すると上司らは、給与を上乗せしてきた。クビになろうとしてみた。上司はクビにしなかった。

自分の仕事が何の役に立つのか、意味があるのかわからないまま、仕事をさせられ、やめさせてももらえない。そのことでエリックは精神をおかしくする。

だが、その一方で世の中には、自分の仕事が何の役に立つのかを考えたりせず、言われた仕事をただやり続けたり、そういう意味のない仕事を部下や他人にやらせ続けたりする人もいる。

もちろん、そういう仕事からは何の意味のある結果も生まれない。そもそも意味のある結果を生むことを想定した仕事ではないのだから。

ロジックモデル

だから、仕事を組み立てるためには、その仕事でどんな意味のある結果を出したいのかをまずはじめに考えることが大事だと思う。
考えなければ、結果的にブルシットな仕事を生み出すことになる。

特に、このさまざまな環境・社会課題の解決が求められる状況においてはそうだ。

その観点でいうと、村上芽さんと渡辺珠子さんによる『SDGs入門』にも紹介されているロジックモデルというフレームワークは、そうした思考を行う際の参考になる。

環境・社会的な課題の解決、それによる社会的なインパクトの早出と、自分たちが行う仕事とその直接的な結果の関係を整理する上でのフレームワークだ。

インプット(事業活動のための資源)
アクティビティ(製品やサービスの提供などの活動)
アウトプット(製品やサービスの直接的結果)
アウトカム(事業活動によってあらわれる社会的な変化としての成果)
を整理して、自分たちがどのような社会的なインパクトの創出に向けて、どんな活動を行うか、短期、長期でどんな結果や成果をあげることを目標とするのかの整理を行うために使用する。

こうした結果と活動の整理は有効だ。

ロジックモデルのカードを並べていくと、SDGsのゴールを右側に置いたときも、左側に置いたときも、全体の流れの中で自社だけでできることというのが限られていることに気が付かれたと思います。また逆に、誰か会社の外の人で、「こんな風に動いてくれたら、うまくいくな」と思うようなポイントも出てきたのではないでしょうか。そうしたところは、SDGsへの取り組みを進めるために必要なパートナー探しの手がかりになります。

というように、何が足りないか、何を外から補う必要があるかがわかってくる。

いま求める成果をあげるために、自分たちの冷蔵庫に入っているものの何が使えて、あらたに外から何を調達する必要があるかということも。

求める成果と、現実的な資源や活動の関係をロジカルに整理する

これは比較的規模の大きな見方での仕事の成果と活動の整理だが、もっと日常的な仕事でも同じである。

いや、むしろロジックモデルで整理したことが現実のものになるかどうかは、より詳細に日常的なレベルで、仕事を結果とタスクに分解して実行可能な状態に組み立てられなくてはならない。
でなければ、ロジックモデルなど、まさに絵に描いた餅だ。

それには何より求める成果は何か(アウトカム)、それはどんな結果をつくることで得られそうか(アウトプット)ということと、自分たちの手中にある資源は何か(インプット)、その資源を用いてどんな活動をすることで期待する結果や成果を生み出せそうか(アクティビティ)の関係性を、日常的なタスクのレベルでも整理して描きだせることが必要だ。

そのためには当然、インプット(リソースやノウハウ)、アウトプット(具体的な結果)、アウトカム(どんな状態変化を起こしたいのか)というそれぞれのレベルで、現実的=自分ごと的な情報収集〜理解を行う必要がある。

何を生み出す必要があるのか、それを生み出すことによって期待される変化はどういうものかを、ヒアリングやリサーチやディスカッションなどを通じて考え、決めることが必要だし、自分たちが可能なことを明らかにするためにも自分たちのリソースやノウハウの棚卸しも必要だ。

それがあってはじめて、自分が何をすればよいか(アクティビティ)が明確になり、現実に予期せぬことが起きても、そう簡単にはあたふたしなくなるのでないか。

そんな風に、ちゃんと現実に向きあうかたちで情報を集めて整理することを怠るから、自分がどうすればよいかばかりが気になってしまうことになる。

ブルシットジョブの罠に陥らないようにするためにも、レシピ本に頼るような仕事ではなく、現実の冷蔵庫の中身と食べる人の顔を思い浮かべて、仕事を組み立てられるようでありたい。

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