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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2019年4月の記事一覧

エジプト人モーセ/ヤン・アスマン

自然と文化。 このnote上でも紹介してきたように、これまで二項対立的に扱ってきた両者を、最近の哲学の流れでは区別できないものとして扱われるようになっている。 境のない状態をどう捉えるかは、いろんな考えがあり、『ポストヒューマン 新しい人文学に向けて』(書評)のロージ・ブライドッティは、自然-文化連続体という概念で唯物論的な捉え方をするし、このスタンスは『社会の新たな哲学: 集合体、潜在性、創発』(書評)のマヌエル・デランダの考えにも近い。 また、科学人類学を提唱するブルー

エコラリアス 言語の忘却について/ダニエル・ヘラー=ローゼン

言葉について考えることは、僕ら人間について考えることになる。 だから、言葉について書かれた本を読むのは面白いのだけど、このダニエル・ヘラー=ローゼンの『エコラリアス 言語の忘却について』はその中でも特に印象の強い一冊だった。 著者のヘラー=ローゼンは、母語の英語に加え、イタリア語とフランス語を母語並みにあやつり、西洋の古典語(ヘブライ語、古代ギリシャ語、ラテン語)を習得し、さらにはドイツ語、スペイン語、ロシア語、アラビア語にいたる10の言葉に通じているポリグロットだと紹介さ

ポストヒューマン/ロージ・ブライドッティ

"わたしたちは実際にポストヒューマンになっている。あるいはわたしたちはポストヒューマンでしかない。" しばらく前から明確に、いまの時代にあったことをしたいし、いまの時代が必要とすることをするべきだと思うようになっている。そんななか、このロージ・ブライドッティの『ポストヒューマン 新しい人文学に向けて』は、いまの時代に何を考え、何をなすべきかを問うための1つの方向性を提示してくれる1冊だった。 「人間」という時代遅れの枠組みいまや「人間」というあり方がゆらいでいる。 技術