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言葉とイメージの狭間で

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ヨーロッパ文化史に関する話題を中心的に扱いながら、人間がいかに考え、行動するのか?を、言葉とイメージという2大思考ツールの狭間で考える日々の思考実験場
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2021年6月の記事一覧

縁を切るお金と縁をつくるお金

「金の切れ目が縁の切れ目」という言葉がある。 お金の関係が切れれば、それまでの関係性がなくなってしまうことを指す言葉だが、いまやビジネスの世界ではそういう関係のほうがある意味デフォルトといえるだろう。契約があるやなしやで、関係性の有無が決まってしまう。 そこに人間的なつながりがないのを嘆きたくなるような気持ちにもなるが、しかし、本来お金がつなげる関係性とはそういうものなのかもしれない。 お金が絡まなければ、関係性など生じなかったところに、関係性をつくれるというのがお金とい

臙脂色のサステナビリティ

臙脂と書いて、エンジと読む。えんじ色のエンジ。 この漢字から「臙」というなんらかの動植物の脂(あぶら)かなと思って調べてみると、染料の元になるのが、インドなどが原産のエンジムシなのだそう。 もっと調べてみると、古代中国で辰砂、日本では丹(に)と呼ばれる赤色硫化水銀から作られる顔料の朱(しゅ)に山羊の脂を加えて化粧紅をつくられていたことで、「脂」という字が化粧紅を指していたのだそうだ。 そして、この紅の産地として、燕の国が有名だったこともあり、燕脂というかたちでブランド化

事実も、地球も、個室も、日記も、救貧法も、17世紀につくられて

気候変動や経済格差といった問題を根本的に考えようとするとき、17世紀にヨーロッパで起こった変化に目を向けないわけにはいかない。そこにこそ、この危機をもたらしている原因に対し対策を行うためのヒントがあるはずだから。 17世紀にどんな変化が起こり、それが現代の環境・社会の問題にどんな影響を与えているのか。ひさしぶりに超絶長くなるが(12000文字超)、書き進めてみよう。 まずは手始めに、アメリカのモダニズム文学の研究者ヒュー・ケナーはその小さな大著『ストイックなコメディアンた