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第3章 「エルム」第2の犯行声明

「『エルム』から2通目の手紙が来ました!封筒などの体裁は前回とほぼ同じですが、消印も前回と同じ、札幌です。コピーを今から送ります!」
 成瀬川は礼を言って電話を切り、ファクスから排出された用紙を手に取った。そこには一行だけ、こう書かれていた。

――引き裂かれし運命、身を以て味わうべし。

「何か意味深ですね。前回のものと関連はあるのでしょうか?」
髙橋が言った。
「わからんなあ。でも何かしらのメッセージがあるのは間違いないだろう……ん、これは何だろう?」
 成瀬川が返したところ、ファクス用紙の印字部分の隅に、汚れが付いているのに目を付けた。送信時に付いた傷のようなものなのだろうか。成瀬川は瀬戸中央署に確認してみた。
「手紙の用紙に付いている跡がそのまま写ったものらしい。こちらのものでは黒く写っているが、もとの方では赤いシミのようなものが付いているらしい。指紋のようなものでもないので、気に留めてはいないようだ」
 成瀬川が斎藤から聞いた内容をそのまま皆に伝えた。
「次は誰を狙っているのでしょうか?」
 玉城が成瀬川の方を見た。
「板井との接点がある人間とすると、玉利茂作か守屋志穂梨のどちらかかなあ……でも、この2人だとしても、『エルム』の動機が分からん。なぜ狙う必要があるのか……」
 成瀬川は腕を組んだ姿勢を崩さず、続けた。
「まあ、前回の手紙と合わせて考えると、前回は『天罰覿面』という現代ではあまり使わない語句を用い、今回は古典的な文体を使っている。だからといって年配者のメッセージだとは言えないがね」
「今回も消印が北海道からだということですが、前回と同じ人物が投函したと見ていいのでしょうか?」
 勝浦が口を開いた。
「同じ郵便局の消印だから、そう見てもいいだろうね。書式もほぼ同じだし、印刷した機械も同じものだろう。何か他に手がかりはないものかねえ……」
 成瀬川はファクス用紙を見ながら、思案をめぐらせた。
「いずれにせよ、今は手がかりが他には見あたらない。玉利、守屋、琴乃の3人のマークを強くしよう。あと、浜名鈴江についても詳しく調べてみる必要があるだろう。われわれが考えられる人物で、北海道に在住しているのは彼女だけだ。私は勝さんと瀬戸中央署に行ってくる」
「了解!」
 例によって、一乗寺と宝田以外の面々が動き出した。


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