初めてのコラボレーションのお話①

【コラム】

 

 猫野サラさんの作品『胸によせる波』のなかで、ぼくの書いた詩を二編使っていただいたのですが、その後のサラさんの制作裏話にて誉め殺しのサンドバッグ状態(笑)となりましたので、少し弁明させていただきますね。

 noteでサラさんを知ったのはわりと最近で、サラさんの証言と同じで、ぼくも縦に長い絵本さんを介してサラさんの作品に出会ったのですね。
 この縦に長い絵本さん=マキタカシさん(お名前は公表されています)の作品をぼくはとても好きで、そしてマキさんの感受性=目利きをとても信頼していまして、当然、サラさんのnoteへも行ってその癒される〈猫まんが〉の世界を楽しんでいたのです。ただ、この時点ではつまみ読み程度で『あさひとゆうひ』という作品の素晴らしさの本質を理解したのはもう少し後になります(この話は後述します)。

 そんなある日、タイムラインにいつものサラさんの画風とは異なるタッチの作品が流れてきたのです。それは『満ち汐』というタイトルでカメラマンと詩人の話でした。
 まず、表紙のイラストを見てぐぐっと惹かれました。絵が好みだったのです。そして内容を読むとどうやらシリーズの2話目で、構成の主たる部分は伊藤静というセンシティブな少年が、いかにして詩人・星野しずかになったかという過去を振り返るものでした。そこで描かれていたものに強烈に惹かれたのです。
 それは、ジェンダーで悩む少年の話ではあるのですが、テーマがどんなことでも当てはまるヒトとしての普遍的な〈孤独と克服〉の物語で、極めて高純度の〈こころ〉がそこに見えたのです。
 ぼくはまんがの巧みさを語る言葉を持たないのですが、たぶん、表情(顔自体のそれと構図やコマ割全体から醸すそれ)の描きかたが絶妙なんだと思います。伊藤静というキャラ設定の作り込みの完成度、そしてこんなにもセンシティブなこころの揺らぎを自由自在に操れるこの人、この頭に猫を乗せてお猪口片手にほろ酔いのアイコンの人、すごい才能の人だ!と気づきました。そして伊藤静の孤独や痛みに共感して「書きたい」と思ったのです。何を?って、伊藤静の詩をです。この時点ではまだサラさんからのオファーはありません。

 その後、コメントを残したのをきっかけにサラさんからメールをいただき、驚きました。「静の詩を書いてくれ」と。〈赤い糸〉とサラさんが表現していますが、確かにこれは必然でした。マキタカシさんのフィルターがサラさんとぼくを結びつけたのです(そのマキさんとの出会いの必然も時を超えたすごい話なのですが、それはまたいつかの機会に)。ただ、この作品に自分の詩が入ることにサラさんの(このシリーズの)ファンのみなさんがアレルギーを起こす可能性が怖かった。少しだけ躊躇して、それでもご一緒させていただこうと思ったのが、何よりサラさんに静の詩としてtamitoの詩を強く求めていただいたからです。

 そして、ぼくからもお願いをさせていただきました。サラさんからは「ギャラをお支払いします」とのオファーだったのですが、ぼくはそもそもプロの詩人ではないので端からいただくつもりはなかったのですが、ギャラとかそういうことではなくお互いに相乗りしませんかと。
 実は、以前から詩集マガジンを作りたいと思っていたのですが表紙の絵柄をどうしようかと悩んでいたのです。そこで、図々しくもサラさんにイラストを書いてくださいと。優しいサラさんはふたつ返事で快諾してくれまして、それで、コラボレーションのかたちが成立したのです。

 そして、実際の制作に入るのですが、ここからがまだ長いので、続きは次回としますね。

 

tamito

#詩 #コラム #コラボ

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