葛根(カッコン)

「萩の花,尾花葛花,なでしこの花,女郎花,また藤袴,あさがほの花」(ヤマハギ,ススキ,クズ,カワラナデシコ,オミナエシ,フジバカマ,キキョウ)これは,山上憶良によって,万葉集に詠まれている秋の七草である.春の七草が食用にされる野草や野菜で有るのに対して,秋の七草は,秋の野の花を代表する野草木が選ばれているが,これらがすべて薬用植物である。
和名の「クズ」は,昔,大和(奈良県)の国栖(くず)地方の人が,この植物の根から精製した澱粉を売り歩いていたことから名付けられたと言われ,その後漢名の葛が当てられるようになったものと考えられる。

原植物

  1. 原産地又は分布

    1. 東アジアの温帯に広く分布する.

  2. 植物形態

    1. 蔓性の植物で,茎は,基部が木質で著しく伸長し,葡匐又は他に巻き付いてよじ登り,長さ10mにも達する.葉は互生し,長柄のある3出羽状複葉で,頂小葉は菱状円形,急鋭尖頭で,ときに3裂し,長さ10~15cm,側小葉はしばしば2裂する.7~9月頃,紫紅色の花を多数,総状花序に密生する.

生薬

  1. 基原

    1. クズ Pueraria lobata Ohwi (マメ科 Leguminosae) の周皮を除いた根を乾燥したもの.

  2. 産地

    1. 中国 (四川省,湖北省,安徽省,湖南省),日本

  3. 生薬の性状

    1. 葛根(角)四川省産

  4. 成分

    1. イソフラボン配糖体:プエラリン(puerarin),ダイズイン(daidzin)
      ダイズインのアグリコンである,ダイゼイン(daidzein).デンプン等

  5. 日局18規格値

    1. プエラリン2.0 %以上

    2. 純度試験(1) 重金属 10ppm以下(2) ヒ素 5ppm以下

    3. 乾燥減量13.0%以下(6時間)

    4. 灰分6.0%以下

  1. 適用

    1. かぜ薬,解熱鎮痛消炎薬とみなされる処方に配合されている.

  2. 配合される主な漢方処方

    1. 葛根湯,葛根湯加川芎辛夷,桂枝加葛根湯,升麻葛根湯,参蘇飲,独活葛根湯 等

板葛根と粉葛根について
板葛根
Pueraria lobata の根の周皮を除いて板状に調製したもの(晒しの有無は不明).現在では流通していない.

粉葛根
Pueraria lobata を基原としない.日局15解説書では Pueraria thomsonii (甘葛藤の根に基づく)としている.流通していない.


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