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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2020年3月の記事一覧

綺想の表象学―エンブレムへの招待/伊藤博明

「詩は絵のごとく」。 ヨーロッパでは古くから文芸と絵画の類似性や等価性を伝える理論があるという。 確かに、いま読んでいる15世紀末(1499年)のイタリアで出版されたフランチェスコ・コロンナの『ヒュプネロートマキア・ポリフィリ(ポリフィルス狂恋夢)』を読んでいても、その描写は絵のように目に見える世界を描きだそうとしている表象が多い。 興味深いのは、目に見える世界を描くといっても、正確に描き出そうとされるのは、建築や彫刻やその他装飾の見事な出来栄え、あるいは庭園の植物や人

地球に降り立つ/ブルーノ・ラトゥール

百科全書的な知が必要になってきているということだろうか。 「アクターのリストはどんどん長くなる」。 アクターネットワーク理論を提唱する社会学者のブルーノ・ラトゥールは最新の著作『地球に降り立つ』でそう書いている。 明らかにテリトリーの奪い合いが起こっている利用可能な土地や資源が限定された地球のうえ、お互いに利害的にはぶつかり合い、侵犯し合うこともあるほかのアクターたちといっしょに「それぞれが自分の居住場所を見つけていかねばならない」僕たちは、自分のテリトリーを確保するため

ルネサンス庭園の精神史/桑木野幸司

言葉やイメージとして頭のなかにある観念やそれを用いて展開される思考と、現実そのものにはギャップがある。 人間に見えているもの、認識できているものなどは現実のほんの一部でしかないし、その認識できている一部ですら、観念や思考の対象となるのはさらにその一部でしかないので、現実の多くは人間の思考からは捨象されている。 だから、ギャップが生じるのは当たり前である。 人間の認識的限界から勝手に生じているギャップもあれば、人が意図的に捨象することで生みだしているギャップもある。それらが混