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読書会を愛好する大学生です。クィア・フェミニスト。哲学・思想・批評に関心を寄せています…

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読書会を愛好する大学生です。クィア・フェミニスト。哲学・思想・批評に関心を寄せています。連絡先(katzenpfoten10@gmail.com)

最近の記事

家族制度の再構築

はじめに 家族とは複数人の構成員で成ることから共同体の一つの形態だと考えられるが、この特殊な共同体をいかにして定義することができようか。はじめに、この共同体を共同体たらしめるもの、換言すれば、構成員を結びつけるものとはいかなるものなのかを考察する。 1.バタイユと恋人たちの共同体 ジョルジュ・バタイユは共同体を結びつける「愛」について構想した。恋人たちの世界を「真」の世界だと述べるバタイユは、恋愛の本質とは手段や目的関連に従属しない「遭遇」の運命性であると語る。バタイユ

    • 音、空間のカーニバル——泉鏡花原作 鈴木清順監督 田中陽造脚本『陽炎座』

      序論 『陽炎座』は、泉鏡花によって大正二年に『狸囃子』の題名で発表され、その後、作品集『弥生帖』に所収される際に現在の題名に改められた。物語は、美しい十九の娘、お稲が心に決めた縁談を阻まれ、不本意な結婚を強いられたことにより精神疾患に陥り、衰弱死したことを発端に始まる。狸囃子をきっかけに、お稲の旦那、彼の後妻である品子、そして彼らに巻き込まれる形で松崎という男が芝居小屋「陽炎座」に導かれ、現実と夢の狭間で死んだはずのお稲に対峙する。本稿では、「陽炎」のようにゆらめく物語が、泉

      • インフルエンサーと大衆の関係

        序論  近年、「インフルエンサー」と呼ばれる人々が世間の注目を集めている。Wikipediaの定義によれば、「インフルエンサー(英: influencer)とは、世間に与える影響力が大きい行動を行う人物のこと。その様な人物の発信する情報を企業が活用して宣伝することをインフルエンサー・マーケティング(SNSマーケティング)と呼んでいる 」[1]とされている。ブログやYouTube、Instagramをはじめとする数々のメディア(媒体)で活動を行う彼らは、どのようにして人々の注目

        • 自己実践としての語りなおし―『ランスへの帰郷』を読んで

           『ランスへの帰郷』はパリの知識人となったディディエ・エリボンによる自伝である。ランスは、フランス北東部の田舎町であり、エリボンの生まれの故郷だ。労働者階級出身の知識人であり、ゲイというセクシュアリティを持つ筆者は、社会的場面において度々自覚する自身の出自に対しての恥と、本書を通して向き合う。この自己対峙をエリボンは本題の通りに「帰郷」と名付けるのだが、「帰郷」には地理的な回帰と自己への観念的な回帰の二重の意味が込められている。父親の死を契機に、長らく離れていた故郷ランスへ帰

        家族制度の再構築

        • 音、空間のカーニバル——泉鏡花原作 鈴木清順監督 田中陽造脚本『陽炎座』

        • インフルエンサーと大衆の関係

        • 自己実践としての語りなおし―『ランスへの帰郷』を読んで

          読書について

          私は日頃の読書で「もどかしさ」と「興奮」を感じている。文章、とりわけ学術的な文章を読むとは、長谷正人が「分からないという経験―ヴァルター・ベンヤミン『複製技術時代の芸術作品』を読む*」で述べる「分からないという経験」と「何かがふっと分かるという経験」の連続であるように思う。そして、その繰り返しに終わりは見えない。また、何人かで同じ文章を読むような読書会では、反対に「何かがふっと分からなくなるという経験」を頻繁に味わう。ひとりで読んでいたときに、当然のように読まれた気心の知れた

          読書について

          書くこと

          変な話だが、私にとって「書く」は「泣く」という行為の感覚に近い。言葉が溢れるか、涙が零れるか、そこに大差はないように感じる。 だから、溢れた言葉の連なりを他人に読まれるのは、頬を伝った涙の痕跡を見られるようで、どことなく気恥ずかしい。 ここ最近は何かを文章で表現したいという欲求があるのだが、それで上手くいっていない。他人に読まれることを前提として文章を書くのが苦手なようで、そうして書いた文章は、無理やりお化粧直しをされたみたいにのっぺりとしてぎこちなく、歴史を感じさせない。

          書くこと

          読書会を開きます!

          【追記】定員満了のため『監獄の誕生』及び『全体主義の起原』読書会の参加者募集を終了させていただきます。オンラインでの読書会になりますと、少人数でなければ会の進行が難しくなりますので、ご理解いただけると幸いです。再募集は今後の状況によっては検討いたします。 以前からTwitterで告知していた読書会ですが、ミシェル・フーコー『監獄の誕生』読書会とハンナ・アーレント『全体主義の起原』の二つに分けて、それぞれ月1回を目安に開催したいと思います!約1年ほどで一冊を通読する予定です。

          読書会を開きます!