彼女は今どこで何をしているのか

久しぶりに髪を切った。
髪を切るタイミングって、長くて暑苦しく感じる夏か、あるいモヤモヤした気持ちを断ち切りたい時。
後者がほぼ割合的には多いが。

髪にまつわる話で行くと、昔オーストラリアに住んでた時、髪を切らなかった時期があった。いや、海外にいた4年近くは一度も切らなかった。

理由の一つとしては、「英語でオーダー」ということ。意外と僕にはハードルが高く、お金がなかったわけではないがただオーダーの仕方がどうしていいか分からなかっただけ。
海外で住みはじめると外見を気にしなくなるのは、あるある?ではないかと。
なので切っても切らなくてもどっちでもいいという感じ。

帰国予定だった数ヶ月前、シティーのストリートの真ん中で現地の人の髪を切ってる女性を見かけた。
後で聞いてわかったことだが、日本人で若干20歳の女の子。ハサミ一本で世界中を旅しながら色んな人の髪を切っているんだとか。
値段はその時の気持ちでもらっているそうで。

ちょっと話は外れるが、当時僕は25歳。ろくに社会人として就職もしたことないし、海外で楽しいことだけしていた自分にとって4年という月日はとても早く、数ヶ月に迫った日本への帰国。
色んなことが頭の中を巡りただ「不安」の塊でしかなかった頃だった。

そんな状況下の中、その場ではただ見て通り過ぎるくらいだったが、数日後たまたま街中で声をかけられた。
「この間、いましたよね?」

日本ではナンパみたいに思うかもしれないが、海外になると圧倒的に同国の人は少ないがため、顔見知りになることが多い。

彼女とそんなに時間は経ってなかった気がするが、数時間後には髪を切っていた。
何を話たかは覚えていないが、気づけば気分はスッキリとして、前に向かって堂々と歩いていた。
なんか不思議な時間だった。ただ髪を切ってスッキリしただけなのか、彼女の魅力が包み込んでくれたのか。

それ以降彼女とは会っていない。どこに行ったかも知らない。
もちろん名前も連絡先も知らない。
今、彼女は何をしているんだろうか。
たった数時間の出来事が僕にとっては大きな出来事となった。

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