TamotsuIwaki

岩城保 舞台照明家(フリーランス) twitter : @TamotsuIwaki

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  • 舞台照明

    舞台照明に関するエッセイ

最近の記事

ビデオ版『新・舞台照明講座』のご紹介

2022年3月に書籍『新・舞台照明講座』を上梓し、このnoteでもご紹介をいたしましたが、 このたび、その動画バージョンをスタートいたしました。今回はそのご紹介です。 このビデオ版『新・舞台照明講座』では、書籍『新・舞台照明講座』の内容を小さい単元に分割し、約20分ずつの講義形式の動画として配信(有料)を行っています。 動画の内容は、元の書籍の内容にとどまらず、具体的な実例や図解・写真などを豊富に加えた、詳しい内容となっています。 また構成も、元の書籍の目次順序にはこだ

    • 『新・舞台照明講座』発刊

      このたび、私の初めての著書 『新・舞台照明講座 光についての理解と考察』 をレクラム社から上梓いたしました。 この本は、題名から明らかなように、舞台照明を学ぶための新しい教科書です。舞台照明の教科書は、これまでにもいくつか発刊されていますが、この『新・舞台照明講座』は、今までの教科書とは少し違う考え方に基づいて作られています。これまでの舞台照明の教科書は、そのどれも、舞台照明が一つの“職業”であるということを前提にしています。すなわち、照明という仕事をする上で必要となる知識

      • これは「戦争」だ

        Twitterで、こういうツイートをした。 字数制限があったのでだいぶ省略しているが、これで言いたかったことは、 ・選挙に関する報道が少ない理由は、報道各社が、国の未来よりも「自分たちの生活」を大事に考えざるを得ないからだと思う。 ・報道各社の人達も、収入が危うくなったら食っていけなくなる。 ・報道各社の収入の中で、広告収入は大きなウェイトを占める。 ・主な大手メディアの広告を仕切っている(まとめて買い上げ、広告主に分配する)のは、広告代理店であり、知ってる人は知ってるよう

        • 「アイホールの件」について

          松本謙一郎さん呼びかけの「アイホール作戦会議」に出席してきました。 出席して思ったのは: 僕自身を含め、アイホールに「愛着」を持っている人は全国に多く、だから存続を望む声も多く耳にするわけですが、実際この話が「どういう議論」なのかを、正確に把握している人は実は少ないのではないか、ということでした。 上記の会議に出席し、「実はどういう話なのか」ということについて、僕が理解した範囲で、以下、解説を試みたいと思います。 多くの人は毎日新聞でそれを知ったまず、この件について知っ

        ビデオ版『新・舞台照明講座』のご紹介

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        • 舞台照明
          13本

        記事

          舞台照明、私の流儀

          このところ、照明家が舞台照明をやる動機について考えている。 なぜ私たち照明家は、舞台に照明をつけたいと思うのか、について。 その理由はいくつかある。まあ大きく分けて「他者による理由」と「自身による理由」があって、他者によるというのは、たとえば照明を頼まれたとか、報酬がもらえるとか、そういう(舞台から見ると)外部的な理由。それらはここでは考えない。ここで考えるのは「自身による理由」のほうだ。それがいくつかある。とりあえず3つ思いついたので書いてみる。 1.自分の好きな明かり

          舞台照明、私の流儀

          新型コロナの不明点

          「新型コロナウイルス感染症」で、なかなかわからないことがあります。それは「症状」です。このウイルスに感染すると、どういう「症状」が出るのか。どなたかご存じですか? 最初は色々と言われていました。発症期間が長く、肺炎になり、死に至ることもある、とか。でもそれが言われていたのって、3月か、4月の前半ぐらいまでです。その時期は「新型肺炎」という言葉も使われていました。しかし、今(8月)は「新型肺炎」という言葉はほとんど使われなくなりました。なぜですか? 肺炎にならないケースが多い

          新型コロナの不明点

          舞台照明の手法

          前回は、舞台照明の技術とは「実際の光」と「照明の数値的パラメータ」を自在に変換できる能力のことである、という内容でした。 前回の記事: そして、その能力を習得するには、様々な光を自分の目で見て経験を積むしかない、ということを説明しました。 前回の最後に「砂糖水」の例えで説明したように、数値的データと感覚で得られる感じ(クオリア)との関係を習得するには、自分自身の身体を使うしかない、ということは間違いないことなのですが、じゃあ砂糖水の甘さの感じ(クオリア)を言葉で全く表現

          舞台照明の手法

          舞台照明の技術

          前回は、僕の照明の考え方について、「舞台上で起きていることをクリアに見せる」という話を中心に説明をしました。 前回の記事: 今回は、照明を使って「舞台で起きていることをクリアに見せる」ために具体的にはどうすれば良いかについて考えます。 「舞台で起きていることをクリアに見せる」ための基本的なポイントは、見せたいものには光を照らし、見せたくないもの(ノイズ)には光が行かないようにする、という原則だと僕は考えます。しかしこの単純な原則を行うだけでも、決して簡単とは言えず、それ

          舞台照明の技術

          僕の舞台照明

          前回、「舞台照明は何をすれば良いのか」ということについて考察をし、ちまたでよく言われる「舞台照明が(特に演劇で)やるべきことは、シーンの《場所》《季節》《天候》《時刻》といった設定の説明をすること」という説についての解説などをしました。 前回の記事: この文章の中で、僕自身は照明で「設定の説明」をすることに今はまったく喜びを感じないし、仮に自分が観客だったら共感もしないだろう、ということを述べました。そして「設定の説明」でないとしたら僕は照明で何をしているか、それを次回ご

          僕の舞台照明

          舞台照明は何をすれば良いのか

          舞台作品において、照明はいったい何をすれば良いのでしょうか。この疑問に対して、特に演劇、とりわけ高校演劇やアマチュア演劇のような場で広く信じられている説は「舞台照明はそのシーンの《場所》や《季節》や《天候》や《時刻》を光で説明する」というものです。僕はこの説は必ずしも正しくないと考えていますが、なぜ、この説がこれほど広く信じられているのか、という点には興味があります。 まず、最初の疑問文「舞台作品において、照明は何をすれば良いか」についてですが、すべての舞台作品に共通する「

          舞台照明は何をすれば良いのか

          エピソード2:照明家の主観の成立

          前回のエピソード1の最後に、 ・照明家は最初は他人の照明の知識だけを持った状態からスタートする ・他人の照明のまねを繰り返す中で、他人から得たはずの知識や技法が、次第に自分のものとして獲得されていく ということを説明しました。 前回のエピソード: 今回は「まね(=模倣)を重ねて自分のものにする」とはどういう事か、考えてみたいと思います。 その前にまず大前提の確認ですが、照明デザインは「身体技術」の一つです。照明デザインを、身体と無関係なものと思い込んでしまっている人

          エピソード2:照明家の主観の成立

          エピソード1:照明家の主観の形成

          これまでの3回(ないし4回)の話の流れをあらためて見直してみると、最初は照明についての世間話的な話題から始まって、だんだんと照明家の考え方そのものに踏み込んで行き、そして回を重ねるごとにトピックがより根元のほうに、だんだんと下がってきていることにお気づきかもしれません。ここまでのタイトルを見てもそれは明らかです。 第0回「舞台照明の《やりすぎ》問題」 第1回「舞台照明の評価基準」 第2回「照明デザインが目指すもの」 第3回「主観から始まる照明」 第4回「照明家の主観の形成」

          エピソード1:照明家の主観の形成

          主観から始まる照明

          前回は、「主観的」「客観的」という言葉について分析するところから始まって、僕が照明デザインで目指しているのは「観客の共感を呼び起こすこと」だという結論まで行きました。ですが、説明が不十分なまま、話を打ち切る感じで終えました。 前回の記事そこで今回は、前回の最後に出てきた「共感を呼び起こす」とはどういうことなのかについて、少し掘り下げて考えてみたいと思います。 前回、「共感」とは「共有される主観」だという説明をしました。つまり、「共感」が起こる時、その元には誰かしらの主観が

          主観から始まる照明

          照明デザインが目指すもの

          前回は「舞台照明の評価基準」と題して、一般的に「良い照明」とされるのは、いったいどんな照明なんだろう、ということについて考えました。 前回の記事この前回の記事の中で、「主観的」「客観的」という言葉を何度も使いました。「主観的」な言葉として「好き/嫌い」などを、そして「客観的」な言葉として「良い/悪い」などを例にあげました。そうした具体的な言葉の例によって「主観的」と「客観的」をおおまかに分けてはみたものの、「主観的」「客観的」というこれら二つの言葉が、そもそもどういう意味な

          照明デザインが目指すもの

          舞台照明の評価基準

          少し前のことになりますが、Twitterで「舞台照明の『やりすぎ』問題」というのが話題になり、これについて、まとめ的な記事を書きました。 前の記事これを書いている中で、新しい疑問が立ち上がってきました。それは、 ・照明が「良い」とか「悪い」とかを、私達はどういう基準で評価しているのか ・そもそも照明に「良い」「悪い」は存在するのか といった疑問です。本稿ではこの、舞台照明の評価基準という問題を考えてみたいと思います。 「良い」照明とは何かこれを読んでいる多くの方の関心

          舞台照明の評価基準

          舞台照明と演色性

           はじめに「演色性」という言葉を解説しておきましょう。  演色性とは、いわば「色彩面に着目した時の光の良悪」を示す指標のことです。例えば、屋外の光で見た時と室内の光で見た時に、物の色が違って見えた、といった経験はありませんか? 物の色の見え方は、その物にあたっている「光」がどんな光であるかによって影響を受けます。  あてられた光によって、物の色が「元の色」からどれぐらいズレて見えるかの度合いを、その光の「演色性」と言います。元の色から大きくズレて見えてしまう光を「演色性が悪い

          舞台照明と演色性