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建つ予定のないマンションの名前

道を歩きながら、自転車を漕ぎながら、車の助手席やタクシーの後部座席で揺られながら。

かなりの割合で考えていることがある。それは、自分がマンションやハイツを建てるなら、名前は何がいいか、ということだ。

歩いていると、さまざまな文字に出会う。店の看板、交差点名、政党のポスターや地域のお知らせ。そういうのを自然と目で追いながら、特に見てしまうのがマンション名。気づくと、「自分だったら」を延々と考えている。

学生さんがメインで暮らすマンションなら、「ゆずり葉」なんてどうだろう。もちろん河井醉茗(かわいすいめい)の同名の詩になぞらえて。

植物なら椿とかアカシアとか、くすのきとか、花や木の名前をつけるのもいいかもしれない。鳥の名前も捨てがたい。「むくどり荘」「カーサひばり」、うーん。英語にしてみたらどうか。「ハイツ・スワロー」……しまった、これでは生粋のヤクルトファンになってしまう。

わたしの名前は「あかり」なので、それを入れてみるのはどうか。いやいや自己顕示欲の塊すぎる気もするし、そもそも「コーポあかり」「シティービューあかり」……いやだ住みたくないし、もはやスナックだ。

難しいフランス語や英語などの名前も見かけるけれど、だいたい覚えられないし、名前は正しく覚えてもらってこそ、が信条なので却下。


いまのマンションを選ぶとき、マンション名はそう重視しなかったし、できなかった、という方が正しい。そもそも探しているエリア内に物件が少なく、条件から割り出して「ここ!」と狙いを定めたのだ。改めて見てみると、マンション名がやたらと長い。ネットで買い物をすると、記入フォームの「住所2」に入らないこともある。

住まい探しに、マンション名というのは、どのくらい気にかけられるものなんだろうか。わたしはひとり暮らしの経験がないから余計に、すてきな名前のアパートに住んでいる大学生の自分を想像したりもする。

世の中には、「めぞん一刻」とか「チャーミーゴリラ」なんていうのもあるらしい。一度住んでみたい気もする。

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