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「何屋」かわからない

Aさん「もともとはWeb制作会社やってたんですけどねー。人件費抑えるためにベトナムでオフショア事業やりはじめた時に、縁あって現地でかき氷屋さんを開店することになりまして。そのあと飲食関連のコンサルなんかでも声かかるようになっちゃって、もうね、何屋さんだかわからんことになってきたよ。はっはっはっ」

なんてことは大小あれど、社会人をしているとタコが耳みたいになるくらいに聞き飽きている訳ですが、これに対する気の利いた返答ってのがいまいち浮かんでこなかったんですよね。

何と言いますか、自嘲っぽく聞こえますが、いわずもがな、これはいわゆる自虐めいた自慢/自虐風自慢です。「俺氏、色々やってんぜすごいだろ」そういうことをあけすけに言うと感じ悪いんで、「何屋かわからん」という自嘲にまぶして自慢をしておる。

で、自虐のところに焦点をあてて「どこかに事業を集中した方がよさそうですね」なんて言おうものなら、そういうことじゃないんだよって空気が醸し出ますし。自慢のところにひっかけて「すごいですねー」って言うのも芸がないですし。

それに、副業が当たり前になった世の中で、多様性がうたわれる世の中で、これだけ情報へのリーチが容易になった世の中で、一つの業種に絞り続けることが善なんて価値観、どこぞにポイズン吐いているんですかって話なんですよね。

何屋かわからんってことはもはや自嘲の対象ではないというか。時代の流れと共に、それがスタンダードになりつつある、と。すなわち、何屋かわからなくなることは、しっかりと世の中を渡りつつある、というスタンダードのニュアンスに過ぎないという。

自慢にすら足りえない。

何屋かわからんってことを自嘲風自慢に使うことは、時代遅れの象徴であると。

なんてことを昨日思っていたら、なんでかいい返答を思いついたんですよ。

「多才の表れですね。もはやAさんというジャンルを確立しちゃってくださいよ」

これです。
これが世渡りです。

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