音、空間のカーニバル——泉鏡花原作 鈴木清順監督 田中陽造脚本『陽炎座』
序論
『陽炎座』は、泉鏡花によって大正二年に『狸囃子』の題名で発表され、その後、作品集『弥生帖』に所収される際に現在の題名に改められた。物語は、美しい十九の娘、お稲が心に決めた縁談を阻まれ、不本意な結婚を強いられたことにより精神疾患に陥り、衰弱死したことを発端に始まる。狸囃子をきっかけに、お稲の旦那、彼の後妻である品子、そして彼らに巻き込まれる形で松崎という男が芝居小屋「陽炎座」に導かれ、現実と夢の狭間で死んだはずのお稲に対峙する。本稿では、「陽炎」のようにゆらめく物語が、泉