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浪人という宙ぶらりんの身分

今回は「浪人生」という現在のおれの立場がどんなものか、という文を書き残す。現在、高校生で受験を控えている人や、浪人の選択肢が頭にある人、無い人、どちらにせよこの文章を読んで参考にして貰えたらなと思う

先に断っておくが、単に「浪人生」と言っても、その人が浪人に至る経緯や、そうなってからの経験や感覚も、全て人それぞれだ。なので、これから語る経験談等も、全てあくまで「その人の話」として、参考にする程度で読んで頂きたい。大前提として、おれはその人の人生は誰かが決めるものではなく、その人自身が好きに生きるべきだと思う。おれが今から貴方に何を伝えようと、貴方の好きな様に生きて貰いたい。それを踏まえて、本文をどうぞ

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「浪人生がどんなものか」というテーマで文章を綴るにおいて、まずは自己紹介というか、おれがどんな環境でどう浪人したかについて先述した方が分かりやすいだろうし、誤解を減らして事実だけを伝えたいので、少しだけ触れておく

自分の学歴を話すと他でノイズになる事が多いので、あまり触れることはないが(Noteの文章では触れたかも?)、おれは大阪府で文理十校という括りの高校に入学し、入学当時は偏差値72〜74で、所謂、進学校の出身だ

だが、おれは高2初頭に起立性調節障害という病を患った。闘病しつつ、卒業には至ったが、それまでの2年間は完全に空白。授業は全て寝ていたし、帰宅してからもリハビリしかしていなかったので、本当に2年間が抜けてしまった。2年間勉強していなかった人間が合格出来るほど大学受験は甘くなく、卒業と同時にストレートで浪人することになった

そして一浪目の1年間も、身体的にも精神的にも病気に苦しめられ、結果として志望校の合格点に10点足りず、現在、二浪目を過ごしている

以上が簡単にまとめた、おれの浪人するに至った環境、経緯だ。それを踏まえた上で、自分や周りの受験生、浪人生の経験談や感想。受験についてのあれこれを話していく

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まず「大学受験」のシステムから触れていく。まず大前提として、高校受験と大学受験では全くモノが違う。高校受験は夏頃から勉強を始める、所謂、一夜漬け的な進め方でも、案外なんとかなったりするが、大学受験は量、難易度、全てにおいて「大半の人間が合格すること」を前提とした高校受験とは違い、圧倒的に難しい

言っちゃ悪いが、高校受験は全体の8〜9割が受けるので、覚える量も少ない上に、全員がどこかしらに引っ掛かる仕組みになっているので、当たり前だが高校受験の浪人なんてまぁ存在しない。なので大学受験よりも短期間の勉強(一夜漬け的なソレ)が、圧倒的に功を奏しやすく、おれ自身も正当な実力ではなく、そういった運で高校に受かった人間の1人だ

だが大学受験は違う。圧倒的な分量、それが全て固まってきてようやく出来る応用など、正直、高校受験の比ではない。特に国公立大学の受験者は、5教科全てをやる必要があるので、英語や数学といった積み重ねが鍵となる教科に関しては、高校3年生に本格的に取り掛かる様では遅く、3年間ずっと受験勉強を重ねている人間だけが合格出来る…といった、本当に恐ろしく難しい仕組みになっている

ちなみに「受験はマラソンだ!」とよく言われるが、個人的には少し違うと思っている。正確には、灼熱の中、25mプールのコンクリのプールサイドに、自らの濡れた足で足跡を残していって、受験当日までに「綺麗に一周全てに足跡をつけた状態にする」といったイメージだ

プールサイドは灼熱なので、付けた足跡は時間が経てば消えていく。なので一度覚えたものを、忘れては思い出し、忘れては思い出し…という作業を延々と繰り返す。すると、やがては足跡が付きやすく、そして消えにくくなるので、なんとか受験当日までに、一周全てに足跡を残さなければならない…と言った具合だ

以上が「大学受験」についての小話だ。偏差値70超えの高校に進学している人達でさえ、国公立など名門大学に行く為には、大半が高1、高2の頃から地道に勉強を積み重ねている。その上で国公立大に進学出来る人間が360人の1/3、関関同立や産近甲龍といった私大に行くのが1/3、そして浪人する人間が1/3といった割合だ

それくらい大学受験は厳しいものだということを理解して貰えたらそれで十分

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ようやく「浪人」について、本題に入る。まず「浪人生」には簡単に3パターンあると思って欲しい

1.「高校時代、勉強量が足りずに浪人した者」
2.「十分勉強したが、実力が足りなかった者」
3.「その他。病気や家庭環境等でやむを得なかった者」

この3種類だ。おれは完全に3に属しているが、高校時代に全く勉強出来なかった点では、1の側面を持っているとも言えるかもしれない

さて、ここから残酷な現実を話していく。浪人して第一志望に合格する成功率は50%とよく言われているが、それは全体で見ればの話で、おれの感覚と周りの浪人生等の話を鑑みると、以下の様になるだろうと考える

「1」の人の合格率は6、70%程度
「2」の人の合格率は30%程度
「3」は根本的な問題が解決されない限り、10%にも満たない

(※あくまで統計を取ったりデータを取った訳ではないが、周り数十名の浪人生、予備校生、そして自分の経験を基にした話)

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まず「1」に属す人の話、これはおれが進学校に属していて、しかも高3の夏や秋まで部活をしている人間が多く居て、その人らが浪人する…というケースが多いが故、少し情報の偏りがあるかもしれないが(そもそも浪人の選択肢を選ぶ時点で、勉強には慣れてる人がその選択をしてるだろうという前提で話を進める)

受験は莫大な時間が必要になる。また、勉強法が固まってきたり、基礎が固まってきた受験生は、後半で一気に実力が伸びる。その必要時間を作りきれなかった、覚えきれなかった…という人なら、浪人して1年の時間(しかも高校と違い、予備校や自分の勉強は無駄な時間が少ない)を確保出来たら、第一志望への合格はグンと近付くと考えられるからだ

実際、おれが属していたラグビー部は、引退が高3の秋.10月31日で、その高校の中でも1番遅く「進学校なのにバカじゃねえの!?共通テスト2ヶ月前だぞ!」とブチギレていた友達も居たが、そういった環境で浪人し、一浪して立派に阪大、神大などに行った友達も居る

なので「1」の立場に居て、時間さえあればな…という人の場合は、浪人して合格する可能性は、他より高いと考えられる

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次に「2」に属する人だ。残酷だが、かなり厳しい闘いになっているのが現実だ。これは特に、私大の滑り止めには合格しているが、どうしても国公立に行きたい!東大、京大に行きたい!的な人に当てはまりやすいのだが、つまるところ必要勉強量は足りているのに、実力が足りなかった人を指している

当たり前だが、社会科目などの暗記するだけの科目は、10覚えれば10の点数が取れて、それだけでOKだ。これは共通テストや私大の入学試験にも共通する所があり、基本的な部分を覚えてさえいれば合格する…といった仕組みになっている

だが国公立や一部の超難関私大ではそれと違い、必要勉強量を満たしていても、覚えるべき全てを覚えていても、それでも点数が取れるか取れないかが、その人の地頭の良さや、運が絡んでくるものがある。本当に残酷だが、現役時代に十二分に勉強していて、それでも合格出来なかった大学は、何浪しようが合格確率はかなり運任せになると考えられる

勿論、必要な勉強時間を満たしていても、勉強方法が間違っているとか、覚えたつもりになっているだけとか…それ以外の構成要素も沢山あるが、実際問題はそれは解決が難しい。それらは予備校で講師に教えて貰うのが最適解だが、中々講師ですらその人1人の最適解を見つけることは難しく、結局、講師もその人自身も中々上手くいかない…というパターンが多い

悪いが、そういった間違った勉強法に気付いて、最適化していく…ということが出来る人は、これまた現役で合格しているだろうというのが現実だ

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最後におれも属する「3」の人、これは自分が属しているからこそ強い言葉を使うが、ハナから論外だ。そもそも大学受験は難関で厳しいものだと何度も先述していて、そこに健康体、健全な環境で勉強している人が沢山居るのに、勉強に集中出来ていない状態の人が、その人達と戦って勝てる確率は限りなく小さい。勿論、その「3」に属する人は、何も悪いことをしてないかもしれないし、怠惰で浪人してる訳でも無いかもしれないが、だからと言って大学側は「君は可哀想だから特別に合格させてあげるよ」と言ってくれる程、甘いモノでは無い

受験は0がスタートラインで100まで行けば合格という、あくまで競争なのだ。そもそも「3」の人間は−100のスタートなので、スタートラインに立ててすらいない。おれの場合で言えば、頭痛やめまいで勉強に集中出来なかったり、軽い鬱状態だった時は、文章が読めなかったりもした。そんな状態で他の人に勝てる訳がない

だからまず、−100の人は、最初から100を目指して無理に勉強するのでなく、0に戻す努力が必要だ。無理に100を目指して+200の努力をすると、高いストレスや負担がかかって、より一層、その病気などの問題が悪化する可能性もある。なので、まずは無理のない範囲で勉強したり、病気などその根本的な問題を解決する為に、色々と試行錯誤して、−100を0に戻す努力(+100)が必要になる

周りに比べて立ち遅れている立場であるから、焦ってしまう気持ちは分かるが、1歩ずつ踏み外さない様に自分のペースで歩くことが、受験合格への最速の道だったりする。「急がば回れ」とは、よく言ったものだ

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以上が大まかに分類した浪人生の種類と、その実情だ。重ねて言っておくが、これはあくまでおれの意見だ。実際はもっと各々で細かい理由があり、怠惰だった、実力不足だった、〇〇だった…etcと色々あるので、誰しもがこの3種類に分類出来るわけでは無いが、個人的見解として、是非、参考にして貰いたい

最後にタイトル回収。「浪人生という宙ぶらりんの身分」について、浪人生がどの様なことを経験して、どの様な感覚で居るのか。こればっかりはおれ1人の感想であり、1番人それぞれな部分ではあるが、理論よりもこういった感情論が1番大切なものだったりするので、是非読んで貰いたい

「浪人生」という宙ぶらりんの身分、とタイトルを付けたが、これはそのままの意味で、浪人生というのは実は職業でも何でも無い。予備校に通っていれば、一応「生徒」という区分で学割や、通学定期券を買えたりするが、「学生」ではない。もっと言えば、現在の俺の「宅浪生」(予備校に通わず家で1人で勉強する)という立場は、実質的に「無職」と何ら変わりないのだ

残酷にもおれは「勉強をしている無職」でしか無い訳だ。社会に属する訳でもなく、学校というコミュニティに属する訳でもなく、ただただ「大学受験」という一本の蜘蛛の糸に必死に掴まり、勉強をして、その地獄から抜け出そうとしている

そんな「浪人生」という立場は、何が辛いか、何が苦しいかを簡単に3つ載せて、浪人生がいかに不安定で、地獄を生きているかを伝えたい

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1つは、劣等感、嫉妬だ。当たり前だが自分が目指している大学には現役で合格した同期が居る。Instagramを見れば、大学生としてキャンパスライフを楽しみ、サークルを楽しみ、恋人や友達と楽しそうに生活を送る、煌びやかなストーリーが流れてくるだろう。予備校に行けば、楽しそうで元気な現役生が居て、その子はまだ「高校」という青春の中を楽しんでいるにも関わらず、自分よりも成績が良いことだって幾らでもある訳だ

言葉を濁さずに言っておく。浪人生は大学受験における敗者だ。劣等感に苛まれるのは当たり前だ

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2つ目は罪悪感。高校時代と違い、実は浪人生はかなり自由にやれる。高校と違って、予備校はサボっても親にはまぁバレないし、1人の時間が圧倒的に増え、サボれる時間も、好きなことをやれる時間も増える。だが1つ断言すると、浪人生の1年間は何をしていても灰色だ。おれには音楽や配信視聴などの趣味があるが、それらコンテンツを楽しんでいる時も、どこかずっと罪悪感があり、心の底から楽しめたことなんてほとんど無い。それが本当に予定通りの休憩時間だったとしてもだ

1番近い感覚は「夏休みの課題が全く終わらないまま、夏休み最終日の夜を迎えた」みたいな感覚だ、それが24時間365日続くと思ってくれたらいい

親に高い金を出して貰っているのに浪人した罪悪感。また、サボっている時は言わずもがな、普通に過ごしている時ですら罪悪感に苛まれる。おれの様な繊細な人間でなく、図太い人なら大丈夫なのかもしれないが、周りの浪人生らに話を聞いても、大半は同じ様な感覚を覚えていたらしい。勉強をしている時だけがその罪悪感から逃れられ、それ以外は常に罪悪感に苛まれる生活だ

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最後、3つ目は孤独だ。個人的にはこれが1番苦しいと言っても過言ではないと思う。おれが高校生に「絶対現役で行った方がいい」とよく話すのは、勿論、浪人生が辛く苦しいものだから…というのもあるが、1番は一緒に勉強する人間(特に友達)が周りに居るからだ。それは1番モチベーションになるし、なにより集団心理で一種の催眠状態の様に「勉強をすること」に何の疑問も持たず、勉強を出来る環境にあり、この上なく素晴らしく、そして「楽」だからだ

「友達が勉強をしているし、自分もサボったらダメだな…」と感じる。たったこれだけのことがいかに恵まれている環境か、浪人してからよく分かると思う。おれの様な宅浪生は勿論のこと、予備校に通っても、大多数は周りに友達は少なかったり、居なかったりで、結局は1人で勉強する時間が大半になる

また、浪人生は高校生と違い、息抜きをも孤独になるのが辛い。高校時代なら休み時間に「あ〜勉強キツイよな〜」と仲間内で愚痴り合えたのも、今やその友達は周りに居ない。高校時代、休み時間に皆でダラダラ喋れたあの時間が、いかに素晴らしく、美しいものだったか

常に罪悪感があるし、息抜きをしてもそれから逃れられない。その上で孤独な環境に身を置く訳だ。あくまで勉強が第一優先の身分なので、友達と遊びに行ったりという息抜きも大切な筈なのに、罪悪感からその息抜きが出来ず、疲弊していき、周りに人が居ないから相談も出来ず、精神を病ませる…という流れになった浪人生が、おれだけでなく沢山居る。それくらい、浪人生というのは地獄だ

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長くなったが、以上が「浪人生」についての個人的な見解や感想等の記述になる。如何に「浪人」という選択が、重く、苦しく、辛いものかが理解出来たと思う。それでもその選択肢を自ら選んで、自らの道のために浪人するというのは本当に勇気ある選択だと思うし、素晴らしい精神力だと思う

おれは基本的には「どうしてもやりたいこと、行きたい大学」が無ければ、学歴向上なんて二の次で、現役で大学に行った方が絶対に良いと思う。これは、浪人の経験を現在進行形でしているから、読んでいる貴方には同じ様な思いをして欲しくないという簡単な感情論だ。分かって欲しい

そして最後に、これを読んでいる浪人生や、浪人経験者へ、おれ達は大学受験の敗北者です。どんな理由があったにせよ、大学受験という競争で、おれ達は負けて浪人生になりました

だが、人生において負けた訳ではないことを覚えておいて欲しい。この辛く苦しい経験をしたことが、いつか絶対役に立つ。それはストレートで大学に合格した人達には持ち得ないかもしれない、根性や、劣等感や罪悪感を耐え忍ぶ精神力だろう

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大学受験はゴールではなく、通過点だ。あくまでそれを忘れないで欲しい。そこで成功しようが失敗しようが、人生は続く

負けたという経験。劣等感や罪悪感、孤独感に苛まれ、苦しんだその経験は、貴方をより一層強くするし、そういった弱い立場の人の気持ちが分かる「優しさ」にもなり得る

強く、優しくなれたんだと、誇って欲しい

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