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きっとだれよりもコロポックル§5(完)

ーゆれゆれおみまいー

会わずともだれより心を寄せあえる人というものはいる。きっとだれよりも臆病者なのに好奇心はあって、人見知りなのにだれよりもおしゃべりで、だれよりも気を配ろうとするのにだれよりもそれに気づき、気がついたら目にいっぱいの涙をためて、その涙さえだれかにあげようとする。そんなタイプの3人が集まって、いっぱい話をした。

このおはなしは、こんな書き出しから始まった。

わたしたちの島国は揺れる。しかたないけれど、逆らえないエネルギーに。あの日も、コロポックルのこと、きつねの子のこと、わたしの大好きな大彫刻をすぐに想った。きっと彼らは大きな蕗の葉の下に隠れたに違いない。

すぐに「たまちゃんの作品は無事です」とメールと写真を送ってきてくれた。きっと真っ暗なアトリエのなかで、蕗の葉のような大きな手で、手回し充電器をくるくるしていたのだと思う。おしゃべりだけれど、本当は、だれよりも臆病者だろうから、きっときっとそう。

ビー玉の眼の彼女は、もっと海のほうにいる。オレンジ色の灯がきれいな町。町のオレンジが消え失せて、暗い海の町は、彼女のビー玉眼だけが光っているんだろうな。きっときっとそう。


コロポックルからの贈り物

翌日、「七輪があるからたまちゃんの土鍋でごはんを炊いたよ」と、近況を送ってくれた。小さな土鍋を贈ったことを少し後悔したけれど、やっぱり彼はコロポックルだと思った。

雨がつづく東京に、彼らの手紙と北海道の贈り物が届いた。ビー玉眼の彼女は小さな文字で伝えてくれた。「アトリエのちいさな陶の犬、わたしたちの名前の犬だけ倒れなかったって」と。

わたしたちは、また会えると確信した。
だって、あなたたちは蕗の葉の下に住むコロポックル。(完)


「ものがたるコッチョリーノ 」
ーきっとだれよりもコロポックルー

1話〜5話(完)

ヘッダー写真: 陶おめんちゃんCocciorino



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