
直島で作品つくって展示してます。
癒しのコテージOHANAに、辻孝文と有田大貴によるインスタレーションを制作しました。あわせて、公開制作と作品展示も企画しました。
癒しのコテージOHANAの庭のスペースに設置したので
企画名は「OHANAの庭」です。
癒しのコテージOHANAは、私ヤマモトがかつて直島で田んぼの担当をしていたときからお世話になっている建築工房おおやまの大山貴史さんが運営する宿泊施設です。ちょうどオープン10周年を迎えました。
ご時世的にほとんど告知できなかったのですが、島の口コミネットワークで徐々に噂を広める方式でやっております。
辻さんがパンダと犬のインスタレーションを、有田さんは船へのペインティングをしたものです。どちらも、もとは放置されていたものでした。
「パンダ」のかつての姿
「船」のかつての姿
2人とも本業(?)は絵画なので、当初はコテージ室内への絵画展示を検討していました。それが現地を見ていくなかで、放置されていたパンダや船を見つけてテンションがあがり、これを作品にします!と相成った次第です。
辻さんのパンダと犬はもとは遊具でした。それが入れ替えにともなって放置されていたわけですが、経年劣化による穴を塞ぎ、傷を磨き、丁寧に修繕していく作業を行います。そして、彼が最近の絵画で取り組む「花」のパターンを成形し、貼り付けました。
直して磨いて塗って貼るという工程をへて、建築工房おおやまさんお手製の台座に乗っかることで、捨てられた遊具に再び光が当たりました。
辻さんと作品「3本のお花」
有田さんの船へのペインティングもまた、使われていなかった手漕ぎボートを作品にしたものです。ダイナミックに動きながらペイントを行う彼の作風を存分に生かす今作は、陸上に定置されているにもかかわらず、船に乗ってみるとバランスの関係で揺れるので、視線の新鮮さを感じます。この場所に流れる空気や波音をペインティングの色彩によって可視化しているようにも見えます。こちらの作品の台座も建築工房おおやまさんによるものです。
有田大貴と作品「舟遊び」
今回は2人ともこれまでとは違った新しい作品づくりへの挑戦となっています。そこで、普段制作している作品を個展形式で見て頂ける機会も設定しました。
辻さんは直島宮浦ギャラリーを会場に"Flowers"シリーズの絵画を大小合わせて18点ならべ、有田さんは建築工房おおやまの事務所スペースで作品展示を行います。
辻孝文 個展 "Flowers" (直島宮浦ギャラリー)展示風景
辻さんの展示作品は、昨年から今年にかけて各所で展示した作品を中心に、シリーズ作品のまとまった点数を一面に並べる機会となっています。そして、人を描くシリーズを収録したZINEも制作しました。
有田さんが展示している建築工房おおやま事務所は、最近リノベーションされたばかりで、木の香りが漂う明るい空間に生まれ変わりました。
ここで、金箔の欄間へのペインティングを展示しています。これは、建築工房おおやまさんが「きれいだからなにかに使えるかな」と保存していたもので、ぜひ作品に!と預かって生まれ変わらせたものです。有田さんの代名詞的なモチーフである折り鶴も貼り付けた組作品で、明るい木色の背景もよく引き立てているように見えます。あわせて、別の壁面には折り鶴の灰を使ったシックでミニマルな作品も展示しています。
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直島でプロジェクトを行うときに思うのは、島の人たちに馴染むかたちの作品づくりについてです。より具体的には、すごくミクロなスケールの視点を持つこととでもいいましょうか。
いわゆるサイトスペシフィックアート、すなわちその場所に置かれることに意味をもつ作品制作のひとつの課題は、焦点を当てる「サイト」あるいは「場所」の範域をめぐる、作者と鑑賞者と地元住民の認識の相違にあると思っています。
「地域アート」の文脈で「場所」が語られるとき、「サイトスペシフィック」や「ベネッセアートサイト直島」というふうに「サイト」が使われる。
— ヤマモト🎨TAMENTAI GALLERY (@equem_mm) October 1, 2020
"site"は日本語だと「用地」すなわち何かのために用いられる土地。人文主義地理学で語られる意味に満ちた"place"とは近いようでだいぶ違うはず。
直島は決して大きな島ではありませんが、その中にはいくつもの地区があり、それぞれに歴史や性質の違いがあります。
そんなことは、観光や仕事で通勤しているだけではあまり関係のないことです。しかし島の人との世間話をすると、ドコドコのダレソレがドウシタという話題は尽きません。そんななかで、外から来た有名な芸術家とやらが「あの山の稜線が美しい」と言ったとしても、なかなか「ハア」としかならないのです。
今回の素材となった遊具も、実は島の多くの人が「なんかあったね」と在りし日の姿を覚えていたりします。ボートにしても、船としてはなんの変哲もないものではありますが、島の暮らしには馴染み深いものです。欄間も、ドコのダレの家にあったものかは定かではありませんが、きっとみなさんにとってそう遠くない関係の家にあったものでしょう。
昨年公開した木村翔太くんの木彫「漣」も、船大工だったというかつての家主の屋号でみんな呼んでいますし、そうするとむかしの思い出話も出てくるわけです。
アートがなにかはよくわからん、とみなさんおっしゃいますが、このように身近に知っているものが、作品らしく見た目を変える過程を目にすると、いろんな感想を教えてくれるものです。散歩のついでに作品を見てもらえるというそのことが、見せる側としても本当に贅沢なことだと思うのでした。
ということで、時期的に難しいタイミングではありますが、ぜひ直島に遊びにおいでの際は覗いてみてください。個展は期間限定ですが、癒しのコテージOHANAのインスタレーションはパーマネントで設置されますし、日中は宿泊者以外も見たり触ったりしていただいてOKです。もちろん、お泊まりの際は是非どうぞ(3月まで予約うまっていますが)。
Information
展示・イベント情報は特設サイトにまとめてあります。
有田大貴(@taikiarita_art)と辻孝文(@ttaka27)のInstagramから制作風景などもご覧いただけます。
癒しのコテージOHANA「OHANAの庭」
有田大貴「舟遊び」と辻孝文「3本のお花」が公開中です。
辻孝文 個展 "Flowers"
期間:2月14日(日)- 2月21日(日)
時間:10:00 - 16:00頃
場所:直島宮浦ギャラリー
住所:〒761-3110 香川県香川郡直島町宮浦2420-2
アクセス:宮浦港から徒歩5分
有田大貴 個展 "Circle"
期間:2月14日(日)- 2月27日(土)(日・祝休 ※2月14日を除く)
時間:10:00 - 17:00頃(建築工房おおやまの営業時間に準ずる)
場所:建築工房おおやま事務所
住所:〒761-3110 香川県香川郡直島町積浦4777−23
アクセス:直島町営バス「天皇下」バス停すぐ
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