散歩の効用

日曜日はバンドの練習。30分ほどの休憩の時間に外に出る。

スタジオの裏のお寺へ向かう。なぜか、いつも空は晴れている。

この時期は、どの植物も空へ空へ向かって伸びている。むせかえるような草木の匂い。木漏れ陽が石畳に透ける。

練習着のまま、私はあてもなく歩いて大きな樹や猫やたぬきの置物をながめている。

この瞬間にまるで自分の生まれ出た場所に戻ったかのような錯覚を覚える。そのくらい、安らいでいる。

ひとけのない境内。小さな虫の羽音だけが頭の中に響く。

胎内、千尋の海、宇宙そのもの。

あらゆるものが生命を生き、神を宿す。そんなこと皆知っている。

毎週降ってくる一瞬でそれを味わえることを、とても嬉しく思った。