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私の幸せの素

夏、コロナ禍が少し落ち着き
私の最優先事項
会いたい人に会いに行くを
ぼちぼち再開するようになり5ヶ月

東京でのライブに
初めて参戦することにした。

こどもが生まれて14年間
一人でお泊まりすることなんて
出産のために入院したとき以外
たぶんなかったんじゃないかな

せっかく東京まで
出掛けるのだから
次の日もう一人会いたい人に
会えるといいな

そんな思いが出てきて
関東に住む彼女に
まずは東京行きの報告だけをしてみた。

すると彼女からは
会えるの?!と
前のめりな返事。

とても繊細な彼女の心の扉を
開けてくれるのを待っていた私には
とても嬉しい反応。

さらには
次の日おうちに一泊してと
私の想像を超えたお誘いまで。

こどもが初めてのおつかいに
行くみたいに

わくわくドキドキで
1日目のホテルを予約し
2泊3日の旅の計画をしていた。



それなのにそれなのに
待ち焦がれたその日が
近づいてくるにしたがい
雲行きは怪しくなってきた。

結局東京行きの計画は
中止することに。

会いたい人に会えなくなり
我慢していた春より
会えなくて会いたくて
切ない気持ちは募る。



ホテルをキャンセルしたら
2年前から抱いていた
気球遊覧という私の夢が
ふと頭をよぎった。

2ヶ月ほど前に調べたときは
どうやら今は
やっていない様子だったけれど

気になってもう一度調べてみると
なんと予約受付中となっている。

会いたい人に会える幸せの
代わりになんてならないけれど

今の私にせめてもの
慰めのプレゼントが
届いたような気がした。



気球遊覧を予約したあとは
会うことを諦めた彼女とすぐさま
ビデオ通話でガールズトーク。

お互いの置かれている状況が
あまりに似ていて
気持ちがわかりすぎる
二人の会話はなかなか尽きず

スマホの電池がなくなって
最後は会話に異様なタイムラグが発生。

スマホに早く終われと
催促されているみたいで
名残惜しさもありつつ

いつでもまたこうやって
繋がれる安心感をもらい
通話終了ボタンを押した。



次の週末
苦手な早起きもなんのその。

去年予約した日は
雨で中止になったけれど
今回は最高の
気球遊覧日和となった。



みんなで協力しながら
気球のバルーン部分を広げたら
ゴンドラにつなぎ

まずは扇風機で風を送って
バルーンを膨らませる。

バルーンとともに
私の期待も膨らむ。

途中からはバーナーを炊いて
バルーンを膨らませ

ゴンドラが浮いてしまう直前に
急いでみんなで乗り込む。

あっという間に地上は遠ざかり
人も車も家も
ちっぽけな存在になる。

田んぼや畑の刈り入れが
済んだところとまだのところ
そのパッチワークが美しい。

この日の上空は
全くの無風状態で
流されることなく完全に
宙に浮いている感覚。

上空900m近くまで上昇し
広い琵琶湖の湖岸を
一周一望できてしまう感動。

今私がいるこの空は
会いたい人が見ている空にも
繋がっていて

心が繋がってさえいれば
きっとまた会える
そう思わせてくれる。



そして
同乗したご夫婦はなんと
去年私達と一日違いの予約で
同じように天候不良のため
乗れなかったのだと言う。

一年待ってこの感動を
一緒に味わうことになった
巡り合わせにも感動する。



45分ほどの
静かな空中散歩を楽しんだあと
着陸できる場所を探しながら
降下していくと

気球は流され
肌に風を感じた。

飛行機のように
車輪が付いてるわけではない気球は
着地時に衝撃を受けるからと

膝を少しかがめて
それに備える。

予告通りの衝撃とともに
地上に降り立てば

初体験という「スパイス」の幸せだけ
心に残して
いつも通りの「日常」にまた帰る。



「日常」に少し飽きがきたけど
コロナ禍の中では
お好みの「スパイス」も
思うように手に入らない

そんなときは
「非日常」を作ってみる。

飽き性の私は
ずっと同じことをし続けるのが苦手。

いろんなことをちょこちょこと
こなしていく「日常」がお似合い。

そんな私が一日中一つのことを
ひたすらやってみたら
どうなるんだろう

好奇心に誘われて
実験してみることに。

朝起きたら当たり前に
着替えて化粧する「日常」から抜け出し

この日はすっぴん
パジャマのまま。

いつもの朝風呂、洗濯、食事の用意は
前日の夜までに完了させ
一切の家事をしない。

そうしてこどもの頃大嫌いで
30分も続かなかったピアノの練習を
一日中して過ごすという
「非日常」を本気で実現させてみる。

新しく好きな曲を1曲選んで
買っておいた楽譜と格闘。

腕前は初級なのに
聴くと素敵な中級クラスの楽譜を
つい買ってしまったため

一日中かけても
まともに弾けるようにならないという
散々な結果に。

それでも
この「非日常」から得られた満足感には
幸せを感じる。



私の幸せはほとんどの「日常」と
たまの「非日常」
そして極上の「スパイス」から
生まれているのだ。

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