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ビブリオテーク

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読んだ本について紹介。紹介するのは、他の人があまり読んでいない本ばかりかと。
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2019年3月の記事一覧

ローマ百景Ⅱ/マリオ・プラーツ

最近、オードリー・ヘップバーン主演の『ローマの休日』をはじめて、ちゃんと観た。もちろん、このマリオ・プラーツの『ローマ百景』を前回紹介したⅠに続いて、このⅡを読んでいたからだ。 1967年に刊行されたⅠに続く『ローマ百景Ⅱ』は、1957年に書かれた「ローマの至宝の芸術」から、1976年に書かれた「ヴィッラとカステッロ」までの『イル・ジョルナーレ・ヌォーヴォ』紙などに掲載された書評を集めて1977年に刊行されたものだ。ようは書評を集めた本の書評を、僕はここでしようとしているこ

夜の讃歌・サイスの弟子たち他一篇/ノヴァーリス

モノたちの側から見て、僕たち人間はどう見えるのだろう? 「ああ、人間に」と物たちは言った、「自然の内なる音楽を理解し、外なる調和を感じとるための感官がそなわっていればいいのに!」 まあ、こう指摘するからには、「物たち」の側にはその両方ともが備わっているのだろう。だからこそ、彼らは環境において他の無機物、有機物と連携して生態系の調和を作れるのだろう。 人間とは違って……。 スティーヴン・シャヴィロの『モノたちの宇宙』という本を紹介したのは昨年12月のことだ。 その本

ローマ百景Ⅰ/マリオ・プラーツ

まわりに存在しているものがあたかも生きているかのように感じられるとき、人はそれらの対象をいつもとまったく別物に思うのだろう。それは時には畏怖の対象になり、また時には悲哀の対象になるのではないだろうか。 「動いている」と、昔日の人々は我を忘れて叫んだのであり、彼らが「動いている」と言ったとき、彼らは第七天に触れたように感じたのである。 これは、マリオ・プラーツが『ローマ百景Ⅰ 建築と美術と文学と』の中で描く、まだ電灯などのない時代に夜の美術館で松明の炎にゆらぐ彫刻作品を