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言葉とイメージの狭間で

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ヨーロッパ文化史に関する話題を中心的に扱いながら、人間がいかに考え、行動するのか?を、言葉とイメージという2大思考ツールの狭間で考える日々の思考実験場
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2020年1月の記事一覧

ヘルメスとアレッキーノと道化的汎用AIと

僕の道化熱はじつは終わっていない。 ウィリアム・ウィルフォードの『道化と笏杖』と読んだ後、何冊かはさんで、いまは山口昌男さんの『道化の民俗学』を読んでいる。 16世紀のイタリアを中心に流行した仮面即興劇コンメディア・デッラルテのなかの道化アルレッキーノを論じるところからはじまるこの本は、2章に入るとアルレッキーノの起源の考察をするのだが、そのなかでギリシア神話のトリックスター的な神ヘルメスとアルレッキーノの重なりを論じる過程でこんなふうにヘルメスという神格の特徴がリスト化さ

ハマスホイとデンマーク絵画@東京都美術館

油彩画という視覚表現の可能性が、こんなにもあるんだというのは驚きだった。覗きこむとそのまま目が離せなくなる圧巻のヴィジュアルに至福の時間を過ごさせてもらった。 東京都美術館で今週はじまったばかりの「ハマスホイとデンマーク絵画」展。 展覧会の中心となるヴィルヘルム・ハマスホイは19世紀末から20世紀初頭にかけてのデンマークの画家。今回まで名前も知らなかった画家だが、なんとなく気になって観に行った。それでも本当に来て良かったとつくづく思えるほど、素晴らしかった。観ながら興奮する

終わりを想像する

いま読んでいるジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』の下巻に、中世のスコラ学者トマス・アクィナスの次のような言葉が紹介されている。 聖トマス・アクィナスは、こう述べている。「賢いと呼べるのは、宇宙の終わりに思いをめぐらせる者だけである。宇宙の終わりは、宇宙の始まりでもある」 終わりを想像できる人は確かに賢いと思う。 そういう人は、変化に敏感になれるし、変化を拒まず素直に受け止めて自分も変化しようと考えることができる人だからだ。 終わりは始まりであり、それゆえ変化でも

UXとユクスキュル

UXとユクスキュルは似ている。 いや、語音だけでなくて、その基本となる考え方が。 19世紀後半から20世紀前半を生きたドイツの生物学者のヤーコプ・フォン・ユクスキュルは、動物それぞれに異なる世界の見え方、認識のされ方があるということを示したことで知られる。 環世界と呼ばれる、その有名な考え方は、UXが前提としている点と重なっている。人それぞれで世界の見えかた、生きている環境の世界認識が異なるがゆえに、その違いを理解した上でデザインを行わないと、デザインする側の「良い」とデザ