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コンウェイの法則とデザイン組織作りへの示唆

システムの設計は、組織構造を反映させたものになる。コンウェイの法則として知られ、エンジニアリング組織作りの文脈で、よく引用されている言葉だ。この考え方は、デザイン組織作りにも示唆を与えてくれる。

例えば、社内にデザイナーの人数が増えてくる中で、どのような組織構造にすべきかを考えるタイミングがやってくる。事業部に紐づけるのか、あるいは職能に紐づけるのか。当然、デザイナーだけを抜き出して考えるものではないが、画一的な枠組みに押し込むだけでは、落とし穴にはまる危険性がある。

コンウェイの法則から示唆を得て、取っ掛かりとなる考え方の1つとして、各事業の独立性が重要なパラメーターになるのではないだろうか。

例えば、社内で複数の事業を抱えていたとして、それらは全く性質の異なるサービスだったとする。この場合、各事業はその内部で完結して施策を進められるため、デザイン組織も事業部制にし、素早い意思決定に繋げられるだろう。

しかし、各事業が同一のセグメントを対象にしていたり、シナジーを発揮する構造になっていたり、ブランディングとして一貫性を持たせている場合、全体としての一貫性が失われやすくなる。

例えば、特定の業界に絞って複数のサービスを展開しており、そのエコシステムの中にユーザーを囲い込みたい場合。本来、そのエコシステムに登録しておけば、シームレスに様々なサービスを快適に利用できていたはずが、蓋を開けてみると、各サービスの使い勝手がバラバラであれば、ユーザーの不満に繋がることは想像に難くない。

あるいは、1つのサービスに絞って提供している場合でも、組織構造の設計によっては、下記のようなアンチパターンに陥りやすい。

ユーザーからは、1つのサービスとして見えているのに、特定の機能によって組織が分割され、それらが断絶していれば、コンウェイの法則に従って、一貫性を欠いた体験が生み出されるだろう。

よって、品質に対する基準と担保の方法をどう設計するかが鍵になりそうだ。ここでも、トップダウン型と、ボトムアップ型のアプローチに分けられる。

前者の場合、統制機関を設けると共に、デザイン部門のトップを据える。仮に著しくユーザー体験を毀損したり、一貫性を欠くようなアプローチに対しては、開発をストップする権限を付与することが考えられる。その場合、品質の担保はしやすくなるが、構造的にハレーションが起こりやすくなるのと、そのトップがボトルネックになりやすくなる。もし事業部制を採用していた場合、本来のメリットであったスピード感も失われてしまうかもしれない。

後者の場合、職能制か、マトリクス組織(仕事は事業部だが、マネジメントラインは職能)の形態で、主に対話と合意形成を用いたアプローチとなる。事例の共有や、相談会、デザインレビューの実施等が当てはまるだろう。この場合、メンバーの納得感は醸成されやすいが、合意形成に時間はかかるため、それをどう捉えるかの価値観次第である。

色々と書き連ねたが、それでも昨今は良い時代で、例えばCocodaには、デザイン組織作りの様々な事例がまとめられている。

もちろん、表面的なTipsだけを取り入れても、必ずしも上手くいくとは限らないことは、今回のコンウェイの法則を知ればこそ、言わずもがなではある。しかし、具体的な事例から得られる示唆は多いため、ざっと読んでみるとインスピレーションが湧き上がってくるかもしれない。

また、コンウェイの法則と、組織設計への転用については、下記の本が参考になった。


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