きのこ

分類があいまいな記述を見るとモヤモヤするシリーズ【微生物編前編】

分類があいまいな記述を見るとモヤモヤするシリーズ第一弾。
(シリーズ化するかは私のやる気次第、、、)
今回は微生物について述べます。
(他にもネタとしては「DNA, 染色体 (chromosome), ゲノム (Genome), 遺伝子 (Gene)は全部違うものを指す単語ですから」とか「放射線, 放射能, 放射性物質, をごっちゃに誤用して書いてる記事は信用しませんから」などがあります。。)

微生物とは
人の肉眼では構造が判別できないような微小な生物を指す言葉
菌類, 細菌類, ウィルス, 極微小な藻類や一般的にプランクトンと呼ばれる動物なども含まれる。
(Wikipediaより)

微生物という単語は要は大きさを基準にして一括りにしているだけで動物も細胞も細菌もウィルスも全部小さければオッケー!というっても便利な言葉。
これ自体は全然問題ないのですが、その中の菌類や細菌類、ウィルスなどがごっちゃになっているとモヤモヤしちゃうので、できるだけ分かりやすく説明してみたいと思います。

ちなみに私の専門は微生物ではないので、紐倉博士みたいに顕微鏡で観察してその形態から「きみは〇〇菌だね」とか同定できるほど知識はありません、、、

菌類

菌類(きんるい)とは
広義には細菌類、卵菌類、変形菌類及び真菌類をまとめて指す用語であるが、狭義には真菌類を示し、本稿では主に狭義の菌類(真菌類)について扱う。真菌類は、キノコ・カビ、単細胞性の酵母、鞭毛を持った遊走子などの多様な形態を示す真核生物であり、菌界(学名:Regnum Fungi )に分類される生物群である。
(Wikipediaより)

菌糸から体を構成されているカビやキノコは糸状菌と呼ばれ、単細胞(一つの細胞からできているもの)のものには酵母(菌)などが含まれます。キノコは目に見えるので微生物じゃないですけどね、、、
キノコやカビを間違えることは早々ないと思うのですが、酵母をバイキン!と言われるとモヤモヤします。

いわゆるバイキンと呼ばれがちな後述する細菌類と酵母は何がちがうのか?と言えば、単細胞生物であることは一緒なのですが、細胞の中の構造が全然違います。
酵母は遺伝情報を担うDNA(デオキシリボ核酸)を包み込む核膜という構造を細胞内に持っていて(真核生物)、他方、細菌類は核膜を持っていません。つまり細胞内にDNAが広がっている状態です(原核生物)。

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Source; BIOCHEMANICS, Differences between Prokaryotes and Eukaryotes

左のProkaryoteが原核細胞、右のEukaryoteが真核細胞、です。
大きな違いは先ほど述べたように核膜を持つか持たないかということ。
左の原核細胞では核膜がないためDNAはNucleoid(核様体)という構造でなんとなく?細胞の中にまとまっています。右の真核細胞では核膜によってDNAを含む核 (Nucleus, 左側の水色の球体) と細胞質 (Cytoplasm)に細胞の中がきちんと区切られています。他にも小胞体、ミトコンドリア、ゴルジ体、核小体、といった細胞内小器官も観察でき、これらは原核細胞にはありません。

それから二つ目の大きなちがいとしては大きさ。原核細胞は1-10μm程度。真核細胞は10-100μm程度と約10-100倍大きいことになります。例えばゾウリムシなんかは0.1 mm程度でして、一つの細胞としてはだいぶ大きいということが分かるかと思います。

で話を菌類に戻して、キノコやカビは目に見えるので微生物とは言い難いので、それらを除く菌類に属する微生物について。
例えばパンやビールなどを作るのに必須なイースト(yeast)菌は酵母の一種で学名としては Saccharomyces cerevisiae(出芽酵母)になります。同じ酵母でも分裂酵母はSchizosaccharomyces属に属し私たちが馴染み深いイースト菌とは分類学的にも別で、系統樹的にも3-4億年前に分岐した別の生き物になります。でも両方とも菌類。(でも遺伝学的には動物と細菌くらいに違うよ、という話)専門外の人間から見ると、見た目的には小さい子分が出芽するか、等分するか(分裂)の違いしかわからないのですが。

その他にも水虫の原因の白癬菌はカビの一種。ゾウリムシは菌類になるのかな?ゾウリムシ属 (Paramecium)の真核生物だそうです(だんだん分類が面倒になってくる)

細菌類

細菌(Bacteria)とは
大腸菌、枯草菌、藍色細菌(シアノバクテリア)などを含む生物群である。形状は球菌か桿菌、ラセン菌が一般的で、通常1-10 μmほどの微小な生物である。核を持たないという点で古細菌と類似するが、古細菌-真核生物にいたる系統とは異なる系統に属しており、両者はおおよそ35-41億年前に分岐したと考えられている。

いわゆる大腸菌や、納豆を作るときに使う枯草菌、みんな大好き?乳酸菌、などが含まれます。腸内細菌も細菌ですが、その種類はヒトでは3万種類程度、成人一人当たり1.5-2 kg程度の腸内細菌が含まれるとされています。

マメ科植物の根の周りで大気中の窒素を取り込んで窒素固定を行う土壌微生物である根粒菌なども細菌類です。(厳密には窒素固定を行うのは細菌類の他にも古細菌も含まれるそう)

いわゆる抗生物質によって駆逐されるのがこの細菌類で、一方で風邪などの原因は後述するウィルスによるもの、とされています(細菌とウィルスの違いについてはこちら)。いたずらに細菌が原因ではない風邪で抗生物質を処方されて飲むと、腸内細菌が死んでむしろ免疫力が悪化するケースもあるのでお気をつけてください(腸内細菌と免疫力の関係についてはこちらの厚生労働省のサイトを参考になさってください。とても興味深いのでこの辺は需要があれば別途まとめます)。それでも風邪に抗生物質を処方する理由として、風邪を治すのに免疫力を総動員して戦って抵抗力が落ちているときに細菌などによる二次感染を防ぐため、としているのもお見かけします。この辺の判断は医師ではない私にはできませんので、かかりつけのお医者さんによくご相談なさってみてください(と言っても高熱でもうろうとしていたらなかなかできませんよね、、、)

細菌が原因とされる病気

・肺炎球菌やインフルエンザ菌による肺炎
 一般的に肺炎といえば細菌やウイルスなどの病原微生物の感染によって生じる肺の炎症を指します。日本人の死因の3位になり、また肺炎で亡くなる方の95%以上が65歳以上のお年寄りとのこと。(国立循環器病研究センター 肺炎とは?より)

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Source; 国立循環器病研究センター 肺炎とは?より

ウィルスが原因の風邪とは異なり、肺炎の原因の半分以上は細菌によるものとされています。よって抗生物質の投与が有効です。
肺炎を引き起こす原因の約20%は肺炎球菌とされ(国立感染研サイトより)、肺炎以外にも、髄膜炎、敗血症、中耳炎、副鼻腔炎、なども引き起こすとされます。

原因の第二位のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)は、いわゆる毎年予防接種をするインフルエンザウィルス(influenzavirus )とは異なります。(紛らわしい、、、)Hibという予防接種を生後二ヶ月から打ち始めたと思います。Hibの接種によってインフルエンザ菌を原因とした幼児での髄膜炎、喉頭蓋炎の感染はほとんど消失したとされます。

予防にはうがい手洗い以外にもワクチン接種があります。

肺炎の原因菌として最も多い肺炎球菌に対しワクチンがあります。このワクチン接種で、肺炎球菌による肺炎の発症を予防し、重症化を防ぐことが期待されています。
肺炎球菌には93種類のタイプ(血清型)があります。現在、肺炎球菌ワクチンには、23種類の血清型に対し効果のある「23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)」と、13種類の血清型に効果のある「13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)」の2種類があります。
これまで成人では、肺炎球菌によって重症化する危険性が高い人に対し、「23価肺炎球菌ワクチン」のみ使用可能でしたが、平成26年6月から、それまで小児だけが対象だった「13価肺炎球菌ワクチン」が、65歳以上の高齢者にも使われています。なお「23価肺炎球菌ワクチン」は5年毎に繰り返し接種する必要があります。
国立循環器病研究センターサイトより引用)

小児用肺炎球菌ワクチン

 わが国では2010年11月に小児に対するPCV7(7価の肺炎球菌結合型ワクチン)の公費助成が開始された。その後、2013年4月からPCV7は5歳未満の小児を対象に定期接種化(A類)され、さらに2013年11月からはPCV7はPCV13に切り替わった。2007年から始まった「ワクチンの有用性向上のためのエビデンスおよび方策に関する研究」(庵原・神谷班)において、5歳未満の人口10万人当たりのIPD(侵襲性肺炎球菌感染症)罹患率は、2008-2010年に比較して2013年度までに57%減少したとされている)。また、PCV7公費助成・定期接種化後の2013年には、血清型はPCV7非含有血清型の割合が増加した。結果的に、PCV7公費助成前(2010年)のIPD原因菌のPCV7含有血清型カバー率は78.5%であったのに対し、公費助成・定期接種化後(2013年)には3.3%にまで著明に低下しており、わが国の小児IPDにおけるPCV7導入後の血清型置換が明確になっている。
日本感染症学会HPより引用)

意訳すると

肺炎球菌およびインフルエンザ菌を原因とした市中肺炎(院内感染ではなく日常生活で感染する肺胞の炎症を病態とする疾患)の多くは、5歳未満の子供や65歳以上の高齢者で多くみられる。
↓2010年11月からPCV7(7価の肺炎球菌ワクチン)が子供で公費助成化
↓2013年11月からはPCV13(13価の肺炎球菌ワクチン)が子供で定期接種化
(子供への23価ワクチンの接種は効果よりも副作用の懸念の方が高いので現在は行われていないとのこと。実際うちの子も、散々予防接種を打ってきましたが、唯一肺炎球菌ワクチンだけ副作用で高熱が出ました。また生後数ヶ月と小さかったことや、接種スケジュールの関係で複数種類打ったもあるのなかな、、、)
↓5歳未満のIPD(侵襲性肺炎球菌感染症)罹患率は、ワクチン助成前の2008-2010年と比べて2013年度までに57%減少したそうだ→予防接種の有効性が示された!
↓93種類ある肺炎球菌のうち、7種類、もしくは13種類の肺炎球菌に有効なワクチンを定期接種化した結果、7価のワクチンが対応する肺炎球菌を原因とする感染症が78.5%もあったのが3.3%にまで減少した。
(そもそも総数がどのくらい変化したのかにも寄りますが、仮に変わらないと仮定すると、モグラ叩き的にこっちを叩いたらあっちが出てきた的な、、、)

日本感染症学会のHPでも、アメリカでは肺炎球菌ワクチンの有効性が示され成人への接種が推奨されているけれども、日本では2017年現在その有効性がはっきりしないので、今後も検討していくとのこと(日本感染症学会のHP 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方より)。
予防効果と副作用とワクチン耐性の菌による羅漢率の変化など、しっかり調べていく必要がある、ということですかね、、、



(大塚製薬HP ピロリ菌についてより引用)
名前はかわいいけど、見た目は全然可愛くないピロリ菌。なんでここだけ病名じゃなくて細菌名のタイトルなんだよ!というツッコミは受け付けておりません。
胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因とされます。
保険診療で検査(内視鏡を使う検査や、内視鏡を使わない血液、尿、便、呼気の検査などがあります)や除菌薬の処方(ランソプラゾールで胃酸分泌を抑え、2種類の抗生物質アモキシシリン(ペニシリンの仲間)とクラリスロマイシンでピロリ菌を殺します)が受けられます
(詳しくは大塚製薬HPの「ピロリ菌の検査と除菌治療」へ)。

・膀胱炎
細菌が尿道から入って膀胱で感染して起こる炎症のこと。
原因の80%は大腸菌とされ、特に女性は男性より尿道の長さが1/4程度と短いため、膀胱炎にかかりやすいとされます。原因の多くが細菌性であるため、抗生物質での治療が有効です。
その他予防法については聖路加病院の泌尿器科のHPをおすすめしておきます。

・副鼻腔炎

鼻(鼻腔)の周りには「副鼻腔(ふくびくう)」と呼ばれる4つの空間(上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞)があります。この空間内で炎症が起きている状態を「副鼻腔炎」といいます。以前は「蓄膿症(ちくのうしょう)」という呼ばれ方もしていました。急性期では鼻づまり、ドロっとした匂いのする鼻汁、頬・鼻周囲・額の痛み、顔やまぶたの腫れ、発熱などの症状を認めます。
日本耳鼻咽頭科学会HPより)

副鼻腔炎、私もかかったことがあるのですが、風邪の治りかけの状態が一週間以上続くなあと思いつつ、だんだん顔面痛が酷くなり夜も寝られない状態が一週間以上続いたため、耳鼻科を受診したらCTを撮られ副鼻腔炎と診断されました。抗生物質を飲んだら3日ほどで良くなりました。

自身の白血球の一種である好酸球が鼻内に増加して炎症を起こす好酸球性副鼻腔炎といった難治性のものもあるようなので、風邪が長引く、黄色い鼻水、悪臭を伴う鼻水、鼻づまり、額・目の奥・頬などの顔面痛、などの症状が続くようなら早めに受診されることをお勧めします。


ちょっと疲れたので途中ですが、続きはまた今度、、、

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