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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2019年7月の記事一覧

三体/劉慈欣

『三体』は中国の作家、劉慈欣(リウ・ツーシン)が2006年に連載し、2008年に単行本化されたSF小説。 2014年に英訳され、2015年に世界最大のSF賞といわれるヒューゴ賞長編部門を受賞。そして、今月いよいよ日本語訳が出版されたばかりの1冊で、なんとなく直感的に興味を惹かれてさっそく読んでみた。 400ページを超える作品だが、面白いので通常の読書ペースでも無理なく4日ほどで読み終えられた。 『三体』は3部作の1冊目にあたるらしく、すでに中国では3部作は完結している。 3

流れといのち 万物の進化を支配するコンストラクタル法則/エイドリアン・ベジャン

とてつもなく示唆に富んだ本だ。 これを読まずして何を読む? そう言ってよい一冊だと思う。 進化とは、単なる生物学的進化よりもはるかに幅の広い概念だ。それは物理の概念なのだ。 と著者で、ルーマニア出身のデューク大学の物理学教授であるエイドリアン・ベジャンは書いている。 この本でベジャンは物理学視点によって生物の進化と、河川などの無機物の変化、さらには人間によるテクノロジーの進歩の流れを、統合的に予測可能なものにしている。 本書は、生命とは何かという問いの根源を探求

アンリ・フォシヨンと未完の美術史:かたち・生命・歴史/阿部成樹

「敷衍」という語を「ふえん」と読むことにこの歳になってはじめて知った。 「ふえん」という言葉は知っていたし、「敷衍」という文字も見たことはあるにもかかわらず、だ。 フォシヨンの言うところを敷衍すれば、知的探求を導くのは小心な受動性よりも、大胆な積極性であるということになろう。 「敷衍」が「ふえん」であるのを知るきっかけは、阿部成樹著の『アンリ・フォシヨンと未完の美術史:かたち・生命・歴史』にある、この文中に「敷衍」が登場していたからだ。 上のテキストを入力するために