出雲駅伝 個人的見どころ展望

10月10日に大学駅伝開幕戦である、出雲駅伝が開催されます。今日、その選手エントリーが発表になりました。

そのエントリーを見た上で、個人的な注目ポイントを書いていこうと思います。

出雲駅伝はどんな駅伝か

まず、出雲駅伝はどういう特徴を持った駅伝なのか、を述べます。

  1. 距離の短いスピード駅伝である

  2. エース区間の比率が高い駅伝である

  3. 駅伝シーズン開幕戦である

そういう特徴がある事で、以下のような傾向があります。

  • 選手層よりエース力が問われる駅伝である

  • 試験的な起用が多い

  • ルーキーが活躍しやすい

6区間しかなく、しかも区間距離も短いので、エース区間のアンカーで全てひっくり返ってしまう事も多々あります。そして、今年もそういう選手が出場予定です。
それが、東京国際大のヴィンセント選手。
恐らく、多くのサイトで東京国際大が本命に予想されているでしょうが、その理由が彼の存在です。
また、箱根ほどの注目度がない事、あくまで「本番」は箱根だという事で、試験的な選手起用をする大学も多いです。まぁ帝京大学なんかは明らかにそうですよね。他の大学も、多かれ少なかれそういう傾向はあると思います。
そういう事も後押しして、あと距離が短く高校駅伝の延長線上で走れる事もあり、ルーキーの活躍が目立つのも良くある傾向と言えるでしょう。(去年も4区区間賞が早稲田のルーキー石塚選手、5区区間賞が東洋大ルーキー石田選手でした。)

エントリーを見ての感想(有力校のみ)

で、今日発表になったエントリーを見ての感想です(いくつか事前発表されていましたが。)

東京国際大

もちろん、ヴィンセント選手健在。あと去年3区で独走状態を作った丹所選手もエントリー。ただ今年のトラックシーズンは去年ほどの出来ではなかったので、どういう状態かが注目です。あと一人のエース格である山谷選手が外れたのは大きい。その代役は、今年躍進している白井選手になるか。白井選手がどれだけやれるかは、東京国際の来年以降を占う意味でも注目です。
あとは、去年の優勝メンバーが外れていますが、今年選手も育っていて層も厚くなっているので、その穴は十分に埋まると思われます。そういう意味でも今年も強いと思います。
あとは、去年は初優勝を狙いに、調整を完全に出雲駅伝に合わせた事も優勝の要因だった(他の大学は出雲にはそこまで標準を合わせてなく、調整も十分ではない)ので、今年もそこまで調子の波を合わせにいくのか、も注目です。
(今年はそこまで合わせないと思うんですよね。そういう意味で他校にもチャンスはあるだろう、と。)

青山大学

エース近藤選手は調子良さそう。でも岸本選手が外れたのは大きい。ただここは恐ろしく層が厚く準エース級で10人くらい埋まってしまうので、誰が走ってもそこそこでは走るでしょう。
対東京国際で考えると、3区までに前に出て、4区5区で差を開いてエース近藤に託す、というのが勝つ方法だと思いますが、3区で丹所選手相手にそれができるか、となると、岸本選手不在は大きいのではないか、と。もっとも近藤選手は今年さらに強さを増した感はあるので、30秒くらいあれば逃げ切ってくれるかもしれません。そのためにも何とか早めに先手を取りたい所でしょう。

順天堂大学

エントリーは順調。三浦選手はもちろん、伊豫田選手、野村選手らエース級も揃っています。ただ三浦選手がアンカー走りそうにないので、ヴィンセント選手が相手と考えるとちょっと落ちるのが難点かも。(アンカー三浦選手なら、他の大学にとってこんなに嫌な事ないだろうけども。)
対東京国際で考えると、三浦選手の区間で前には出られるでしょうが、そこから
差を大きく広げる必要があるでしょう。アンカーは伊豫田選手、野村選手か四釜選手あたりになるでしょうが、いずれにしても1分半くらいは欲しい所です。なので、丹所選手に三浦選手をぶつけ、ラストスパートで離して4区5区で差をどれだけ付けられるか、という方策で行くか、いっそ1区に三浦選手にしてあとはひたすら逃げまくる、という方策で行くか。ただ1分半離すのは相当大変です。

駒澤大学

田澤選手は当然として、鈴木芽吹選手が入ったのは朗報。でも前半戦全く出ていなかったですし、出雲は無理させないという話も聞こえてきます。あとエース格では唐澤選手、篠原選手も外れています。注目ルーキーの佐藤圭汰選手もエントリー。
もっとも駒澤も層は厚くロード強い山野、花尾もいるので、そこそこは戦えるでしょう。
ただ、駒澤はそもそも、出雲にどれだけ合わせるかが問題なので。昔の4連覇時代から出雲は合宿の疲れが抜けていなくて精彩を欠く事が多かったですし。(駒澤は未だに駅伝3冠がないのはこれが理由。)
対東京国際で考えると、田澤選手はヴィンセント選手に唯一対抗できる選手(トラックレースですが勝った事もある)で、追いつかれても付いていって最後に一勝負できる可能性があるので、とにかくヴィンセント選手の前で襷を渡したい所でしょうね。ただ、3区で丹所選手と対抗できる選手がいるかどうかが問題ですが。(去年、花尾選手は42秒差付けられています。)もちろん芽吹選手が万全なら十分なのですが。1区で遅れない人材も必要。タイプ的に1区ではない山野選手や花尾選手がいけるのか、スピードのある安原選手で務まるのか。1区が上手く流れれば勝負形に持ち込めるかもしれません。

東洋大学

エース松山を欠きます。その時点で「エース力の比率が大きい」出雲では大きく不利です。
ただ東洋は駅伝巧者で、去年も松山、宮下を欠きながら3位に食い込んでいます。
といっても松山選手なしで東京国際に対抗しようと思うと、苦しいと言わざるを得ないかな。石田選手が覚醒してくれると面白いのですが。
松山選手以外で誰がアンカーでもヴィンセント選手相手なら1分半から2分くらい欲しいでしょう。そのためにも、早めに東国を振い落としたい所でしょう。

國學院大

実は密かに本命視されていたのが國學院大でしたが、安定したスターターだった島崎選手が外れたのは地味に大きいと思います。國學院大が本命視されていたのはエースが4人いる事だったのですが、島崎選手が1区を走ってくれると繋ぎ区間にエースを2枚余らせる事ができる、という強みがあったからです。
でも、島崎選手抜きで1区にエース一人を使っても、それでもエース一人を繋ぎに回せるという強みは残るので、楽しみは楽しみです。
東京国際相手でも、あとどこ相手でも、4枚エースのうち繋ぎに回った区間で抜け出したい所でしょう。丹所選手に対抗できる選手も全然いるので、アドバンテージのある区間で確実に差をつけて、そこからアンカーまでに差を広げて平林選手
に託す、というのが勝負パターンになるでしょうか。ヴィンセント選手相手だと、やっぱり1分近くは欲しいですかね。

中央大学

もう一校、「密かな本命」とされているのが中央。エントリーはこの上なく順調、ただ直前の記録会では大エース吉居大和選手は調整走に終始していたようです。吉居大和選手が万全ならヴィンセント選手からもかなり逃げられそうなので、彼がどこまで調子を戻せるかが優勝を争う上ではポイントとなりそう。
でも、それ以外では、今シーズン覚醒した中野選手に、スーパールーキーの吉居駿恭選手・溜池選手が直前の記録会で揃って自己ベストを出していて、大和選手が万全でなくてもエース区間はなんとかなりそう。他の選手も調子良さそうなので、少なくとも5区までは上位争いする中央を久しぶりに見れそうです。
対東京国際では、大和選手が万全かどうかでレースプランは違ってきそうです。
万全なら、丹所選手に中野選手をぶつけて真っ向勝負、そこから4区5区にスーパールーキーを並べて差を広げれば、30秒差まで広げれば逃げ切ってくれそう。
でも大和選手が万全でなくエース区間を回避するなら、アンカーは中野選手になるので開けられるだけ開けたい、となると、とにかく好調のスーパールーキーを並べて先手を取り、あとはトップ効果を使ってどれだけ差を広げられるか、というプランかな。

という事で、冷静に考えれば、やっぱり本命は東京国際、対抗は青学と、大和選手
万全の中央、あと芽吹選手万全で出雲にしっかり合わせた駒澤、ですかね。あと三浦選手がアンカーに回った順天堂も強いと思います。あのラストスパートを持った選手と並走するのはどんな選手も嫌なはずです(たとえヴィンセント選手でも)。

注目ルーキー

あと、出雲と言えば、ルーキーの活躍が目立つ大会です。なので、今年の注目ルーキーを挙げておきます。
まず、やはり駒澤の佐藤圭汰選手は外せないでしょう。もっとも大学に入って以来、少し精彩は欠いています。でも、それは彼の期待値の高さからそう見えているだけで、並のルーキー基準なら十分に活躍している結果でしょう。なので、出雲でも繋ぎ区間で良い流れでもらえれば普通に区間賞候補でしょう。さすがに今の駒澤はルーキーにエース区間は任さないと思うので。(もっとも駒澤はよく期待のルーキーに1区任せて失敗したりしてるんですが。)
大学に入って大活躍なのは中央のルーキー2人、吉居駿恭選手・溜池選手でしょう。特に吉居駿恭選手は高校自体から10000mで大学でも高レベルの記録を持っていたように距離に不安がない選手ですし、もはや中央にとっては活躍を計算している選手と言えるかもしれません。
東洋の緒方選手も、全日本大学駅伝予選会ではびっくりの最終組抜擢で、見事に役割を果たしています。期待度はかなり高いと言えるのではないでしょうか。

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