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ダディ・ロング・レッグズを観たら語彙を失った件 その1

足ながおじさん、誰もが一度はその作品名を聞いたことがあると思う。

年齢がバレるが、日曜夜の世界名作劇場でアニメ作品として放送されたこともあるよね。

孤児院で育った女の子が、その文学的才能(というかそのユーモアのセンスやユニークさに、と言った方が正確かも)に目を留めた資産家のサポートを受け大学に進学することになる。その人は彼女の前に姿を現さないけれど、孤児院の壁に映った彼の影は足が長くて…

というところから始まるこの世界的名作児童文学小説のミュージカルを観てきました。

観 て き ま し た 

結果、タイトルの状態です。なう。いま。現在進行形。

わたくしライト層のミュオタなのでまぁそこそこ観劇など嗜むのですが、ご存知、今年はコロナ禍のため沢山のチケットが紙屑になり、大変悲しい思いをしました(いや演者さんやその他関係各位はもっともっと大変だったでしょうが)。でも今日この演目を観られただけで全てチャラどころかおつりが札束で降ってきたような気分。

ほんと全世界に観てほしい。

だが、誠に残念ながら明日(9/27)が楽日であり、当然ながらチケットも完売だ。

まだ2020年終わってないけれど、今年最高のものを観た、そう思いました。あまりに良かったから、備忘兼ねてここに感想というか叫びを遺しておこうと思う。

なお、観劇後にしたたか酔った勢いのまま書いてるので、基本的に不正確だし、内容も前後するし、なんならライト層だからにわかだし、色々いい加減なところが多いけれど、オタクの妄言として何卒ご容赦いただきたい。


冒頭、ジルーシャが孤児院の支援者達の訪問に備え、掃除をしつつ歌うシーンから物語は始まる。

哀れなジルーシャ…このフレーズの曲(タイトル知らない)は本作の全編通して、ジルーシャが悲しいこと嫌なことがあると歌う曲。嗚呼、こんなひどい目にあってなんて哀れなのジルーシャって。

でも毎回少しずつ雰囲気が違う。作中の時間の経過もあるだろうし、ジルーシャが孤児院の外の世界を知り、心身共に成長したこと、楽しいことや辛いことたくさん経験して豊かさを得たこと(経済的なもの以外も含め)によるものでもあると思う。楽しいことを知った分、辛いことのバラエティも増えたのかな。とてもさりげなく歌い分けている真綾さんの表現力がすごい。

さて、Mr.スミスなる、明らかに偽名の支援者が現れ、ジルーシャを大学に行かせてくれるという。衣食住も確保され、友人と対等な付き合いができるよう幾ばくかのお小遣いも貰える。当時のアメリカの時代背景からすると(女性に参政権はなく、大学進学は極めて限られていたような時代)、とんでもない幸運が彼女に与えられたことになる。

そしてその支援の条件が、彼女が文筆家目指して思う存分学ぶことetcと、毎月Mr.スミス宛に手紙を書くことだった。これらの条件は九ヶ条?としてジルーシャに伝えられのだけど、Mr.スミスの正体を知ってる身としては、もうこの辺からジャービスぼっちゃんめんどくせえ男だな、とか思い始める。拗らせてんな、と。

そしてこの舞台は、井上芳雄さんと坂本真綾さんの2人舞台。大きなセット転換もなく、演者2人によって場面の切り替えや時間の経過が表現される(小物や照明、音楽による演出はあるけれど)。

例えば真綾さんが歌いながらエプロンを外し、箱から本などの私物を取り出す。それだけで、あぁ彼女は孤児院から出たんだ、今は大学の寄宿舎かな?と、いう感じ。後に書くけど、とにかく小物を使った細かい演出がすごい。すごく細かくて、でも押し付けがましくない。多分、私も気付いてないものは沢山あるし、全く気づかなくても問題なく楽しめる。でも、あ!もしかしてこれ!あ!!さっきのか!これ!!ってなると面白い。

こういうの観たかったんだよな〜!!

もちろん帝劇とかでやる大掛かりなセットによる大迫力の演出も好きだ。たくさんのキャストで畳み掛けてくる歌、音の洪水も大好きだけれど、こういう細やかで丁寧な舞台を観たかった。そう思った。

話を内容に戻すと、とにかく色んな初めての体験にテンション爆上がりのジルーシャ、多分移動中の列車の中からかな、大学に着く前に早速1通目のお手紙をMr.スミスにしたためる。瑞々しい感性で、遠慮のない文章で、聞いていて思わず笑ってしまった。

あと、例の条件により、Mr.スミスから手紙の返事は貰えないことになっているし、彼に感謝を伝えてもいけないことになっている。ジルーシャは彼への手紙で、彼を家族かのように思うことは許してほしい的なことを書く。これまで自分を気にかけてくれる家族のような人は孤児院の人しかいなかったもんね。

そういえばわたしの知ってるあしながおじさんの主人公は、なんか本名呼ばれるの嫌でジュディって名乗ってたような記憶があるけど定かではない。いま酔ってるし(調べろよ)。

そして、原作には、いつもおさがり(おそらく孤児院に寄付されたものだろう)の洋服を着ていたジルーシャが、ある日登校したら、その服の元の持ち主がいて(これまた意地悪な子だったと記憶)くすくす笑われて辛かった…みたいなエピソードがあった。

本作中では、初めて自分の服を手に入れた!という喜びとともに、そのエピソードを敵のものを身に付けるのよ、自分自身が悲鳴をあげる…的な歌詞で歌っていたと思う(うろおぼえ)。原作はもう小学生の時に読んだきりだから細かいところは記憶にないけど、ここまで強い表現だったかしら。訳文にもよるのかもしれない。とはいえ、ジルーシャの心中を思うと胸が痛かった。そうだよなぁ、嫌だよなぁ。しかも思春期でしょ。つらいわぁ。

親愛なるダディ…いつもその書き出しで、Mr.スミスへの手紙を書くジルーシャ。

それを読む芳雄…Mr.スミス、本名ジャービス・ペンドルトン、以降、敬愛を込めてジャービスぼっちゃんと呼ばせていただく。

ジルーシャは、Mr.スミスに大学生活について綴った手紙を送り、それを読むジャービスぼっちゃんという形で物語が進んでいく。

いや、とにかくジルーシャのユーモアのセンスが炸裂しているし、着眼点も素晴らしい。ついケタケタ笑ってしまう。うるさくしてすみません。

そして芳雄。いいね!あしながいね!

コミカルな動きが映える。正直、2人芝居だから途中飽きちゃわないかなとか心配したけど…全くそんなことなかった。

てかさ、真綾さんが歌ってる間に芳雄さんずっと細かいお芝居してるんですよ。どっち観ればいいの?まじ開け私の第三の目。

無事、大学に入学したジルーシャだけど、最初は周りの会話についていけない。わたし学友達が話してることについてさっぱりわからないの、と、手紙に綴る。

いや、そうだよね。おそらく大学に入れたってことは孤児院で育ったけれどちゃんと高等教育は受けている。でもその他の、なんだろう、文化的なもの?例えば、家族間の会話やイベントで身につける知識、経験、雑学そういったもの、孤児院の生活では習えないもの、にジルーシャは触れずに成長してきてしまったんだろう。特に当時、女性で大学に通わせて貰える時点で大体ご実家が裕福だろうから、そのギャップ凄そう。お互い悪気がない(学友側も)分、辛いだろうな。

どうしても環境が与えるものってあると思うし…この後もそこまでキツいものはないものの、何度かジルーシャの育ってきた環境に起因して、彼女が懊悩しているのが見て取れて胸が締め付けられた。しかもそれをすごい!悲劇のヒロイン!かわいそう!!的に強調してこない演出がずるい。そしてこれも彼女の将来の糧になるのよね…

またある時は、扁桃腺が腫れた?かなんかで6日も病室に篭りきり、孤独で辛い…と、Mr.スミスに手紙を書く。

6日?!と、眼をむく芳雄もといジャービスぼっちゃん。ここら辺のコミカルさの塩梅が大変絶妙。ほんと某演目は絶対やりすぎるだろうから………………いやこの話はやめよう。

ジルーシャの手紙を読むや否やどこかに電話するジャービスぼっちゃん、電話を置く瞬間スポットライトは手前のベッドのジルーシャに移り、彼女は花束を掲げる。ぼっちゃんが電話を置いた時の「チーンッ!」という音と同時にぼっちゃん暗転、ライトアップされるジルーシャと花束。ものすごく印象に残った。あんなにジルーシャに関心を払わないようにしてたぼっちゃんの矢も盾もたまらない感じと、いきなり届いた花束、しかも孤独でつらくて仕方ないときに唯一の家族みたいに思っている存在から贈られたもの、に驚き、喜ぶジルーシャの姿が。

ジルーシャはこの後、何かとMr.スミスに心情を吐露したり、助言や助けを請うたりする。返事もくれない、ヨボヨボで高齢でハゲの人嫌いな偏屈おじいさん(だとジルーシャは思っている)を心の底で頼りにする(それこそ自分の出自という理由により最愛の人と道を違えるという決断をした時も)ようになることに、全く唐突感を感じなかったのも、こういった細かい演出でMr.スミスがなんやかんやとジルーシャを気にかけているようなくだりが差し込まれていたからだなぁと思った。

そうやって!わたしを!喜ばせるんだから!!!

なお、この時の花束は多分ドライフラワーかなんかにされ、ずっと彼女の部屋に飾られる(特に物語中で触れられはしないけど、花束がずっとそのまま飾られている)。舞台が終わるまで。ジルーシャはそれだけ嬉しかったんだろうね。自分を気にかけてくれるMr.スミスが。やっぱり彼女が彼を頼りにするようになるのは納得だよね。

そうやって!また!わたしを!喜ばせるんだから!!!

この花束に限らず、小物の使い方がとても素敵だった。例えば、ジルーシャの手紙。

彼女からの手紙をすっかりお気に召したらしいジャービスぼっちゃんは、届くお手紙を書斎の本棚にピンで留めていく。物語が進むにつれ、彼女からの手紙は増え、本棚に留められる手紙も増える。一幕で何回かそんなところを見せた後、二幕が始まった時に、一幕終了時より本棚の手紙の数がかなり増えていることに気づく。あぁそうか、時間が経過したんだ。わたしがトイレに並んでる間にジルーシャが成長したんだ。

すごく些細だけれど、とっても大好きだよ。こういう演出。

また!そうやって…いや、もうしつこいからやめよう。

とりあえず長くなってしまったので、ここらへんで一旦切ります。

つづきはその2にて






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